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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第28章 帰還同行シード――持ち帰り枠が足りません

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連れていく人数を選ぶ

置いていく話ではありません。つながり方を決める話です。


 反省会テーブルには、同行候補表が置かれた。


【同行候補】

ログル

ゼルド

ベル

ハコベエ箱

ネム

ミーナ記録

カイ記録

死因ログ

拠点


「人数じゃないもの混ざってる」

「帰還門が荷物、記録、同行者を雑に分類するため、こちらも広めに洗い出しております」


 ゼルドは黙っていた。

 いつもの魔王顔ではない。少し静かな顔。


「余は残る」

「まだ聞いてない」

「聞かずとも分かる。余を同行者にすれば通路が詰まる。それに、拠点側で門を守る者が必要であろう」


 ゼルドは魔王印を指で押した。


「余は魔王だ。この世界側で、門を守る」


 かっこいい。

 でも、少しむかつく。

 大人が勝手に我慢して、子供に大丈夫って顔をする時のやつだ。


「魔王さん、そういう大人っぽい我慢、幼女の前でやらないで」

「我慢ではない。役割だ」

「同じに聞こえる」

「では、こう言おう。余は、ここに残ってお前が帰る道を守りたい」


 ずるい。

 言い方がずるい。


 ベルも書類を揃えた。

「私も同行いたしません。帰還門法務担当として残ります」

「ベルさんまで」

「同行して通路を詰まらせるより、拠点側で門の分類に抗議し続けるほうが、私の適性に合っています」

「抗議し続ける」

「はい。主神様の運営能力については、まだまだ提出すべき書類がございます」

「紙が増える!」

「別便で処理いたします」


 ネムは死亡受付側の窓から手を振った。

「ぼくも死の管理側に残ります。受付が無人だと困りますし」

「死ぬ前提で受付を開けないで」

「常連様なので」


 ミーナとカイの記録は、光の文字だけだった。

 連れてはいけない。でも、忘れたくない。


「ログルは」

 声が少し震えた。

「同行者」


 ログルの宝石が淡く光る。

「はい」


 ゼルドもベルも頷いた。


 わたしは表の一番下に書いた。


【持ち帰るものと、つなぐものを分ける】


 痛くない選び方なんて、たぶんない。

 でも、置いていくんじゃない。

 つなぐ。


 反省会テーブルの上に、今度は地図ではなく椅子が並んだ。

 小さい椅子がわたし用。丸いクッションがログル用。背の高い椅子がゼルド用。書類を置く台つきの椅子がベル用。ハコベエ箱は椅子を食べようとしたので、床に直接置かれている。


「議題」


 ベルが紙をめくった。


「帰還門通過時の同行対象選定について」

「言い方が硬い」

「柔らかくしますと、誰を連れていくか、です」

「柔らかくしても重い」


 ゼルドは腕を組んでいた。魔王らしい威厳はある。だが、通路詰まり死のあとなので、わたしの目には少し大きすぎる壁に見える。


「余は残る」


 最初に言ったのは、ゼルドだった。


「早い!」

「幼き勇者。余が同行すれば、物理的に詰まる。加えて、魔王という存在は、この世界側の門番として置いたほうがよかろう」

「でも、魔王さんだって神様運営の被害者じゃん」

「だからこそ、こちら側で文句を言う者が必要だ」


 ベルも静かにうなずいた。


「わたくしも残ります。帰還門を完全に開く場合、こちら側で申請、抗議、接続維持、未払い商品の確認が必要です」

「最後、ハコベエ対策?」

「はい」

「重要だった」


 ハコベエ箱が、ふたを少し開いた。


「わたくしは商業接続箱として」

「残る」

「まだ最後まで言っておりません」

「残る」


 わたしはテーブルの端を見つめた。残る、という言葉は大人っぽい。大人っぽくて、嫌いだ。自分で決めた顔をして、相手に泣く余地を与えない。


「そういうの、ずるい」


 ゼルドが眉を動かした。


「ずるい?」

「みんな、わたしが選ばなくて済むように、自分から残るって言ってる」

「それは」

「優しさなのは分かる。でも、幼女の前で大人っぽい我慢するの、ずるい」


 部屋が静かになった。ネムの受付窓から、紙をめくる音だけが聞こえる。ベルはペンを置き、ゼルドは紅茶へ手を伸ばしかけて止めた。


 ログルが、わたしの横で小さく言った。


「勇者様。選ばないことも、選択になる場合があります」

「分かってる」

「全部を同行者にすることはできません」

「それも分かってる」


 分かっているから、嫌だった。


 ミーナを連れて帰ることはできない。カイも、ネムも、リュシアも、ピヨラも、これまでのシードで出会った全員も。全部は無理。全部を手に持ったら、封印の杖すら拾えず死ぬ。もう死んだ。


