表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第25章 帰還門ダンジョン――神様、今さら案内役になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
236/340

魔王ログは帰還門を通れない

帰還門は勇者用だった。

だから魔王のログを、扉は異物として噛んだ。


 魔王ログ検査口は、見た目からして人を不快にさせる門だった。白い扉の中央に【勇者専用】、その下に小さく【魔王ログは異物扱い】。ゼルドの影が濃くなる。


「魔王さん、扉を殴る前に相談しよ」

「余はまだ殴っておらぬ」

「影がもう殴ってる」

「影は正直なのでな」


 アドミニスが説明する。古い帰還門は勇者専用で、魔王ログは想定外だった、と。ゼルドの声が低く響いた。


「勇者の物語に魔王が含まれぬと、誰が決めた。余は魔王である。だが、貴様らの便利な最終試験官ではない」

「魔王さん、今のかっこいい」

「余は常にかっこよい」

「戻ってきた。よかった、いつもの魔王さんだ」


 ベルは扉の縁を調べて顔をしかめる。


「弾くというより、噛みます。魔王ログを入れると、役割裁断機が動きます」

「帰還門に裁断機つけるな! 事務用品みたいな殺意!」


 ネムは黒いログ札を見分ける。これは死んだログではなく、役割として処理されたログだと言った。コヨリはその束の中に、魔王軍の勤務表やベルの抗議文を見つける。帰るためには関係ないようで、ここまでの自分には確かに関係していた。


「改造しよう」

「帰還門を?」とアドミニス。

「うん。勇者専用とか古い。わたし、魔王さん抜きで帰る気ない」

「連れて帰るという意味では」

「まずは()()()()()()()って意味」


 ベルが即座に申請書を書き始めた。


【帰還門拡張申請】

【対象:魔王ログ/魔王軍関係記録/役割被害ログ】


「ベル、書類早すぎ」

「主神様が口を挟む前に形にします」


 コヨリは黒いログ札を扉の横の溝へ差し込もうとした。ログルが尻尾で手首を止める。


「勇者様、それは差し込み口ではありません」

「え」

「裁断口です」

「郵便ポストみたいな顔するなあああああ!」


 扉が、がちりと噛んだ。


死亡ログ(しぼうログ)

総死亡回数(そうしぼうかいすう):1014回 → 1016回】

【|千回死亡条件カウンター《せんかいしぼうじょうけんカウンター》:1000/1000 停止】

【神様側送信:遮断】

拠点(きょてん)側保存:実行】

死因(しいん):魔王ログを裁断口へ差し込み、帰還門の役割裁断機に噛まれた】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 役割裁断機に噛まれたコヨリは、拠点の床で歯を食いしばって起き上がった。停止カウンターは動かない。魔王ログを助けようとして死んだ分まで、神様の点数にならないことだけが救いだった。


