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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第27章 帰還時間シード――ただいまは一秒待って

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曜日反転教室――月曜が二回来る

三十階では、日曜が消えて月曜が増える。

回復床にも満腹度の罠がある。

休日を守るため、コヨリは食料温存の誘惑と戦う。

 三十階の教室には、黒板一面にカレンダーが書かれていた。


 月、月、火、水、木、金、月。


 コヨリは三秒ほど黙ったあと、両手で黒板を指した。


「日曜どこ!?」

「消えています」

「神様ァ! 休日を消すなああああああああああああああ!」


 叫び終わるより早く、黒板の月曜が床へ落ちた。紙のように見えた文字が、ぺたりと床に張りつく。


【曜日反転教室】

【月曜床:敵出現率上昇】

【日曜床:回復。ただし現在消失】


「日曜を返して」

「曜日合わせの札があれば、戻せる可能性があります」

「札。札を探す。日曜のためなら、わたしは勇者になる」

「すでに勇者です」

「休日勇者!」


 コヨリが一歩進むと、月曜床から小さな時計兵が湧いた。二歩目でも湧いた。三歩目で、床の文字が増える。


【月曜】

【月曜】

【月曜】


「増えるな! 月曜は一個でも重い!」


 時計兵の槍が突き出る。HPはさっきより上がっている。レベルも少し上がった。だから一撃では死なない。けれど、敵が湧き続ければ関係ない。


【死亡ログ】

【死亡回数:1059回目】

【死因:月曜床を三回踏み、時計兵に囲まれた】

【評価:精神的にも物理的にも重い曜日でした】


 再挑戦。コヨリは曜日合わせの札を拾った。札には『日』と書かれている。信じたい。けれど未識別かもしれない。ログルに見せる。


「これは本当に日曜?」

「曜日合わせの札です。使用先を間違えなければ有効です」

「間違えると?」

「月曜が増えます」

「最悪の増殖バグ!」


 コヨリは黒板に向けて札を掲げた。日曜の枠が戻る。床の端に、柔らかい光が生まれる。


「回復床!」

「待ってください。日曜床は休み時間を進めます」

「回復なのに罠あるの?」

「ここは時間ダンジョンです」

「便利な言い訳!」


 日曜床はHPを回復する代わりに、満腹度を一気に削った。腹が鳴る。コヨリは涙目になる。


「休日にお腹減るの、現実っぽいけど嫌!」


 食料を使うか、温存するか。コヨリは一度温存して階段を目指した。途中で空腹ダメージが入り、時計兵の小突きで倒れる。


【死亡ログ】

【死亡回数:1060回目】

【死因:日曜床で回復したが、満腹度を削られて力尽きた】

【評価:休日にもごはんは必要です】


 三度目。コヨリは日曜床を一歩だけ踏み、すぐ保存壺から小さなパンを出した。食べる。足りない。もう一つ食べる。温存したくなる指を、ぎゅっと止める。


「ボスまで取っておきたい」

「死亡時に持ち越せるとは限りません」

「ローグライクの真理で殴るのやめて」


 食べる。動く。曜日を戻す。月曜床を避ける。黒板の横に、日直札みたいな階段が現れた。


「日曜、守った」

「はい」

「でも休んだ気がしない」

「攻略中ですので」


 日曜床を戻したあと、コヨリは黒板の端に小さな落書きを見つけた。


【日曜は休みではなく準備日】


「誰が書いたの。偉そう」

「このシードの時間管理思想かもしれません」

「休みの日に準備しろって言う大人、嫌い」


 月曜床を避けながら進むと、教卓の上に給食袋が置いてあった。中にはパンと牛乳。見た目は安全。匂いも普通。だからこそ、コヨリは疑った。


「給食袋も三手で腐る?」

「未確認です」

「確認したくない」


 ログルが宝石を光らせ、袋の縫い目を示す。そこに小さな時計が縫い込まれていた。


【賞味期限:昨日】


「昨日!」

「食べないでください」

「食べる前に分かってよかったけど、給食に昨日を入れるな!」


 コヨリは、給食袋を敵へ投げようとして止めた。投擲は外れる。外れた給食袋が床で爆発したら嫌だ。かわりに場所替えの杖で時計兵と自分の位置を入れ替え、月曜床を踏ませる。


