表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第24章 神様の究極1000フロアダンジョン――強くても、外れたら死ぬ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
217/340

前より弱く、前より深く

930Fへ戻ってきた。

前よりレベルは低い。でも、前より死ににくい。


 930Fの灰色の床を、コヨリはもう一度踏んだ。


 最初にここへ来た時、Lvは86、HPは947だった。神銀の短剣(しんぎんのたんけん)は+42。世界種の小盾(せかいしゅのこだて)は+38。腕輪(うでわ)も二つ。数字は強かった。だが、装備外し(そうびはずし)(わな)で崩れ、盾を拾う一手(・・・・)で死んだ。


 今は違う。


【現在階層(かいそう):930F】

勇者(ゆうしゃ)コヨリ:Lv46】

【HP:438/438】

満腹度(まんぷくど):52】

【装備:銀の短剣(たんけん)+14/小盾(こだて)改+12/弾きよけの腕輪(はじきよけのうでわ)

【手持ち:場所替えの杖(ばしょがえのつえ) 残り2回/吹き飛ばしの(つえ) 残り1回/白紙巻物(はくしのまきもの)復活草(ふっかつそう) 手元】


 前より弱い(・・・・・)


 なのに、前より息がしやすかった。


「ログル」

「はい」

「数字、低いね」

「はい」

「でも――手元がきれい」

「はい。復活草(ふっかつそう)(つぼ)の奥ではありません。(つえ)も分散しています。保存壺(ほぞんつぼ)に空きもあります」

前より弱い(・・・・・)のに、前より生きてる(・・・・・・・)感じがする」

「それが今回の強さです」


 装備確認の白い文字は、まだ床にあった。コヨリはそこを踏まない。横の草も見ない。階段(かいだん)の位置は同じだ。前回、盾を拾おうとして死んだ場所に、小さな黒い跡が残っている。


 コヨリは、そこで足を止めた。


 怖い。装備が前より弱い(・・・・・)分、()は痛い。盾も頼りない。けれど、逃げる手は残っている。場所替えの杖(ばしょがえのつえ)、吹き飛ばしの(つえ)復活草(ふっかつそう)。何より、拾わないと決めた記録がある。


 深層狙撃鬼(しんそうそげきおに)が弓を引く。倍速ヤマネコ(ばいそくヤマネコ)が角から顔を出す。床の白い文字が、確認という顔で光る。


 コヨリは盾を見なかった。


 盾は落ちていない。今回は落としていない。なのに、記憶の中では落ちている。拾いたい衝動がないわけではない。過去の自分が落としたものを、今の自分が取り返したくなる。でも、それは違う。


「場所替え、右の敵」

「成功率高いです。入れ替え先の床、青」

「振る」


 (つえ)を振る。敵と位置が入れ替わる。深層狙撃鬼(しんそうそげきおに)射線(しゃせん)がずれ、倍速ヤマネコ(ばいそくヤマネコ)が空を切った。コヨリは階段(かいだん)へ一歩。次の一歩で、930Fを越える。


 足元に、小さな札が浮いた。


【落とし物:世界種の小盾(せかいしゅのこだて)


 (わな)だ。


 コヨリは、見なかった。


 見なかったことにして、階段(かいだん)を降りた。


 931Fの空気が、肺に入る。


 しかし、安心した瞬間、階段(かいだん)の裏に隠れていた白い刃が足首に触れた。神様仕様(かみさましよう)の追撃。階段(かいだん)を降りた後の一手まで油断するなという、最悪の授業だった。


死亡ログ(しぼうログ)

【死因:930Fを越えた直後、安心して階段(かいだん)裏の白刃を見落とした】

【評価:越えた瞬間も、まだ深層(しんそう)です】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 拠点(きょてん)に戻ったコヨリは、悔しそうなのに少し笑っていた。


