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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第4章 属性迷宮と魔法使いクラス

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水魔法で床を滑らせ、氷魔法で自分も滑る

属性迷宮二階です。

床が変わります。

氷は敵だけでなく、コヨリも滑らせます。


 属性迷宮二階は、床が忙しかった。


 赤い床が火。青い床が水。白く曇った床が氷。茶色い床が土。

 しかも、数ターンごとに色が変わる。


「ログル。床が落ち着かない」

「属性変動階層です」

「床にも情緒って必要だと思う!」

「床に情緒を求めるより、変化周期を見た方が生存率は上がります」


 ルーメは床にしゃがみ込み、白い床をつついていた。


「冷たいですね」

「氷床?」

「たぶん氷です。たぶん」

「ルーメさんのたぶん、命に関わる!」


 前方には、丸い石の魔物が二体いる。

 ころころ転がるタイプだ。あれも名前にころころがつきそうで嫌だった。


「勇者様。石玉魔物です。直線移動。壁に当たると止まります」

「じゃあ氷で滑らせたら?」

「有効です。ただし、勇者様も滑ります」

「わたしは滑らないように歩く!」

「その自信は死亡ログ上、不安材料です」


 ルーメが本を開いた。


「移動阻害の魔法を思い出しました」

「効果は?」

「床が、いい感じになります」

「どんな感じ!?」

「つるつるです」

「言い方かわいいけど危ない!」


 わたしは足元を見る。

 右に水床、左に乾いた石床。前方二マスに白い床。石玉魔物はその奥。


「敵の前だけ氷にする。わたしは石床に残る」

「良い判断です」


 ルーメが詠唱する。

 一ターン。石玉が一マス転がる。

 二ターン。わたしは下がる。


霜ふり床(しもふりゆか)!」


 白い霜が床を覆った。

 石玉魔物は勢いよく滑り、壁にぶつかって止まる。


「成功!」

「まだです」


 その瞬間、床の属性が変わった。

 わたしの足元の石床が、白く凍る。


「え」

「変動周期です」

「今!?」


 次の一手。わたしは踏ん張ろうとした。

 踏ん張る、も行動判定だった。


 足がつるんと滑る。


「待って! 幼女の足に氷上性能はない!」


 すべる。止まらない。曲がれない。

 滑った先には、黒い穴があった。


「ログル、穴!」

「落とし穴です」

「見えてる! 見えてるけど止まらない!」

「鍋のふたを床へ」

「間に合わないいいいいいいいい!」


 すぽん、と落ちた。


 視界が白く弾ける直前、わたしは叫んだ。


「神様ァ! 氷魔法に幼女用すべり止めつけてえええええええ!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


【死亡ログ】


死亡回数:24回目

死因:【霜ふり床で自分も滑って落とし穴に入った】

評価:【氷は敵味方を選びません】

新規獲得:【霜ふり床 Lv.1】

新規獲得:【属性床警戒 Lv.1】


 白い拠点で、わたしは床に寝転がったまま足をばたばたした。


「氷、嫌い!」

「勇者様、料理人のときは火も嫌っていました」

「属性ぜんぶ嫌いになりそう!」

「魔法使いクラスの道は長いです」


 リュシアが厨房から布巾を投げてきた。


「床を見るだけじゃなく、床が変わるかも見なきゃね」

「床が変わるの、ずるくない?」

「ダンジョンだもの」

「便利な言葉!」


 ログルは死因図鑑に書き込む。


【属性床】

一定ターンで性質が変わる場合がある。

火、水、氷、雷、土の影響を受ける。

魔法で変えた床は、敵だけでなく自分にも影響する。


「前、食材は調理すると効果が変わるって覚えた」

「はい」

「今回は、床は属性で性格が変わる」

「かなり正確です」

「床に性格がある世界、帰りたい!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 再挑戦では、わたしは床の色だけでなく、変化の順番を見ることにした。


 赤、青、白、茶。

 四ターンで一周。


「今が茶。次が赤。二手後に青。三手後に白」

「確認できています」

「氷になる前に動かない!」

「かなり良いです」


 石玉魔物が転がってくる。

 わたしは自分の足元ではなく、敵の進路だけに【霜ふり床】を置いた。


 石玉が滑る。

 壁へ当たる。

 動きが止まる。


 次のターン、わたしは石床へ移動。氷に変わる前に離れる。


「できた!」

「魔法を敵に当てるのではなく、床に置きましたね」

「食材も、直接食べずに料理したからね」

「応用できています」

「いま褒めた? ログル、褒めた?」

「記録上は、少しだけ」

「素直に褒めて!」


 ルーメはにこにこしていた。


「霜ふり床、いい魔法ですね」

「いい魔法だけど、使う場所を間違えたら殺意のあるスケートリンクになるよ」

「覚えておきます」

「ルーメさん、ほんとに覚えて!」


 奥の扉が開く。

 その向こうには、巻物が落ちていた。


 未識別の巻物。


 わたしとログルは、同時に黙った。


【今回の死亡ログ】


死亡時レベル:Lv1

死亡時HP:0/15

死亡時満腹度:55/100

今回の死因:【霜ふり床で自分も滑って落とし穴に入った】

評価:【氷は敵味方を選びません】

ロスト:【未登録探索成果】

新規獲得:【霜ふり床 Lv.1】【属性床警戒 Lv.1】


【今回の勇者ステータス】


現在シード:シード019

次回開始:Lv1/HP15

死亡回数:24回

クラス:勇者

クラス適性:魔法使い適性 発現

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】


【危険察知 Lv.2】

【足元確認 Lv.2】

【未識別警戒 Lv.3】

【食材識別 Lv.2】

【満腹度節約 Lv.1】

【詠唱前確認 Lv.1】

【魔法誤爆警戒 Lv.1】

【範囲魔法警戒 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【霜ふり床 Lv.1】

新規獲得:【属性床警戒 Lv.1】


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