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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第24章 神様の究極1000フロアダンジョン――強くても、外れたら死ぬ

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ログ保存壺は口が悪い

死亡ログ(しぼうログ)保存壺(ほぞんつぼ)に入れれば安全。

そんな発想を、(つぼ)は口を開けて待っていた。

 970Fには、(つぼ)だけの店があった。


 棚も床も(つぼ)。壁に埋まっているものまで(つぼ)。入口には、白い文字で【大切なログ、お預かりします】と書いてある。コヨリは読んだ瞬間、三歩下がった。


「預かるって書いてある」

「はい」

「返すとは書いてない」

「重要な読みです」

「わたし、成長した」

「かなり」


 ここまでの深層(しんそう)で、死亡ログ(しぼうログ)は神様側へ吸われかけている。以前ログ差し戻し(ログさしもどし)台を作り、ログルが送信を止め、ベルが所有権を整理した。それでも、1000Fが近づくほど白い糸が伸びてくる。死亡ログ(しぼうログ)を保存できるなら、試したい気持ちはある。


 だが、(つぼ)である。


 便利で、危険で、口がある。


 ハコベエが、拠点(きょてん)から一時投影で顔を出した。店そのものがミミックの商人だけあって、(つぼ)への警戒は妙に強い。


「いらっしゃいませ、勇者(ゆうしゃ)様。口のある商売道具は、信用しすぎないのが商売の基本でございます」

「ハコベエが言うと説得力あるけど、同時に信用しにくい」

「噛みませんので」

「その自己紹介がもう噛む側!」


 ログ保存壺(ほぞんつぼ)は、棚の中央にあった。価格は高い。白い札には【死亡ログ(しぼうログ)を安全に保管】とある。ベルが札の裏を見て、眉を寄せる。


「保管先が書いてありません」

「つまり?」

勇者(ゆうしゃ)様側とは限りません」

(つぼ)にも送り先表示義務をつけて!」


 コヨリは直接入れない。まず、死亡ログ(しぼうログ)の写しを一枚作る。写しの端に【偽物】と書き、(つぼ)の口へ近づける。(つぼ)は黙っている。黙っている(つぼ)は、逆に怖い。


 ログルの宝石が赤く光った。


「口の奥に送信線があります」

「やっぱり!」

「神様側へつながっています」

「預かるじゃなくて横取り!」


 (つぼ)が、そこで口を開いた。


「横取りではありません。安全な上位保管です」


「口答えした!」


 コヨリは写しを引っ込めようとした。だが、(つぼ)の吸引が強い。紙の端が引かれる。ログルが宝石の光で押し返す。ベルが契約札を貼る。ハコベエが「同業者として口の使い方が下品」と(つぼ)に文句を言う。


 (つぼ)が怒った。


 棚の(つぼ)が一斉に揺れ、床へ落ちる。割れない。転がる。通路をふさぐ。コヨリは逃げ道を探すが、足元に小さな(つぼ)の欠片が散った。踏めば一手。避けても一手。


 ログの写しを守るか、足元を見るか。


 コヨリは写しを引いた。守れた。足元は見落とした。


 (つぼ)の欠片が靴底に刺さり、白い送信線が足首を絡めた。


死亡ログ(しぼうログ)

【死因:ログ保存壺(ほぞんつぼ)から写しを守って、足元の送信欠片を踏んだ】

【評価:保存先まで識別しましょう】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 拠点(きょてん)に戻ると、コヨリの手には写しの端だけが残っていた。完全ではない。けれど、奪われきってもいない。


「ログル、持ち帰れた?」

「一部だけですが」

「一部でも、こっちのもの?」

「はい。(つぼ)に渡していない分は、拠点(きょてん)側です」


 ベルは【保管先未記載は信用しない】と書いた。ハコベエはその横に【口のある保管具は面接必須】と足した。コヨリは笑いそうになり、でも少しだけ泣きそうになった。


 死亡ログ(しぼうログ)は、物ではない。(つぼ)にしまえば安全、という話ではない。誰が持つのか。どこへ送るのか。名前が残るのか。そこまで見ないと、保存ではなく譲渡になる。