 でも、置いていくことと、なかったことにすることは違う。


「魔王さんは、拠点側の門番」

「うむ」

「ベルさんは、帰還門法務担当」

「承知しました」

「ハコベエは、勝手に店を出さない係」

「噛みませんので」

「そこじゃない」


 わたしはログルを見た。


「ログルは」

「はい」

「一緒に行く」


 ログルは、すぐには返事をしなかった。尻尾が小さく揺れ、宝石の光が淡くなる。


「ぼくで、いいのですか」

「ログルがいい」


 それ以上、難しい言葉は出なかった。ベルなら申請理由をきれいに書ける。ゼルドなら魔王らしく宣言できる。ログルなら正確な定義を出せる。


 わたしは、ただそう思った。


「ログルがいい」


 ゼルドが静かに笑った。


「ならば、余はその道を守ろう」


 ベルも、書類に新しい項目を書き足す。


「同行者一名。拠点側協力者複数。接続維持方式へ変更、ですね」


 ハコベエ箱がふたを開いた。


「接続記念割引券を」

「出すな」

 会議のあと、ゼルドは魔王相談窓口の横に立ち、門番の位置を試した。ベルはその足元へ、踏むと鳴る警告札を置く。ハコベエは札を売ろうとして、ベルに没収された。残る側の準備もまた、攻略だった。連れていかない相手をただ背景にするのではなく、ちゃんと役割にする。そうしないと、わたしはたぶん、また全部を道具欄に詰めようとして死ぬ。

 ログルは会議の最後に、拠点側の線を宝石で照らした。ゼルドの黒い線、ベルの白い線、思い出ログの金色の線。それぞれ向きは違うのに、全部が帰還門へ集まっている。同行者枠に入らない仲間にも、ちゃんと立つ場所がある。そう見えた。


 選ばないと決めた相手ほど、顔を見ている時間が長くなる。ゼルドは平気そうにしているけれど、紅茶のカップを持つ指が少しだけ固い。ベルは完璧な秘書顔だが、書類の端をいつもより多くそろえていた。


「魔王さん、ほんとにいいの?」

「何度聞いても答えは同じだ。余は残る」

「ベルさんも?」

「はい。勇者様が神様側で殴り込みをかけるなら、こちらで書類を積み上げる者が必要です」

「殴り込み前提なんだ」

「穏便な表現に直しますか?」

「いや、合ってる」


 ハコベエが小さく口を開けた。


「わたくしも残ります」

「連れていかないからね」

「拠点店舗の維持はお任せください」

「急にまとも」

「割引券も」

「まともが一秒で終わった!」


 笑いながら、少しだけ泣きそうになった。残ると言ってくれる人がいる。置いていくのではなく、任せると言える場所がある。帰る道が、ひとりぶんの細い線ではなくなっていく。


 ログルは全員の線を確認し終えると、最後にわたしの足元へ細い青線を引いた。

「これは?」

「勇者様が帰る線です」

「一人ぶん?」

「いいえ。中心線です」

 青線から、黒、白、金、薄い灰色の線が伸びている。わたしだけの道ではない。けれど、わたしが歩かなければ動かない道だ。重い。重いけど、前よりずっと強そうだった。


【今回の勇者ステータス】

現在シード:帰還同行シード

死亡回数:1092回

クラス:帰還者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【帰還門感知 Lv.3】

【死因学習 Lv.5】

【総合盤面確認 Lv.4】

【帰宅猶予線形成 Lv.1】

【相棒防衛 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

方針更新:【全員持ち帰り】→【役割別接続】


【登場人物紹介】

コヨリ:大人たちの我慢をずるいと感じつつ、自分で役割を決める。

ゼルド:同行せず、門番として残る決意を示す。

ベル:法務担当として残る。

ログル:コヨリに選ばれる側として黙って待つ。


【ローグライクあるある解説】

選別会議回。ダンジョンへ持ち込むものを絞る準備回ですが、ここでは仲間の役割選定に変換しています。持ち込み枠に入れないものを「捨てる」ではなく「接続」にするのが章の攻略です。 連れていく人数を減らす選択回です。全員同行ではなく役割を分けるのは、持ち込み枠・倉庫・現地待機を使い分ける攻略整理に近い判断です。


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