表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第25章 帰還門ダンジョン――神様、今さら案内役になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
244/340

帰還門ダンジョン、第一攻略完了

帰還門は完全には開かなかった。

それでも、次に探すものだけは見えた。


 帰還門ダンジョンの奥で、白い地図がゆっくり畳まれていった。完全に開いたわけではない。だが、何が足りないのかは見えるようになった。見えない壁に顔からぶつかる段階は、少しだけ終わったらしい。


【帰還門ダンジョン:第一攻略完了】

【安定因子:名前/記憶/縁/扉】

【未攻略因子:座標/時間】

【主神協力権限:制限付きで登録】


「制限付き」

「妥当だと思う」とアドミニス。

「自分で言うんだ」

「無制限にすると、きみが怒る」

「怒るね。たぶんじゃなくて確定で怒る」


 ログルの宝石に総死亡回数が浮かぶ。


【総死亡回数:1025回】

【千回死亡条件カウンター:1000/1000 停止】

【神様側死亡ログ送信:遮断維持】


「また増えた」

「はい」

「でも神様ポイントには入ってない」

「入っていません」

「そこだけは勝ってる。死んでるけど」


 ベルが書類をまとめ、ネムが未送信死亡ログを箱へ入れる。ゼルドは魔王ログ棚の接続を確認し、ログルは扉の線を数えた。みんなが当たり前のように拠点側で作業している。帰りたい。けれど、この作業場を置いていく自分を想像すると、足が重くなる。


「次は、座標シードだ」とアドミニスが言う。

「またダンジョン?」

「うん」

「神様ァ! 帰るだけで何個ダンジョン作る気いいいいいいいい!」

「作っているというより、分かれてしまっている」

「言い方が違うだけで、やることは潜るなんだよ!」


 出口の横に小さな宝箱がある。コヨリは両手を握った。


「開けない」

「えらいです」

「わたしは学んだ。クリア後の宝箱ほど怖い」


 だが、宝箱の横に落ちていた白い地図札がひらりと動く。宝箱ではない。だから少しくらい拾ってもいい。そう思った瞬間、コヨリは自分の手を見た。


「今、宝箱じゃないからいいって思った」

「かなり危険な思考です」

「だよね。小石で確認」


 小石を投げる。地図札の手前で床が白く反転した。罠は見えた。避ければいい。避ければいいのに、反転した床の向こうから元世界の住宅街が一瞬だけ見えた。


「ずるい」

「勇者様、視線を戻して」

「見てない。帰り道っぽいのなんて見てない」

「見ています」

「見てる!」


 視線が一拍、足より先に進んだ。右足が線を踏む。白い地図がばさりと開き、座標シード入口が口みたいに広がった。


「出口確認を焦るなって、さっき言ったばっかりなのにいいいいいいいい!」


死亡ログ(しぼうログ)

総死亡回数(そうしぼうかいすう):1024回 → 1025回】

【|千回死亡条件カウンター《せんかいしぼうじょうけんカウンター》:1000/1000 停止】

【神様側送信:遮断】

拠点(きょてん)側保存:実行】

死因(しいん):出口確認を焦って白い地図罠を踏み、座標シード入口へ落ちた】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 座標シード入口から吐き出され、コヨリは床に座ったまま天井をにらんだ。停止カウンターは最後まで動かない。だが、総死亡回数は1025を示している。第一攻略完了の直後に死ぬあたり、帰還門ダンジョンは最後までローグライクだった。


「出口確認で死んだ」

「はい」

「クリア後の油断、いちばん恥ずかしいやつ」

「ただし、神様側送信は遮断維持です」

「そこだけは胸を張る。死んでるけど!」


 アドミニスは何かを言いかけ、第一攻略完了の表示を見て口を閉じた。ここで余計な説明を足すより、まず結果を見せるべきだと、ようやく判断したらしい。コヨリはその沈黙を確認してから、床の白い地図をにらんだ。

 表示は、勝利のファンファーレではなかった。


帰還門ダンジョン(きかんもんダンジョン):第一攻略完了】

【安定因子:名前/記憶/縁/扉】

【未攻略因子:座標/時間】

主神(しゅしん)協力権限:制限付きで登録】

総死亡回数(そうしぼうかいすう):1024回】

【|千回死亡条件カウンター《せんかいしぼうじょうけんカウンター》:1000/1000 停止】

【神様側死亡ログ(しぼうログ)送信:遮断維持】


「第一攻略完了って何」

「完全攻略ではない、という意味です」

「ログル、分かってる。分かってるけど、言葉にされると腹立つ!」

「次は座標シードだ」とアドミニスが言う。


 コヨリはゆっくり振り向いた。


「またダンジョン?」

「うん」

「帰るだけで、何個ダンジョン作る気!?」

「作っているというより、壊れた帰還条件を順番に修復している」

「説明を変えてもダンジョンはダンジョン!」


 ログルが小さく表示を追加する。


【帰還までの必要攻略数:未確定】


「未確定って言葉、帰還門(きかんもん)に投げ込んで燃やして!」

「燃やすと、座標情報も燃えます」

「じゃあ額に入れて呪う!」

「それは可能です」

「可能なんだ!?」


 ベルは安定因子の一覧を写し、ネムは未処理ログ箱を閉じた。ゼルドは魔王ログ(まおうログ)棚を確認し、アドミニスは白い地図を広げる。その地図の端に、元世界らしき小さな光が瞬いた。


