表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第24章 神様の究極1000フロアダンジョン――強くても、外れたら死ぬ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
222/340

死亡受付と契約書の990F

死神は受付を閉めたい。

秘書は契約書(けいやくしょ)を直したい。

コヨリは書類で死にたくない。

 990Fは、役所だった。


 白い窓口が横一列に並び、番号札が空中を飛んでいる。床には()印。壁には申請書。奥のカウンターには、ネムがいた。眠そうな顔のまま、受付窓口を半分だけ閉めている。


「ネム、ここダンジョンだよね?」

死亡受付(しぼううけつけ)臨時窓口(りんじまどぐち)にされた」

「神様、ダンジョンに役所を入れるなあああああ」

「ぼくも帰りたい」


 窓口の前には、白い札が列を作っている。


死亡予定(しぼうよてい)

死亡相当(しぼうそうとう)

死亡扱い(しぼうあつかい)

【死亡してほしい】


 コヨリは最後の札を見て、顔をしかめた。


「最後、願望じゃん」

「受付不可」


 ネムは判子を押した。札が煙になる。だが、別の札がすぐ並ぶ。死亡していないものを死亡にしたい神様仕様(かみさましよう)が、窓口を埋めようとしている。


 ベルは隣の机で契約書(けいやくしょ)を広げていた。死亡対象(しぼうたいしょう)名の書き換え文。魔王条件切り離しまおうじょうけんきりはなしの文。ログ所有権の返還文。どれも一文字違えば別処理(しょり)になる。


勇者(ゆうしゃ)様、ここで正式文面を絞ります」

「今? 敵が並んでるけど」

「並んでいるからです。受付と契約が同時に開いている今しか、対象欄に触れません」

「書類の都合で命がけになるの、すごく嫌!」


 コヨリはベルの横に立つ。ネムは札をさばく。ログルは番号札の動きを見る。死亡予定(しぼうよてい)票がこちらへ流れてくるたび、ネムが判子で弾く。ベルの羽ペンは速い。速いが、焦っていない。


 候補文が並ぶ。


千回死亡条件せんかいしぼうじょうけん

【千回死亡処理(しぼうしょり)

【千回死亡仕様】

【|千回死亡条件による世界切替処理《せんかいしぼうじょうけんによるせかいきりかえしょり》】


「長い!」

正式名(せいしきめい)に近いほど安全です」

「長いと間に合わない!」

「だから削ります。削りすぎれば誤爆します」

契約書(けいやくしょ)、ラスボスより怖い!」

「ラスボスより怖いものを相手にしております」


 ネムの窓口が揺れた。【死亡してほしい】の束が、判子を避けて流れ込む。コヨリは白紙巻物(はくしのまきもの)で受けようとする。ベルは文面の読点を打つ。ログルが止めた。


「その読点、対象が分かれます」

「え」


 読点一つで、【千回死亡条件せんかいしぼうじょうけん】と【世界切替処理(せかいきりかえしょり)】が別扱いになる。別扱いになれば、片方だけ死んで片方が残る。神様仕様(かみさましよう)が逃げる。


 ベルが書き直す。その一瞬、コヨリが死亡予定(しぼうよてい)票の束を体で受けた。紙なのに重い。願望のくせに、圧がある。


死亡ログ(しぼうログ)

【死因:死亡してほしい票を止めながら、死亡対象(しぼうたいしょう)名の読点を見失った】

【評価:書類戦でも足元と句読点】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 拠点(きょてん)反省会(はんせいかい)テーブルは、書類でいっぱいになった。コヨリは紙の山に埋もれ、顔だけ出している。


「書類で死にたくない」

「死にました」

「過去形やめて」


 ネムは【死亡予定拒否(しぼうよていきょひ) Lv.2】の札を置いた。ベルは正式文面を一行だけ残す。長い説明を削り、対象名を逃がさない形にする。


死亡対象(しぼうたいしょう):|千回死亡条件による世界切替処理《せんかいしぼうじょうけんによるせかいきりかえしょり》】


 コヨリはそれを見て、深く息を吐いた。


「長いけど、これなんだ」

「はい。殺すべき仕様の名前です」


死亡回数(しぼうかいすう):990回 → 993回】

【更新:死亡予定拒否(しぼうよていきょひ) Lv.1 → Lv.2】

【新規獲得:対象名精査(たいしょうめいせいさ) Lv.1】


 990Fの書類は、拠点(きょてん)へ戻ってからも机を占領した。コヨリは紙の山を見て、深層(しんそう)モンスターより圧があると本気で思った。紙は噛まない。走らない。だが、読み間違えると死ぬ。そういう意味では、かなり強い敵だ。


