表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第5章 罠だらけ王都と罠師ビルド

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/208

王都グランベル、歓迎だけで五回死ぬ

王都に到着しました。

歓迎されました。

歓迎で死にます。

 拠点の白い部屋で、わたしは火属性石から三歩離れていた。


「勇者様。そこまで離れなくても、属性石は爆発しません」

「火は信用しない。前にころころ転がってきたから」

「今回のシード候補は王都です」

「王都!」


 わたしはぴょんと跳ねた。


 王都。お城。噴水。きれいな石畳。たぶんパン屋さんもある。食べ物が叫ばない。魔法が床を燃やさない。そんな文明の匂いがする。


「ただし、罠反応が非常に多いです」

「都会ってそういう意味じゃない!」


 白い床が光る。

 ログルが肩に乗る。


【開始状態】

シード027

Lv1

HP15/15

満腹度100/100

死亡回数26回


「よし。床を見る。壁も見る。火は撃つ前に考える」

「良い姿勢です」

「そして王都でおいしいものを食べる!」

「目的が混ざっています」

「帰るために生きる。生きるために食べる。完璧!」


 転送の光が弾けた。


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 次に足がついた場所は、白い石壁の前だった。


 高い門。青い旗。門の上には金色の紋章。通りの奥には噴水が見える。


「まとも! ログル、まともな街!」

「罠反応があります」

「まだ見てないのに現実を刺さないで!」


 門の前には、大きな赤いマットが敷かれていた。


【WELCOME HERO】


「見て! 歓迎されてる!」

「勇者様。マットが不自然に厚いです」

「でも歓迎って書いてあるよ?」

「文字は安全の保証ではありません」

「疑いすぎだよ。王都だよ? 文明だよ?」


 わたしは一歩踏み出した。


 マットが沈んだ。

 門の上から花吹雪が舞った。


「ほら歓迎......」


 床が抜けた。


「歓迎の下に落とし穴あああああああああ!」


 落ちた先には、やわらかいクッションがあった。

 助かった、と思った。


 クッションが目を開けた。


「クッションが呼吸してるううううううう!」


 クッション型スライムに跳ね返され、天井にぶつかり、また落ちて、また跳ねた。

 三往復目で、視界が白くなった。


【死亡ログ】

死亡回数:27回目

死因:【王都の歓迎マットを踏んで、クッション型スライムに三回跳ね返された】

評価:【歓迎と安全は別です】

新規獲得:【歓迎マット警戒 Lv.1】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 二回目。


「マットは踏まない」

「はい」

「横を通る」

「右の石畳に矢印床反応」

「じゃあ左」

「左に落とし穴反応」

「どこ歩くの!?」


 わたしは門の壁ぎわをそろそろ進んだ。


 壁から棒が出た。


「壁も!?」


 棒に押され、わたしはきれいに赤マットへ戻された。


「王都の壁、接客が強引!」


【死亡ログ】

死亡回数:28回目

死因:【マットを避けたら、壁の押し戻し棒でマットへ返送された】

評価:【壁も見ましょう】

新規獲得:【壁ぎわ警戒 Lv.1】


 三回目。


 わたしは壁から離れた。マットも避けた。石畳のすき間だけを歩く。


「いける!」

「勇者様。旗の影」

「影?」


 旗の影に入った瞬間、上から網が落ちた。

 わたしは網に包まれたまま、門番人形の前へ転がされた。


「身分証を提示してください」

「幼女勇者に身分証を求めるな!」

「提示なし。強制退去」


 人形の腕がばねみたいに伸びた。


「退去方法が物理いいいいいいいい!」


【死亡ログ】

死亡回数:29回目

死因:【旗の影の対侵入網に捕まり、門番人形に強制退去された】

評価:【影も床の一部です】

新規獲得:【影確認 Lv.1】


 四回目。


「もう地面を信用しない。跳ぶ」

「勇者様、危険です」

「床が殺すなら空中を使う!」


 わたしはマットの手前から全力で跳んだ。


 門の上から、対空網が開いた。


「空も王都の管轄なの!?」


【死亡ログ】

死亡回数:30回目

死因:【床を避けて跳んだら、対空網に捕まった】

評価:【上も見ましょう】

新規獲得:【上方確認 Lv.1】


 五回目。


 わたしは地面も壁も影も空も見た。

 そして、門の前に立った。


「ログル。答えは?」

「門番人形の足元に、一マスだけ安全地帯があります」

「門番の足元!?」

「行動後、すぐ右へ移動してください」

「王都入場、難しすぎる!」


 一歩。門番の足元。

 一歩。右。

 一歩。壁の切れ目。


 成功した、と思った瞬間、門の内側から水が流れてきた。

 足が滑る。

 転ぶ。

 転んだ先に、赤マットの裏面。


「裏にも歓迎って書いてあるううううううう!」


【死亡ログ】

死亡回数:31回目

死因:【門内の水流で滑って、歓迎マット裏面へ戻された】

評価:【罠は表裏で二度おいしい】

レベルアップ:【足元確認 Lv.2】→【足元確認 Lv.3】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 六回目。