 コヨリはその光を見た。帰りたい。胸の奥で、今度ははっきり言葉になる。けれど、足元には拠点(きょてん)があり、隣にはログルがいる。


「帰りたい」

「はい」とログル。

「置いていきたくない」

「はい」

「両方って、欲張り?」

「ローグライクでは、欲張りは死因(しいん)です」

「今それ言う!?」

「ただし、攻略目標にもなります」

「......じゃあ、欲張る」


 コヨリは白い地図へ手を伸ばした。出口確認を焦らず、一手(いって)ずつ。そう思った矢先、地図の端に小さな(わな)文字が見えた。


【出口確認】


「確認って書いてある! 絶対解除系の(わな)だこれ!」


 避けたつもりの足が、地図の影を踏んだ。


 第一攻略完了の表示の下に、コヨリは『出口も床』と書いた。勝った気分の時ほど足元が甘くなる。死因図鑑が、妙に説得力のある棚鳴りをした。


【今回の攻略メモ】

帰還因子整列(きかんいんしせいれつ) Lv.1】

座標シード入口確認ざひょうシードいりぐちかくにん Lv.1】

【クリア後の地図札も小石で確認】


 白い地図(わな)を踏んだ瞬間、コヨリは叫んだ。


「最後の最後で出口(わな)あああああああああ!」

勇者(ゆうしゃ)様、まだ最後ではありません」

「それが一番つらい!」


 視界が白く弾ける。帰還門ダンジョン(きかんもんダンジョン)第一攻略完了の表示が、死因(しいん)ログの横に並んだ。勝ったのか死んだのか、いつものことながら分かりにくい。


死亡ログ(しぼうログ)

総死亡回数(そうしぼうかいすう):1024回 → 1025回】

【|千回死亡条件カウンター《せんかいしぼうじょうけんカウンター》:1000/1000 停止】

【神様側送信:遮断】

死因(しいん):第一攻略完了後、出口確認(わな)を疑いすぎて影を踏んだ】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 拠点(きょてん)へ戻ると、帰還門(きかんもん)は消えていなかった。仮起動の白い枠が、床下に薄く残っている。死んでも進捗は残る。拠点(きょてん)がリセットされないことのありがたさを、コヨリは全身で感じた。


「死んだのに進んでる」

「はい」

「死に得?」

「死亡は得ではありません」

「真面目に返さないで!」


 アドミニスは白い地図を持ったまま、少しだけ笑った。


「次は、座標シードだ」

「神様、もう一回聞くね。またダンジョン?」

「またダンジョン」

「帰宅って、そんなにエンドコンテンツだったっけ!?」

「きみにとっては、最終目標だ」

「言い方がちょっとかっこいいの腹立つ!」


 ログルが尾を揺らす。


勇者(ゆうしゃ)様。次の攻略では、座標と時間を扱います」

「つまり、迷子と遅刻?」

「簡略化すると、そうです」

帰還門(きかんもん)攻略、急に学校生活みたいになった!」


 笑い声が拠点(きょてん)に落ちた。軽い笑いではない。疲れて、死んで、怒って、それでも次へ行くための笑いだった。


 帰還門(きかんもん)の奥で、次の区画が静かに開いた。


【登場人物紹介】

コヨリ:帰還門ダンジョン、第一攻略完了で帰還門攻略に振り回される。ログル:盤面と記録を照合。アドミニス:案内しつつ言い訳を重ねる。ベル・ネム・ゼルド:それぞれ契約、死の扱い、役割の被害から神様仕様を刺す。


【今回の勇者ステータス】

総死亡回数:1024回 → 1025回

千回死亡条件カウンター:1000/1000 停止/帰還門ダンジョン、第一攻略完了後も不動

神様側死亡ログ送信:遮断維持/拠点保存ログ確認番号18

クラス:帰還者候補/死因学者系統

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動】


【獲得済み主要スキル】

神様仕様突破:【一フレームの神様 Lv.3】【死亡対象上書き Lv.1】【千回死亡条件破壊 Lv.1】

ログ・所有権:【死亡ログ返還 Lv.1】【ログ差し戻し Lv.3】【死亡ログ所有権確認 Lv.2】

帰還門攻略:【帰還座標仮視認 Lv.1】【帰還門仮起動 Lv.1】【主神言い訳読解 Lv.1】【帰還因子整列 Lv.1】【座標シード入口確認 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【帰還因子整列 Lv.1】【座標シード入口確認 Lv.1】

内部更新:帰還門ダンジョン攻略ログを拠点側へ保存。


【ローグライクあるあるネタ】

クリア後の出口確認と次ダンジョン解放事故です。ボス後や報酬後、出口横の宝箱・地図・階段・未鑑定品に吸われて死ぬのはローグライクの甘い罠です。今回は第一攻略完了後、座標シード入口が開いた瞬間に白い地図札へ視線を吸われ、出口確認を焦った事故として締めました。


座標シードへ続く一手です。コヨリの帰宅難易度に笑っていただけたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューをお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