「ベルさん、これ全部いる?」

「全部は不要です。不要なものを除くために、全部確認します」

「哲学みたいな嫌さ!」


 ネムは、死亡してほしい票を小箱に詰めた。箱には【願望】と書かれている。死亡予定(しぼうよてい)でも、死亡相当(しぼうそうとう)でもない。ただの願望。そう分類されるだけで、札の力は少し弱くなった。


「ネム、分類って強いね」

「名前を間違えないの、大事」

「わたしも、死亡対象(しぼうたいしょう)名を間違えないようにしないと」

「うん。死神的にも、そのほうが助かる」


 コヨリは正式文面を何度も読んだ。


【|千回死亡条件による世界切替処理《せんかいしぼうじょうけんによるせかいきりかえしょり》】


 長い。舌を噛みそうだ。けれど、この長さは逃げ道を塞ぐための長さだ。神様仕様(かみさましよう)が「それは別処理(しょり)です」と逃げないようにするための檻。


 壁には、ベルの字でこう書かれた。


【短くするのは、正確にしてから】


 コヨリはその下に、自分の字で小さく足した。


【あせって略さない】

【登場人物紹介】

コヨリ:死亡予定(しぼうよてい)票を体で止めながら、正式対象名の読点問題に巻き込まれた。紙で死にたくないと言いながら、書類戦の中心に立つ。

ネム:死亡受付(しぼううけつけ)臨時窓口(りんじまどぐち)を半分閉め、死んでいない(・・・・・・)ものを死亡として扱う票を拒否した。無気力なのに熱い回。

ベル:死亡対象(しぼうたいしょう)名の正式文面を絞り込み、読点一つで仕様が逃げる危険を見抜いた。ラスボスより怖い契約書(けいやくしょ)を作っている。

ログル:読点による対象分割を警告。解析がなければ、最後の上書き対象がずれていた。

死亡してほしい票:もはや事実ですらない願望札。ネムに最も嫌われた。


【今回の勇者(ゆうしゃ)ステータス】

死亡回数(しぼうかいすう):990回 → 993回

到達階層(とうたつかいそう):990F

主な成果:正式対象名の確定候補を取得

クラス:帰還者候補/死因学者(しいんがくしゃ)系統

基本スキル:【|基本ローグライクスキル《きほんローグライクスキル》:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

契約・受付系:【死亡予定拒否(しぼうよていきょひ) Lv.2】【対象名精査(たいしょうめいせいさ) Lv.1】【死亡ログ所有権確認しぼうログしょゆうけんかくにん Lv.2】【魔王条件切り離しまおうじょうけんきりはなし Lv.1】

神様仕様対策:【一フレームの神様いちフレームのかみさま Lv.2】【ログ差し戻し(ログさしもどし) Lv.2】【死亡対象ずらししぼうたいしょうずらし Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

レベルアップ:【死亡予定拒否(しぼうよていきょひ) Lv.1】→【死亡予定拒否(しぼうよていきょひ) Lv.2】

新規獲得:【対象名精査(たいしょうめいせいさ) Lv.1】

正式候補:【|千回死亡条件による世界切替処理《せんかいしぼうじょうけんによるせかいきりかえしょり》】


【ローグライクあるあるネタ】

名前や対象指定を間違える事故は、白紙巻物(はくしのまきもの)(つえ)の対象ミスに近いものです。強い効果ほど、どの敵・どの範囲・どの条件へ当てるかが重要になります。今回は読点ひとつで対象が分裂する、神様仕様(かみさましよう)白紙巻物(はくしのまきもの)ミスとして処理(しょり)しました。


書類で戦うコヨリたちを応援したい方は、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