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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第21章 滅亡シード千本ノック――世界の死に方を識別する

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滅亡原因ぜんぶ盛りシード

食料不足、爆ぜ岩、倍速敵、店事故、帰還門暴走。

神様、全部同時に出すな。

コヨリ、地図を読む前に地図が死因ログで埋まります。


 シードに入った瞬間、コヨリは地図を閉じた。

 開く前から分かった。畑には爆ぜ岩が植わり、空には帰還門が開き、道には値札が貼られ、村の外では深層巨人が倍速で歩いている。パン屋の窓には【呼吸料未払い】の札が揺れ、井戸の横では仮魔王札をつけられた青年が保存壺を抱えていた。


「ログル」

「はい」

「これ、神様が反省してない」

「複合滅亡シードです」

「反省してないって言って!」



 地図を開くと、紙面がすぐに死因ログで埋まった。赤い線は帰還門の吸引、黄色い丸は爆ぜ岩、黒い足跡は深層巨人、青い波線は値札床。そこへ倍速敵の移動予測が重なり、保存壺から漏れた記憶の粉が紙の上でにじんだ。地図というより、神様の失敗を煮詰めた鍋だった。


「読めない」

「情報量が多すぎます」

「ログル、消せる?」

「どれを消しても死因です」

「選択肢が地獄!」


 拠点へ一度戻ったコヨリは、反省会テーブルに地図を広げ、仲間たちを呼んだ。リュシアはスープを置き、ベルは契約書を並べ、ゼルドは腕を組んで仮魔王札の位置を見ている。ネムはなぜか受付票の束を持って立っていた。


「ネムさん、まだ死んでない」

「予約が多そうなので」

「予約受付やめて!」


 コヨリは深呼吸し、地図の中央へ丸をつける。


「まず帰還門。吸われたら全部終わる。次に食料。動けないと何もできない。爆ぜ岩は湿らせる。店はベルさんに投げる」

「勇者様、最後の表現は雑です」

「ベルさんに任せる!」

「でしたら承ります」

「ベルさん、頼もしすぎて怖い!」


 アドミニスの窓が開いた。今回は、いつもの笑顔が少し薄い。


「勇者ちゃん。世界が壊れる時、理由は一つとは限らないんだよ」

「それは分かった! 二十話くらいかけて分かった! だから全部同時に出すなあああああ!」


 一回目、爆ぜ岩を避けた先がショップ床で、呼吸料未払いの番犬に追われた。二回目、帰ってきた小石が超不幸の種を運んできた。三回目、倍速敵に追われながら規約を読まされ、四回目、魔王役札を外そうとして帰還門へ吸われた。


