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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第21章 滅亡シード千本ノック――世界の死に方を識別する

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投げたものが全部帰ってくるシード

小石も眠り玉も帰還ピンも、全部コヨリへ戻ってくる。

帰ってくるのは勇者本人だけでいい。

遠投の腕輪、今日は特に外してください。


 最初の小石は、きれいな弧を描いて戻ってきた。

 敵へ投げたはずなのに、なぜか途中でくるりと回り、コヨリの額へこつんと当たる。痛くはない。腹が立つ。


「ログル、今のは?」

「投擲物に帰還属性が誤適用されています」

「帰還属性、仕事を選んで! 小石は敵に行って!」



 念のため、コヨリは鍋のふたを構えた。戻ってくるなら受け止めればいい。そう考えたのだが、次に投げた小石は鍋のふたに当たる寸前で曲がり、盾の裏側から回り込んで額に当たった。


「盾の意味!」

「帰還先が額に近い可能性があります」

「わたしの額を実家認定するな!」



 額を押さえてうずくまるコヨリの横で、戻ってきた小石が満足げにころんと止まった。もちろん小石に表情はない。ないのに、帰ってきました、と言いたげな存在感だけはある。

「かわいくない忠誠心!」

「忠誠ではなく誤登録です」


 敵の弓コボルトが、遠くから石を投げてきた。普通ならこちらへ飛んでくるので避ければいい。だが、その石は一度コボルトの方へ戻りかけ、途中で迷ったように揺れ、最終的にコヨリの方へ飛んできた。


「敵の投げた石までこっち!?」

「現在、投擲物の帰還先が勇者様へ集中しています」

「わたし、投擲物のふるさとじゃない!」


 ログルは真剣な顔で、コヨリの額に冷たい布を当てた。


「勇者様、額の耐久値が心配です」

「額に耐久値を表示しないで。心も削れる」


 二回目、眠り玉を投げた。玉は敵の足元へ落ちる直前で進路を変え、コヨリの足元で割れた。


【死亡ログ:645回目】

【死因:眠り玉が帰ってきて自分が寝た】

【評価:戻り先確認】


 三回目、超不幸の種を敵へ投げた。帰ってきた。結果は言うまでもない。


「不幸だけ律儀に帰ってくるな!」


【死亡ログ:648回目】

【死因:超不幸の種が帰ってきた】

【評価:投げる前に帰還属性確認】


 投げないで進もうとすると、遠くの敵が投げてくる。敵の石も、敵へ帰っていくかと思いきや、なぜかコヨリへ来る。


「わたし、世界の投擲物の実家なの!?」

「現在、帰還先が勇者様へ誤登録されています」

「登録解除! すぐ!」


 十四回目、コヨリは投げるのをやめた。白銀の帰還ピンを地面に刺し、自分の足元へ小さな円を描く。帰ってくるなら、戻り先を指定すればいい。自分ではなく、円の中へ。


「ログル、これで小石がわたしじゃなく円へ帰る?」

「可能性があります。ただし、円の中に立たないでください」

「そこまでバカじゃない!」



 念には念を入れて、コヨリは腕輪を確認した。遠投の腕輪は外してある。呪いの腕輪もない。幸運っぽい腕輪も、前回の不幸シードでこりたので近くに置いていない。確認しすぎて、ログルが少しだけ感心した。


「三回確認しました」

「今日だけは四回する」

「四回目も外れています」

「よし。これで小石が戻ってきたら、完全に世界が悪い」

「かなり世界が悪いです」

「先に言うな!」


 コヨリは円の外へ大きく【ここへ帰る】と書き、さらにその下へ【コヨリへは帰らない】と足した。書いてから、少し不安になって、もう一行追加する。


【額へも帰らない】


「勇者様、具体的です」

「具体的に痛かったからね!」


 小石を投げる。敵へ向かい、途中で戻り、円へ落ちた。成功だ。


「やった!」

「勇者様、円がこちらへ移動しています」

「円まで帰ってくるな!」



 円は思ったより速かった。床に描いた線のくせに、じりじりとこちらへ迫ってくる。中には小石、眠り玉、超不幸の種が仲良く収まっており、どれも帰還先としては最悪の同居人だった。


「ログル、円って歩くの!?」

「歩いてはいません。帰還先として再配置されています」

「見た目が歩いてる!」

「見た目はかなり歩いています」


 コヨリは逃げながら、もう一つ円を描く。すると古い円が新しい円へ帰ろうとして、二つの円が重なり、床の上でぐるぐる回り始めた。


「帰還先同士が迷子になった!」

「今です。離脱を」

「了解! でも、床に丸が二つあるだけでこんなに怖いことある!?」


 帰還先の円がじりじり迫ってきた。コヨリは逃げる。円は床を滑り、眠り玉、超不幸の種、小石を抱えたまま追ってくる。


【死亡ログ:658回目】

【死因:帰還先の円ごと追いかけてきた】

【評価:戻り先も固定しましょう】


 拠点で、コヨリは額を冷やしながら言う。


「帰るって、強い言葉なんだね。間違えると、全部わたしへ戻ってくる」

「はい。だからこそ、帰還門でも対象指定が必要です」

「今日の小石、今まででかなりまじめな教材だったかもしれない」

【登場人物紹介】

コヨリ:投擲物が全部帰ってくる世界で、額を酷使した幼女勇者。

ログル:帰還属性の誤適用と戻り先指定の危険を解析した相棒。

帰還小石たち:敵へ行かず、なぜかコヨリへ忠実に帰ってくる迷惑教材。


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【滅亡シード群】

領域状態:神域固定ダンジョン/破棄シード検証領域

死亡回数:658回

クラス:帰還者

一時役割:滅亡シード検証者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】【足元確認 Lv.5】【未識別警戒 Lv.5】【ミミック警戒 Lv.2】【総合盤面確認 Lv.2】【帰還門感知 Lv.3】【ログ管理 Lv.2】【一フレームの神様 Lv.2】

※表示は主要スキルのみです。下位・派生・細かな死因スキルは統合済み、または内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【帰ってくる投擲警戒 Lv.1】【投げた先より戻り先確認 Lv.1】【帰還属性の誤適用確認 Lv.1】


【ローグライクあるあるネタ】

投擲の跳ね返り、遠投事故、貴重品を投げて戻ってこない事故の逆です。全部戻ると便利ではなく、全部自分へ刺さります。


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