 時計兵が湧いた時計兵に囲まれる。


「敵が敵の月曜で困ってる!」

「地形利用です」

「月曜を敵に押しつける戦術、ちょっと悪いけど効く!」

曜日反転教室の奥には、日直日誌が置いてあった。ページを開くと、同じ文字が何度も並んでいる。


【月曜、また月曜、たぶん月曜】


「日誌が病んでる」

「曜日反転の影響です」

「日直さん、かわいそう」


 コヨリは日誌を閉じようとして、最後のページに気づいた。そこだけ、薄い鉛筆で書かれている。


【日曜は戻せる。でも、戻したら休み方を選べ】


 休み方。そんなものまで選ばされるのか、とコヨリは思った。回復床で休む。食料を食べて休む。無理に進んで倒れる。どれも一手で、どれも結果が違う。


「ログル。休むのも攻略?」

「はい。休まない勇者は、だいたい次の罠で倒れます」

「じゃあ休む。でも、罠じゃない休み方で」


 コヨリは日曜床を一歩だけ使い、残りは自分のパンで補った。甘えすぎない。怖がりすぎない。その真ん中を探すのが、この教室の授業だった。


【新規獲得:曜日確認(ようびかくにん) Lv.1】

曜日反転教室には、席順表まであった。名前の欄には、月曜、月曜、火曜、木曜、月曜。金曜の席は空いていて、日曜の席だけ黒い布がかけられている。コヨリは布をめくろうとして、手を止めた。


「ログル、日曜の席、めくっていい?」

「めくると回復床が出る可能性があります」

「いいじゃん」

「同時に、休み明け敵が湧く可能性もあります」

「休み明け敵!? 名前だけで嫌!」


 黒い布の端から、白い手が少しだけ出た。『休もうよ』と書かれた札を持っている。休みたい。すごく休みたい。だが、今の休みが本当に休みかどうかは分からない。


「休みも未識別」

「はい」

「もう何なら識別済みなの!」

「勇者様の疲労は識別済みです」

「そこだけ分かりやすい!」


 コヨリは、布をめくらずに日曜の席から一マス離れた。かわりに、曜日合わせの札を机の上へ置く。札はふわりと浮き、黒板の『月 月 火 水 木 金 月』の最後の月を日へ変えた。


 教室の空気が、少しだけやわらぐ。だが、同時に窓の外から休み明け時計兵が顔を出した。


「出た! 休み明け!」

「日曜を戻した反動です」

「休んだら敵が来るの、社会がつらい!」


 時計兵は強くない。だが、だるい。攻撃が遅れてくる。避けたと思ったあとで当たる。コヨリは一回それで転び、黒板消し罠を頭に受けた。


【死因未遂:黒板消し罠で視界不良】

【評価:昭和の罠が時間差で来ました】


「黒板消しが頭に落ちるやつ、まだ現役!?」

「この教室では現役です」

「古典芸能みたいに言わないで!」


 コヨリは袖で白い粉を払い、今度は休み明け時計兵を月曜床へ誘導した。敵が敵の曜日に沈む。少しだけ申し訳ないが、月曜を増やしたのはこっちではない。


「月曜は返す」

「誰にですか」

「敵に!」



黒板の隅には、小さく『宿題』と書いてあった。内容は、今日中に明日を提出すること。コヨリは読み終わる前に黒板消しを構えた。


「明日を提出ってなに!?」

「時間因子系の課題です」

「宿題の規模が大きすぎる!」


 文字を消すと、教室の時計が一つだけ静かになった。全部を直せなくても、ひとつ消せば一手ぶん楽になる。コヨリは少しだけ、黒板消しを見直した。



消した粉が指につき、コヨリは袖で拭いた。白く残った跡まで、今日は罠に見えた。



【新規獲得:満腹度温存警戒まんぷくどおんぞんけいかい Lv.1】

【今回の勇者ステータス】

現在シード:帰還時間シード

現在階層:30F突破

クラス:帰還者見習い

総死亡回数:1061回

到達時レベル目安:Lv8

満腹度管理:重要化

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動】


【獲得済み主要スキル】

【一フレームの神様 Lv.3】

【死亡対象上書き Lv.1】

【千回死亡条件破壊 Lv.1】

【死亡ログ返還 Lv.1】

【神様案内警戒 Lv.2】

【帰還座標仮視認 Lv.2】

【記憶擬態識別 Lv.1】

【現実擬態フロア警戒 Lv.1】

【帰宅線形成 Lv.2】

【時間不一致警戒 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【曜日確認 Lv.1】

新規獲得:【満腹度温存警戒 Lv.1】


【登場人物紹介】

コヨリ

月曜増殖と日曜床の満腹度罠で二回死んだ。


ログル

曜日合わせの札の使い方と、食料温存の危険を指摘した。


時計兵

月曜床から湧く小型敵。数で押してくる。


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