【死亡ログ:673回目】

【死因:爆ぜ岩を避けた先が呼吸料ショップだった】

【評価:複合死因】


【死亡ログ:677回目】

【死因:倍速敵に追われながら利用規約を読んだ】

【評価:読む場所が悪い】


 ネムの受付では、死因フォルダが足りなくなった。


「コヨリさん、今回の死因は一つに分類できません」

「じゃあ雑に神様のせいフォルダで!」

「かなり便利ですが、事務上は危険です」

「事務より命!」



 ネムは少し考えてから、空のフォルダへ黒いラベルを貼った。


【複合死】


「雑!」

「ですが、今のところ一番正確です」

「神様のせいフォルダは?」

「作ると、ほぼ全件入ります」

「じゃあ作ろうよ!」

「検索性が落ちます」

「事務が強い!」


 ベルが横から静かに言った。

「勇者様、抗議文では『神様のせい』より『管理不備に起因する複合的破綻』の方が刺さります」

「刺さる抗議文って何!?」

「主神様の逃げ道を減らす文章です」

「ベルさんを敵に回したくないランキング、上位更新!」


 十三回目、コヨリは全部を警戒した。結果、何もできず満腹度が切れた。


【死亡ログ:683回目】

【死因:全部警戒して何もできず満腹度切れ】

【評価:警戒にも行動が必要】


 その死因が、いちばん悔しかった。

 拠点で甘いパンを食べながら、コヨリは地図を見下ろす。危険は多すぎる。けれど、全部を一度に解決しようとすると動けない。だから、彼女は赤い丸を一つだけ選んだ。


「まず、帰還門。吸われると全部終わる。次に食料。動けないと死ぬ。爆ぜ岩は、湿らせる。店はベルさんに投げる」

「最後の表現は雑ですが、順序としては妥当です」

「ベルさんには謝る!」



 リュシアはスープの椀をコヨリの前へ滑らせた。

「ちび勇者ちゃん、優先順位を決める時は、まず腹よ。お腹が空いていると、宝箱も値札もだいたい輝いて見えるわ」

「空腹って視覚デバフだったの!?」

「だいたいそう」

「だいたいで異世界を説明しないで!」


 ゼルドは仮魔王札の位置へ黒い駒を置いた。

「余はここへ行く。役割札は放置すると増える」

「魔王さんが魔王札の除草剤みたいになってる」

「不本意だが、余が立つだけで補填処理は一時停止する」

「魔王本人確認、便利!」

「便利と言うな」


 それぞれの駒が地図の上に置かれると、初めて紙面に道が見えた。全部を消す道ではない。全部を抱えて進む道でもない。一つずつ、今すぐ死ぬ順番から外していくための細い線だった。


 十四回目、コヨリは空の帰還門へピンを刺し、リュシアのスープを一口飲み、霜ふり床で爆ぜ岩の草を湿らせた。ベルが店札へ契約書を貼り、ゼルドが仮魔王札の前に立つ。ログルは白い亀裂を読み、滅亡の倒れる順番を告げた。


「勇者様、全部は止まりません」

「知ってる。でも、一個ずつ持って帰る。神様の失敗を、まとめてごまかさせない」


 コヨリは複合シードの中心へ小石を投げる。小石は帰ってきたが、今度は額へ当たる前に保存壺へ落ちた。保存壺は記憶を吸おうとしたが、外に【複合死因】と名前が書かれている。


 少しだけ、世界の崩れ方が遅くなった。


 その一瞬で、コヨリは黒い欠片をつかむ。欠片は熱く、重く、泣き声みたいな音がした。


【死亡ログ:686回目】

【死因:複合滅亡原因を抱え、重さで潰れた】

【評価:全部は重い】


 拠点へ戻ったコヨリは、床に座り込んだまま欠片を棚へ置く。


「全部は重い。でも、見ないよりまし」

「はい。滅亡原因分類が進みました」

「神様に、これを全部一回抱えさせたい」


【登場人物紹介】

コヨリ:複合滅亡シードで、全部警戒して動けない死を経験した幼女勇者。優先順位を覚えた。

ログル:滅亡が倒れる順番を読み、分類を進めた相棒。

ネム:複合死因で受付フォルダが足りなくなった死神。

アドミニス:複数原因で世界が壊れる現実を見せたが、コヨリに全部同時に出すなと怒られた主神。


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【滅亡シード群】

領域状態:神域固定ダンジョン/破棄シード検証領域

死亡回数:686回

クラス:帰還者

一時役割:滅亡シード検証者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】【足元確認 Lv.5】【未識別警戒 Lv.5】【ミミック警戒 Lv.2】【総合盤面確認 Lv.2】【帰還門感知 Lv.3】【ログ管理 Lv.2】【一フレームの神様 Lv.2】

※表示は主要スキルのみです。下位・派生・細かな死因スキルは統合済み、または内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【複合死因整理 Lv.1】【全部警戒しても動こう Lv.1】【滅亡原因分類 Lv.1】


【ローグライクあるあるネタ】

複合事故回です。強敵、店、満腹度、帰還門、爆発、未識別が重なると、全部警戒して動けなくなるのもローグライクあるあるです。


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