「ログル――越えた」

「はい。930Fを越えました」

「死んだけど」

「はい」

「でも――盾を拾わなかった」

「はい。それは、とても大きいです」


 失敗は失敗だ。だが、前と同じ失敗ではない。930Fで死んだのではなく、930Fを越えた直後に死んだ。神様仕様(かみさましよう)の追撃は腹立たしい。けれど、床に置かれた偽物の小盾(こだて)を見なかったことは、ちゃんと勝ちだった。


 壁に、新しい文が入る。


【前より弱く、前より深く】


死亡回数(しぼうかいすう):974回 → 977回】

【新規獲得:再到達油断警戒 Lv.1】


 930F突破の成功ログは、死因図鑑(しいんずかん)室ではなく反省会(はんせいかい)テーブルの真ん中に置かれた。死亡ログ(しぼうログ)と成功ログの境目にあるような記録だったからだ。死んだ。けれど、前回死んだ場所は越えた。死因は同じではない。そこに、コヨリは妙な希望を感じた。


「ログル――死んだけど成功って、変じゃない?」

「ローグライクでは珍しくありません」

「その言い方、なんかずるい」

深層(しんそう)では、到達地点が伸びたこと自体が成果です」

「じゃあ――今回はちょっと勝ち?」

「はい。ちょっと勝ちです」


 ちょっと勝ち。コヨリはその響きが気に入った。完全勝利ではない。大勝利でもない。神様を倒したわけでもない。でも、前回の自分より一マス先へ行った。その一マスが、1000Fまでの道になる。


 壁の【前より弱く、前より深く】の下に、ログルが小さく追記した。


【数字ではなく、残った手数】


 コヨリはそれを見て、頬をふくらませた。


「かっこいいこと書くじゃん」

勇者(ゆうしゃ)様の言葉を整理しただけです」

「じゃあ――わたしもかっこいい?」

「少し」

「そこは大きく言って!」


【登場人物紹介】

コヨリ:Lv46、HP438という前より低い数字で930Fへ再到達。落とし物の誘惑を見ずに越えたが、突破直後の油断で死亡した。

ログル:今回は数字の弱さではなく、手持ちと判断の整い方を強さとして評価。930F突破をきちんと成功として扱った。

深層狙撃鬼(しんそうそげきおに):前回コヨリを殺した敵。今回は場所替えで射線(しゃせん)をずらされ、ようやく攻略された。

偽の世界種の小盾(せかいしゅのこだて):過去の後悔を床に投影した(わな)。拾えばまた死んでいた可能性が高い。

階段(かいだん)裏の白刃:突破後の安心を狙う神様仕様(かみさましよう)。勝利演出の裏に置かれる、だいぶ性格の悪い(わな)


【今回の勇者(ゆうしゃ)ステータス】

死亡回数(しぼうかいすう):974回 → 977回

到達階層(とうたつかいそう):931F

再到達時:Lv46/HP438/438

クラス:帰還者候補/死因学者(しいんがくしゃ)系統

基本スキル:【|基本ローグライクスキル《きほんローグライクスキル》:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

深層(しんそう)攻略:【装備外し深層警戒そうびはずししんそうけいかい Lv.1】【装備はじき後退判断そうびはじきこうたいはんだん Lv.1】【即時使用品配置 Lv.1】【未探索許容 Lv.1】【モンハウ離脱完了確認 Lv.1】

千回条件系:【一フレームの神様いちフレームのかみさま Lv.2】【死亡対象ずらししぼうたいしょうずらし Lv.1】【ログ差し戻し(ログさしもどし) Lv.2】


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【再到達油断警戒 Lv.1】

重要記録:【930F突破】が死因図鑑(しいんずかん)室に成功寄りログとして登録


【ローグライクあるあるネタ】

再到達時に前回の失敗地点を越えると、プレイヤー心理として一気に安心しがちです。ただ、階段(かいだん)を降りた直後や部屋を抜けた直後にも(わな)や敵はあります。今回は「前回死んだ場所を越えた喜び」と、「その直後の油断死」をセットにしました。


前より弱く深く潜るコヨリを応援していただける方は、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューをいただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