 わたしは何も言わずに、門の横の排水溝を見た。

 水の流れ。旗の影。壁棒の穴。マットの厚み。門番人形の足元。


「ログル」

「はい」

「王都、嫌い」

「まだ入っていません」

「そこが一番嫌い!」


 安全地帯を踏む。水流が来る前に一歩。旗の影を避けて一歩。壁棒の穴の手前で待つ。壁棒が出た後に進む。


 ようやく門の内側へ入った。

 門を抜けた先には、小さな受付小屋があった。


 白い石造りの壁に、青い屋根。窓口の上には【王都グランベル冒険者ギルド・臨時受付】と書かれた板がかかっている。板の文字はまともだった。まともすぎて、逆に怖い。


「ログル。あれ、爆発する?」

「今のところ爆発反応はありません」

「今のところ、ってつけないで」


 窓口の向こうには、若い受付嬢が座っていた。


 栗色の髪を肩のところで切りそろえ、耳の横だけ小さく編み込んでいる。青灰色の目はやさしそうなのに、机の上の書類をさばく手つきはものすごく速い。右目の下に、小さな泣きぼくろがあった。


 きれいなお姉さんだ。


 でも、王都の人なので油断してはいけない。

 さっきの歓迎マットも、見た目はきれいだった。


「ようこそ、王都グランベルへ。勇者様ですね」


 受付嬢は、にこりと笑った。


 名札には【アリア】と書いてある。


「わたしのこと、知ってるの?」

「王都には勇者様到着の通達が来ています。年齢、装備、身長、死亡しやすさまで」

「最後の情報いらなくない!?」


 アリアさんは、さらさらと受付票に何かを書き込んだ。


「こちらが仮入都証です。王都内では、赤い敷物、青い矢印、黄色い旗、黒い線、妙に親切な看板には近づかないでください」

「多い! 王都、危険物の色見本なの!?」

「あと、無料配布と書かれたものは有料です」

「詐欺!」

「歓迎と書かれたものは、だいたい試験です」

「知ってる! 五回死んだから!」


 わたしが叫ぶと、アリアさんは少しだけ目を丸くした。


 それから、困ったように笑った。


「五回で入れたなら、優秀ですよ」

「王都の基準がおかしい!」


 アリアさんは受付票に判子を押した。

 ぽん、と乾いた音がする。


【仮入都証を入手しました】


「この先の大通りは、初見だと少し危ないです。案内役をつけた方がいいですね」


「案内役?」


 アリアさんが窓口の外へ視線を向けた。


「ほら、あそこ。壁の上にいる子です」


 わたしもつられて見上げた。

 路地の上から、少年の声がした。


「お嬢ちゃん、王都じゃ床を信用しちゃダメだぜ」


 茶色い髪の少年が、壁の上で片足立ちしていた。短いマント。腰に細い道具袋。いかにも身軽そうだ。


「あなた誰?」

「盗賊スリップ。罠だらけの王都を案内してやるよ」


 スリップは格好よく壁を蹴った。

 その瞬間、上からバケツが落ちた。


 ばしゃん。


「......今のは分かってた。水の温度を確認しただけだ」

「この人、本当に案内役!?」


【今回の死亡ログ】


死亡回数:27回目〜31回目

主な死因:【歓迎マット落とし穴】【壁の押し戻し棒】【旗の影の網】【対空網】【水流でマット裏面へ返送】

評価:【王都では床・壁・影・上・水流を全部疑いましょう】


【今回の勇者ステータス】


現在シード:シード027

最終到達レベル:Lv1

現在HP:15/15

死亡回数:31回

クラス:勇者

クラス適性:罠師適性 兆候

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】


【恐怖耐性 Lv.1】

【危険察知 Lv.2】

【足元確認 Lv.3】

【罠感知 Lv.1】

【未識別警戒 Lv.3】

【魔法安全確認 Lv.1】

【属性識別 Lv.1】

【スープ回復 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【歓迎マット警戒 Lv.1】

新規獲得:【壁ぎわ警戒 Lv.1】

新規獲得:【影確認 Lv.1】

新規獲得:【上方確認 Lv.1】

レベルアップ:【足元確認 Lv.2】→【足元確認 Lv.3】


【登場人物紹介】


アリア:王都グランベル冒険者ギルドの臨時受付嬢。栗色の髪と右目下の泣きぼくろが特徴。親切だが、王都基準なので説明がだいたい怖い。

スリップ:王都グランベルの盗賊少年。床を信用するなと言いながら、初手でバケツを食らう。

コヨリ:王都の入口だけで五回死んだ幼女勇者。

ログル:王都の歓迎文化にだいぶ疑問を持っている解析神獣。


少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