死亡回数(しぼうかいすう):984回 → 987回】

【新規獲得:ログ保存先確認ログほぞんさきかくにん Lv.1】


 ログ保存壺(ほぞんつぼ)の欠片は、拠点(きょてん)に持ち帰るとまだ小さく喋った。返却、保管、上位管理、安全化。どれもそれっぽい言葉だが、ベルが聞くたびに眉間のしわを深くする。ハコベエは欠片を箱の中へ入れ、蓋に【口答え注意】と書いた。


(つぼ)って、便利なんだけどなあ」

「便利です」

「便利だから、信じたくなる」

「はい。信じたくなるものほど、保管先を見ます」


 コヨリは、死亡ログ(しぼうログ)の写しを棚へ置いた。一部だけ。端が欠けている。でも、神様側へ全部吸われるよりずっといい。ログルがその欠けた部分を見つめる目は、少し悔しそうだった。


「全部は戻せなかった」

「今回は一部です」

「次は?」

「返還炉ができれば、もう少し戻せます」

「炉。なんか強そう」

死亡ログ(しぼうログ)返還炉、仮称です」

「名前、すでに重い」


 帰還門(きかんもん)建設予定地の端が、かすかに光った。死亡ログ(しぼうログ)がこちらへ戻るほど、帰るための材料も戻ってくる。コヨリはその光を見て、(つぼ)の欠片から視線を外した。保存するのは過去だけではない。帰るための未来も、ここに少しずつ残している。


【登場人物紹介】

コヨリ:死亡ログ(しぼうログ)の写しを(つぼ)へ入れる前に、保管先を確認しようとした。写しは一部守ったが、足元の送信欠片で死亡。

ログル:(つぼ)の奥に神様側への送信線を発見。ログ差し戻し(ログさしもどし)台と連携し、写しの一部を拠点(きょてん)側に残した。

ベル:保管先が書かれていない(つぼ)を即座に疑った。法務担当として、保存と譲渡の違いを見抜く。

ハコベエ:同じ「口のある商売道具」としてログ保存壺(ほぞんつぼ)に苦言を呈した。説得力と信用しにくさが同居している。

ログ保存壺(ほぞんつぼ):大切なログを預かる顔で神様側へ送る危険(つぼ)(つぼ)なのに口が悪い。


【今回の勇者(ゆうしゃ)ステータス】

死亡回数(しぼうかいすう):984回 → 987回

到達階層(とうたつかいそう):970F

主な成果:死亡ログ(しぼうログ)写しの一部を拠点(きょてん)側へ保持

クラス:帰還者候補/死因学者(しいんがくしゃ)系統

基本スキル:【|基本ローグライクスキル《きほんローグライクスキル》:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

ログ系:【ログ管理 Lv.2】【ログ差し戻し(ログさしもどし) Lv.2】【死亡ログ所有権確認しぼうログしょゆうけんかくにん Lv.2】【死亡ログ(しぼうログ)先行感知 Lv.1】

深層(しんそう)継続:【神様仕様(かみさましよう)仮名づけ Lv.1】【高速識別整理 Lv.1】【再到達油断警戒 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【ログ保存先確認ログほぞんさきかくにん Lv.1】

内部更新:【保存と譲渡の区別】がベルの書類棚へ追加


【ローグライクあるあるネタ】

保存壺(ほぞんつぼ)は便利ですが、(つぼ)の種類や使い方を間違えると、大事な道具を守るどころか事故につながります。入れる前に死ぬ、取り出せない、別の(つぼ)だった、という(つぼ)事故を、今回は死亡ログ(しぼうログ)の所有権と保存先の問題に変換しました。保管先の確認は深層(しんそう)ほど大事です。


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