「扉に噛まれた。帰還門なのに歯がある」

「扉の歯ではなく、役割裁断機です」

「言い換えても怖いものは怖い!」

「拠点側に保存済み。魔王ログ拡張事故として分類します」

「魔王さんの尊厳とわたしの手首を、同じ事故名にしないで!」


 アドミニスは魔王ログの排出表示を消そうとして、ゼルドの視線で手を止めた。都合の悪い表示を消す前に読む。これもまた、神様に必要な訓練だった。

 検査口の上に、腹立たしいほど丁寧な表示が出る。


帰還門(きかんもん)勇者(ゆうしゃ)専用】

魔王ログ(まおうログ):異物判定】

【処理:排出】


「排出って何!? 人をトイレみたいに扱うな!」

魔王(まおう)は人ではない」

「アドミニス、今のは本当に最悪寄り」

「訂正する。魔王(まおう)も、()()()()ではない」


 ゼルドは笑わなかった。黒いマントの裾が床を焦がす。コヨリはその横顔を見て、ふざけた言葉を一度飲み込んだ。


勇者(ゆうしゃ)専用だったのは、なぜ?」

帰還門(きかんもん)は、召喚された勇者(ゆうしゃ)を元世界へ返すための扉として作られた。魔王(まおう)拠点(きょてん)住民、シードの記録を通す想定はなかった」

「想定外って便利だね」

「便利に使ってきた。だから、今、刺さっている」

「刺されて当然」


 ベルが検査口の横に立ち、即席の改修申請書を広げる。


帰還門(きかんもん)を、勇者(ゆうしゃ)専用から勇者(ゆうしゃ)接続型へ変更します」

「違いは?」

勇者(ゆうしゃ)本人だけを通すのではなく、勇者(ゆうしゃ)が持つ縁と記録を接続対象に含めます」

「ベル、すごい。言葉は難しいけど、なんか希望がある」

「難しい言葉は、神様に逃げ道を作らせないためです」

「やっぱり法務が強い!」


 ゼルドは一歩前へ出た。


「余のログを通せ。勇者(ゆうしゃ)の物語に魔王(まおう)が含まれぬと、誰が決めた」

「扉が噛む可能性があります」とログル。

「噛んだら噛み返す」

魔王(まおう)さん、扉相手に物理で勝とうとしないで!」


 コヨリは魔王ログ(まおうログ)の黒い輪を持った。重い。けれど、縁の倉庫で見た重さとは違う。これは役割として貼られた重さだ。


 検査口へ近づけると、白い扉が口みたいに開いた。


「ほんとに噛むタイプじゃん!」


 魔王ログ棚の仮ラベルを見て、ゼルドは不満そうに鼻を鳴らした。コヨリは棚の横へ『勇者専用を拡張する』と書き、裁断口には大きな×印をつける。


【今回の攻略メモ】

帰還門拡張案きかんもんかくちょうあん Lv.1】

【差し込み口に見えるものほど確認】

【魔王ログを異物扱いで捨てない】


 ゼルドの魔王ログ(まおうログ)には、やたら失礼な項目が混ざっていた。


魔王(まおう)未討伐】

魔王(まおう)討伐済み】

魔王(まおう)役不足】

勇者(ゆうしゃ)に優しいため不適合】


「最後の札、何!?」

「余に聞くな。余も不快だ」

勇者(ゆうしゃ)に優しい魔王(まおう)、最高じゃん! 不適合って誰の基準!?」

「神様側の物語条件だ」とアドミニス。

「物語条件で人格を減点するな!」


 ゼルドは札を一枚つまみ、白い炎で焼こうとした。ログルが慌てて止める。


「燃やすと、帰還門(きかんもん)の拡張材料も失われます」

「では、燃やさずに呪う」

「呪いも処理が面倒です」とベル。

魔王(まおう)の尊厳はどこへ置けばいい」

「こちらに専用棚を作ります」

「棚!?」

魔王ログ(まおうログ)棚です」

「余の尊厳が収納家具になったぞ!」


 コヨリは笑いかけたが、すぐに真顔になる。魔王(まおう)も、役割として使われていた。勇者(ゆうしゃ)魔王(まおう)をぶつけるための札として。ゼルドが怒るのは当然だった。


帰還門(きかんもん)、改造しよう」

「簡単に言うね」とアドミニス。

「簡単じゃないのは知ってる。でも、勇者(ゆうしゃ)専用のままだと、わたしが持って帰りたいものを全部弾く」

「持って帰る、ではなく接続する」

「そう。それ。接続する」


 ベルが満足そうに羽ペンを鳴らした。


 帰還門(きかんもん)の奥で、次の区画が静かに開いた。



 魔王ログ検査口の脇に、噛まれた跡つきの石板が落ちていた。コヨリは『魔王ログは帰還門を通れない』と書き、裁断口の絵に大きなバツをつける。ゼルドはその絵を見て、少しだけ満足そうだった。


魔王ログ(まおうログ)棚って、あとで見返したら絶対笑うやつだよね」

「笑える形で保管できるなら、破棄より安全です」

「ログル、笑いを倉庫術にするな」

勇者(ゆうしゃ)様が普段から行っています」

「わたしの人生、倉庫術扱い!?」

「正確には死因(しいん)整理術です」

「もっと嫌!」


「神様」

「うん」

「勇者専用って表示、もう信用しない」

「拡張する」

「魔王さんも、ネムも、ベルも、ログルも、勝手に弾かせない」

「その分、扉は難しくなる」

「難しい方を攻略するのが、今さら得意になっちゃったんだよ」


 コヨリは裁断口へ大きな×印を足した。噛む扉には、まず口を閉じさせるところからだ。

【登場人物紹介】

コヨリ:魔王ログは帰還門を通れないで帰還門攻略に振り回される。ログル:盤面と記録を照合。アドミニス:案内しつつ言い訳を重ねる。ベル・ネム・ゼルド:それぞれ契約、死の扱い、役割の被害から神様仕様を刺す。


【今回の勇者ステータス】

総死亡回数:1014回 → 1016回

千回死亡条件カウンター:1000/1000 停止/魔王ログは帰還門を通れない後も不動

神様側死亡ログ送信:遮断維持/拠点保存ログ確認番号10

クラス:帰還者候補/死因学者系統

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動】


【獲得済み主要スキル】

神様仕様突破:【一フレームの神様 Lv.3】【死亡対象上書き Lv.1】【千回死亡条件破壊 Lv.1】

ログ・所有権:【死亡ログ返還 Lv.1】【ログ差し戻し Lv.3】【死亡ログ所有権確認 Lv.2】

帰還門攻略:【帰還時間警戒 Lv.1】【帰還門共鳴 Lv.1】【神様失敗ログ読解 Lv.1】【帰還門拡張案 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【帰還門拡張案 Lv.1】

内部更新:帰還門ダンジョン攻略ログを拠点側へ保存。


【ローグライクあるあるネタ】

持ち込み不可・専用装備・種別違いで弾かれる事故の変換です。装備できない武器、入らない壺、通らない扉、店主判定など、分類ミスがそのまま死因になります。今回は勇者専用の帰還門が魔王ログを異物扱いし、差し込み口に見えた場所が裁断口だった、という識別ミスにしました。


魔王ログまで弾かれる帰還門ですが、続きを楽しみにしていただけたらブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