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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第5章 罠だらけ王都と罠師ビルド

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罠職人トラッパ、壊すな直せと言い出す

罠を避けるだけでは足りません。

直して、動かして、踏ませます。

まずは自分が落ちます。


 スリップに案内された先は、王都の裏通りにある小さな工房だった。


 扉には札が三枚かかっている。


【入るな危険】

【用事があるなら三回ノック】

【四回ノックしたら天井が落ちます】


「帰ろう」

「早いな!」

「入口の時点で殺意が署名してる!」


 ログルが扉を見上げた。


「三回で止めれば問題ない可能性が高いです」

「緊張で四回叩いたら?」

「天井です」

「天井が動詞みたいになってる!」


 わたしはそっと拳を上げた。

 一回。二回。三回。


 手が勢いで四回目に行きかける。


 ログルが尻尾で止めた。


「あっぶな! わたしの右手、王都に負けかけた!」


 扉が開いた。


 中にいたのは、小柄な女性だった。髪は短く、腰には工具袋。目はきらきらしているが、見ている先はわたしではなく、足元だった。


「君、いい踏み方をするね」

「褒められてる気がしない!」


 スリップが手を振る。


「トラッパ。こいつ、罠で死ぬけど覚えるんだ」

「いい素材」

「素材って言われた!」


 トラッパは床に小さな落とし穴の模型を置いた。


「罠は壊すものじゃない。置き場所を変えるもの」

「壊した方が安全じゃないの?」

「もったいない」

「安全よりもったいないが勝つ人だ!」


 彼女は淡々と続ける。


「踏むものでもない。踏ませるもの。落とし穴は直せば、また使える」

「また使わないで!」

「敵に使う」

「それなら少し納得!」


 練習場には、壊れた落とし穴があった。

 板が外れ、ばねがゆるみ、横には小さな警備人形が置かれている。


「直してみて」

「罠を?」

「うん」

「勇者が罠を直す日が来るとは思わなかった」


 わたしは板をはめた。ばねを戻した。踏む側と安全側を確認した。


「できた!」

「勇者様」

「なに?」

「板が逆です」

「え?」


 床が抜けた。


「直したのにいいいいいいいい!」


 落ちた先は、ふかふかのマットだった。

 助かったと思った。


 マットが、ぽよんと跳ねた。

 わたしは天井の鐘に頭をぶつけた。


 かーん。


「死亡演出に効果音つけるなああああああ!」


【死亡ログ】

死亡回数:33回目

死亡時レベル:Lv4

死因:【落とし穴を逆向きに修理して、自分が落ちた】

評価:【罠の向きは命の向きです】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 再挑戦。


 わたしは板をはめる前に、床に指で矢印を書いた。


「こっちが敵。こっちがわたし。こっちが落ちる。こっちは落ちない」

「良い確認です」

「落ちたくないからね!」


 トラッパはじっと見ていた。


「今のは、いい置き方」

「踏み方じゃなくて?」

「置き方」

「やった! 褒め方がちょっとマシになった!」


 小さな警備人形を誘導する。

 一歩。人形も一歩。

 わたしは壁ぎわへ。人形はまっすぐ。


 かたん。


 人形が穴へ落ちた。


「やった!」

「罠師適性、強く反応しています」

「勇者なのに?」

「生存率に貢献しています」

「生存率が正義!」


 工房の奥には、古い扉の絵があった。

 錆びた金具。丸い鍵穴。周りには細かい罠の記号。


「それなに?」

「王都地下の古い大扉」

 トラッパが言った。

「開かない。近づくと罠が動く。壊すと別の罠が起きる」

「悪い扉!」

「でも、古い。普通の防犯罠じゃない」


 ログルの宝石が、ほんの少し光った。


「勇者様。その絵から、帰還因子に似た反応があります」


 わたしは息を止めた。


「帰る、に関係ある?」

「可能性があります。ただし、確定ではありません」

「......そっか」


 期待しすぎると、あとで痛い。

 でも、何も思わないふりはできなかった。


 トラッパが工具を一つ差し出す。


「地下へ行くなら、安全確認棒を持っていくといい」

「安全なの?」

「棒が先に死ぬ」

「名前に反して過酷!」


 わたしは棒を受け取った。


「よし。扉を見る。帰るために」

「その前に罠街区」

 スリップが言った。

「王都一ヤバい道だぜ」


「王都全部ヤバいのに、その中で一番!?」


【今回の死亡ログ】


死亡時レベル:Lv4

死亡時HP:0/31

死亡時満腹度:58/100

今回の死因:【落とし穴を逆向きに修理して、自分が落ちた】

評価:【罠の向きは命の向きです】

ロスト:【拾った修理釘】【練習用ばね】


【今回の勇者ステータス】


現在シード:シード027

再挑戦後レベル:Lv4

最大HP:31

現在HP:25/31

死亡回数:33回

クラス:罠師候補

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】


【恐怖耐性 Lv.1】

【危険察知 Lv.2】

【足元確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.2】

【未識別警戒 Lv.3】

【魔法安全確認 Lv.1】

【属性識別 Lv.1】

【壁ぎわ逃げ Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【落とし穴修理 Lv.1】

新規獲得:【罠移設 Lv.1】

新規獲得:【安全確認棒の使い方 Lv.1】

レベルアップ:【罠感知 Lv.1】→【罠感知 Lv.2】


【登場人物紹介】


トラッパ:罠職人。罠は壊さず直して使う派。褒め方がだいぶ変。

スリップ:王都地下へ続く道を知っている盗賊少年。

コヨリ:罠の向きを間違えて自分で落ちた幼女勇者。


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