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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第5章 罠だらけ王都と罠師ビルド

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盗賊スリップ、避ける先をだいたい間違える

王都に入れました。

でも通りも安全ではありません。

床の次は、壁と線です。

 王都グランベルの大通りは、見た目だけなら本当にきれいだった。


 白い石畳。水の流れる細い溝。店の看板。遠くに見える城。


 ただし、石畳の三枚に一枚くらいが信用できない。


「お嬢ちゃん、まずは足を置く前に色を見る」

 スリップが濡れた髪をしぼりながら言った。

「灰色は普通。白すぎる床は跳ねる。黒すぎる床は落ちる。赤い床はたぶん爆発する」

「王都の床、感情豊かすぎない?」

「慣れれば歩けるぜ」

「慣れる前に五回死んだよ!」


 ログルが肩で宝石を光らせる。


「勇者様。前方三マスにワイヤー反応があります」

「見えない」

「見えにくい罠です」

「見えにくい罠を街中に張るな!」


 スリップはにやっと笑った。


「任せな。こういうのは、足でまたぐんじゃなくて、壁を蹴って越えるんだよ」


 言うなり、スリップは壁を蹴り、ひょいとワイヤーを越えた。

 今度はバケツも落ちない。


「おお」

「見たか。これが盗賊の身のこなしってやつだ」


 わたしも真似をする。

 壁に手をつき、小さな足で踏み切る。


 ぴん、と細い音がした。


「ログル」

「勇者様。壁側にもワイヤーがあります」

「スリップ!」

「あ、そっちは小さい奴用だった」

「幼女サイズ罠を先に言ってえええええええ!」


 壁から吸盤矢が飛んだ。

 わたしの背中にぺたりと貼りつく。

 そのまま壁へ引っ張られた。


「壁に貼られた! 勇者を掲示物にするな!」


 壁が回転した。


 わたしは、別の路地へぽいっと放り出された。

 そこには、矢印の描かれた床が並んでいた。


【現在の盤面】

コヨリ:Lv2/HP21/21/満腹度72

床:矢印床多数

壁:吸盤矢穴あり

敵:警備人形 二体

現在状態:行動待ち


「ログル、どれ踏む?」

「どれも踏みたくありません」

「意見が一致した!」


 一歩でも動くと、矢印床で強制移動しそうだ。警備人形は二マス先。動けば向こうも動く。


 スリップの声が壁の向こうから聞こえる。


「お嬢ちゃん、右! 右の矢印に乗れ!」

「信用していいの?」

「たぶん!」

「たぶんで命を預けたくない!」


 でも、警備人形が近づく。わたしは右へ乗った。


 矢印床が光る。

 右へ一マス。

 さらに右の床も矢印。

 また一マス。

 次は下。次は左。次は上。


「待って! これ、王都のすごろく!?」


 最後に到着した部屋には、看板が立っていた。


【罠体験展示室】


「観光施設だったあああああああ!」


 壁から矢。床からばね。天井から網。横からバケツ。奥から警備人形。


「展示しなくていい! 体験させなくていい! 神様ァ! 観光と殺意を混ぜるなああああああ!」


【死亡ログ】

死亡回数:32回目

死亡時レベル:Lv2

死因:【ワイヤーを避けた先の矢印床で、罠体験展示室へ送られた】

評価:【罠は単体ではなく、つながりで見ましょう】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 再挑戦。


 わたしはワイヤーを見た。床も見た。壁も見た。

 そして、スリップも見た。


「な、なんだよ」

「案内役も疑う」

「ひどくない?」

「さっき展示室に送られた」

「それは王都が悪い」

「それはそう」


 ログルが短く言う。


「勇者様。ワイヤー、矢印床、回転壁が連鎖しています。先に警備人形を動かしましょう」

「罠を避けるんじゃなくて、踏ませる?」

「はい」


 わたしは小石を投げた。

 警備人形が反応して一歩。

 さらに一歩。矢印床に乗る。


 警備人形は、わたしの代わりに罠体験展示室へ送られた。


 遠くから、がしゃん、ばしゃん、ぼよん、と音がした。


「......展示、役に立ったね」

「敵に体験してもらうなら有効です」


 スリップが目を丸くする。


「お嬢ちゃん、死んだみたいな顔してるのに動きが変わったな」

「死んだんだよ!」

「え?」

「こっちの話!」


 通りを抜けるころには、わたしはLv3になっていた。

 警備人形を罠へ誘導した経験値らしい。


「ログル。レベルが上がるの、ちょっと安心する」

「はい。最大HPが増えています」

「でも死ぬ時は死ぬ」

「王都では特に」

「王都、嫌い度が上がっていく!」


 スリップは、路地の奥を指さした。


「罠を本気でどうにかしたいなら、会わせたい職人がいる」

「まともな人?」

「罠が好きな人」

「まともじゃない予感!」


【今回の死亡ログ】


死亡時レベル:Lv2

死亡時HP:0/21

死亡時満腹度:64/100

今回の死因:【ワイヤーを避けた先の矢印床で、罠体験展示室へ送られた】

評価:【罠は単体ではなく、つながりで見ましょう】

ロスト:【拾った銅貨】【未識別の小鍵】


【今回の勇者ステータス】


現在シード:シード027

再挑戦後レベル:Lv3

最大HP:26

現在HP:22/26

死亡回数:32回

クラス:勇者

クラス適性:罠師適性 強化

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】


【恐怖耐性 Lv.1】

【危険察知 Lv.2】

【足元確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.1】

【未識別警戒 Lv.3】

【魔法安全確認 Lv.1】

【属性識別 Lv.1】

【スープ回復 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【ワイヤー確認 Lv.1】

新規獲得:【壁ぎわ逃げ Lv.1】

新規獲得:【連鎖罠警戒 Lv.1】

レベルアップ候補:【罠感知 Lv.1】→【罠感知 Lv.2】


【登場人物紹介】


スリップ:身軽な盗賊少年。罠を避けるのは得意だが、避けた先が安全とは限らない。

コヨリ:床だけでなく壁と罠のつながりを見始めた幼女勇者。

ログル:王都の罠連鎖を見て、解析負荷が高まっている神獣。


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