アドミニスの失敗リスト
安全部屋の壁には、神様が隠していた失敗が並んでいた。
コヨリはそれを、攻略情報ではなく自白として読む。
安全部屋の壁には、宝箱のかわりに白い札が並んでいた。部屋の名前は【失敗リスト保管室】。敵はいない。罠の匂いも薄い。けれど、コヨリは入口から動かなかった。安全部屋で壺を押して魔物が出た記憶が、死因図鑑室の奥で笑っている。
「ログル。敵は?」
「いません」
「罠は?」
「目立つものはありません」
「目立たないものは?」
「神様の言葉です」
「それが一番痛い!」
アドミニスは白い札を一枚ずつ点灯させた。
【帰還失敗:名前欠落】
【帰還失敗:記憶欠損】
【帰還失敗:役割のみ帰還】
【帰還失敗:座標誤認】
【帰還失敗:時間差過大】
【世界切替処理へ移行】
コヨリは怒鳴ろうとして、怒鳴れなかった。失敗が多すぎる。ギャグとして拾う前に、喉の奥へ沈んでしまう。
「これ、全部、前の勇者?」
「全部ではない。勇者、魔王役、召喚候補、未登録の帰還者。古いログも混ざっている」
「分類する前の未識別の壺みたいに、人を並べてたってこと?」
「当時は、正しい分け方が分からなかった」
「分からないものを、帰還処理に使ったの?」
「使った」
ベルが羽ペンを止め、ネムが受付票を伏せる。ゼルドは低い声で言った。
「主神よ。今のは説明ではなく、自白だ」
「分かっている」
「分かっていて、なぜ続けた」
「止めたら世界が先に壊れると思った。感情を見ると手が止まる。だから見ないようにした」
コヨリは壁の余白に羽ペンを押しつけた。字は少し震えている。
【次の子で試すな】
「事情は分かった」
「うん」
「言い訳も聞いた」
「うん」
「でも、わたしを黙って千回殺していい理由にはならない」
「......うん」
「協力はして。許すかどうかは、帰ってから考える」
ログルの宝石に静かな文字が浮かぶ。
【神様失敗ログ読解 Lv.1】
【分類:攻略情報/自白/未解決】
死亡ログは増えなかった。けれど、コヨリはいつもの死亡後より疲れていた。安全部屋で死なないことと、傷つかないことは別らしい。
【登場人物紹介】
コヨリ:アドミニスの失敗リストで帰還門攻略に振り回される。ログル:盤面と記録を照合。アドミニス:案内しつつ言い訳を重ねる。ベル・ネム・ゼルド:それぞれ契約、死の扱い、役割の被害から神様仕様を刺す。
【今回の勇者ステータス】
総死亡回数:1014回(この話では増加なし)
千回死亡条件カウンター:1000/1000 停止/アドミニスの失敗リスト後も不動
神様側死亡ログ送信:遮断維持/拠点保存ログ確認番号09
クラス:帰還者候補/死因学者系統
基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動】
【獲得済み主要スキル】
神様仕様突破:【一フレームの神様 Lv.3】【死亡対象上書き Lv.1】【千回死亡条件破壊 Lv.1】
ログ・所有権:【死亡ログ返還 Lv.1】【ログ差し戻し Lv.3】【死亡ログ所有権確認 Lv.2】
帰還門攻略:【帰還座標疑似視認 Lv.1】【帰還時間警戒 Lv.1】【帰還門共鳴 Lv.1】【神様失敗ログ読解 Lv.1】
【今回の新規獲得・更新】
新規獲得:【神様失敗ログ読解 Lv.1】
内部更新:帰還門ダンジョン攻略ログを拠点側へ保存。
【ローグライクあるあるネタ】
安全部屋・休憩部屋で気が緩むあるあるです。敵がいないから壺を押したら魔物が出る、店で商品整理中に操作を間違える、攻略メモを読んでいる間に判断が雑になる。今回は戦闘なしの部屋でも、神様の失敗リストを“ただの攻略情報”として読むと危険、という形にしています。
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