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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第21章 滅亡シード千本ノック――世界の死に方を識別する

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神様自動修正が暴走したシード

壊れた場所を直す白い線。

ただし、直すたびに生活導線が死にます。

神様、現場を見てから修正して

 村の壁にひびが入った。次の瞬間、白い線が空から降りてきて、ひびを縫い合わせる。そこまではよかった。問題は、直った壁が少し太くなり、通路の半分を塞いだことだった。


「ログル。今、直った?」

「はい。直りました」

「じゃあ、なんで道が狭くなったの」

「修正対象が壁だけで、通行幅を考慮していません」

「神様、現場猫案件!」



 通路の向こうでは、村のおばあさんが水桶を抱えて立ち尽くしていた。昨日まで通れたはずの幅が、壁の修正で半分になっている。桶を横にすれば通れない。縦にすれば水がこぼれる。おばあさんは困った顔で壁を見て、それから空の白い修正線へ頭を下げた。


「直してもらったから、文句を言いにくい顔してる」

 コヨリは唇を曲げた。

「でも、これじゃ通れないよね」

「はい。機能としては修復済みですが、生活導線としては破損しています」

「生活導線って言葉、なんか大人っぽい。でも意味は分かった。神様、壁だけ見て人を見てない」


 白い修正線は、褒められたと思ったのか、また空から降りてきた。今度は通路を広げようとして、隣の物干し竿を壁材に変える。洗濯物が石になり、村人が悲鳴を上げた。


「服を壁にするな! 現場が泣いてる!」


 アドミニスの白い窓が開いた。

「自動修正は便利だよ。壊れたらすぐ直る」

「直ったせいで人が通れない!」

「そこは追加修正で」

「追加する前に一回見て!」



 アドミニスは困ったように笑った。いつもの軽い笑顔だが、疲れた色が少しだけ混ざっている。


「全部の現場を見ていたら、修正は遅れるんだ。壊れた場所を先に直さないと、次の破損が広がる」

「それは分かるよ。分かるけど、だからって見ないで直していい理由にはならない。壁だけ見て直して、人が通れなくなったら、それは壁が直ったんじゃなくて、村が壊れたんだよ」

「勇者ちゃんは、現場目線だね」

「現場で死んでるからね! 現場目線のプロだよ!」


 ミネルが眼鏡を押し上げ、白い修正線を見上げた。


「主神。修正対象の優先順位に、生活者の動線、感情、反復行動が入っていません。仕様上は軽微な欠落ですが、実地では致命傷です」

「ミネルまで現場研修派!?」

「知識は、使われる場所を失えば意味がありません」


 アドミニスは何かを言いかけ、結局、窓の向こうで黙った。


 追加修正が走る。壁は細くなったが、今度は隣の畑が通路へ変換された。畑に植わっていた芋は、なぜか階段になった。


「芋が階段に進化した!」

「修正ミスです」


【死亡ログ:603回目】

【死因:井戸が階段になって落ちた】

【評価:修正直後を踏まない】


 二回目、畑を戻そうとした。白い修正線の上に帰還ピンを刺す。線は嫌がるように曲がり、畑を戻した代わりに爆ぜ岩畑を生成した。


「芋より危ないもの植えるな!」


【死亡ログ:607回目】

【死因:畑を戻したら爆ぜ岩畑になった】

【評価:自動修正の副作用】


 修正線は善意の顔で世界を壊していく。橋を直せば川が消え、井戸を戻せば水が白い文字になり、家の屋根を修理すれば扉が壁になる。村人たちは最初、直ることに安心していた。けれど、直るたびに何かが暮らしにくくなり、最後には誰も動けなくなった。


 ミネルが現れ、白い線の痕を指でなぞる。


「主神の自動修正は、故障箇所を見ています。しかし、使う人の動きまでは見ていません」

「知識神の言い方、めっちゃ刺さる。神様、聞いてる?」


 白い窓の向こうで、アドミニスは少しだけ目を伏せた。


「聞いているよ。でも、すべての現場を見ていたら、修正が間に合わない」

「じゃあ、間に合わないって言って。自動で雑に直して、世界をもっと壊すより、できないって言う方がまだ神様っぽいよ」


 アドミニスは答えない。白い線だけが、また床へ伸びた。


 十四回目、コヨリは修正を止めようとしなかった。白い線が来る前に、村人の歩く道へ石灰で印をつける。修正線が壁を縫う時、その印だけを避けるように、ベルの契約書を上から貼った。


「生活導線、保護!」

「はい。修正対象外として仮登録されました」



 おばあさんが水桶を抱えたまま、恐る恐る通路を歩いた。壁は直っている。けれど、桶を横にしても通れる幅が残っている。物干し竿も、畑も、今度は壁材にされていない。


 コヨリは息を止めて見守った。おばあさんが通り抜けた瞬間、思わず小さく拳を握る。


「通れた」

「はい」

「ログル、今の、すごく地味だけど、すごく勝った感じがする」

「生活が一手進みました」

「そういう言い方、好き」


 ミネルは修正線の残光を見つめ、静かに言った。

「故障を直すだけではなく、明日の動きを残す。主神に足りなかった項目です」

「ミネルさん、あとでそれ八百ページにして神様に読ませて」

「既に構成案があります」

「早い!」


 壁は直り、道は残る。初めて、誰かが通れる修正になった。


 喜んだ直後、余った修正線がコヨリの足元へ来た。


【死亡ログ:616回目】

【死因:自動修正を止めたつもりで、自分が修正対象になった】

【評価:現場に立つ者も保護対象へ】


 拠点で、コヨリは修正線の欠片を棚に置きながら言った。


「直すって、壊れてるところだけ見ちゃだめなんだね」

「はい。使う人、通る人、暮らす人まで見る必要があります」

「神様に現場研修させたい」

【登場人物紹介】

コヨリ:神様自動修正の副作用に何度も巻き込まれた幼女勇者。現場を見る重要性を学んだ。

ログル:修正対象と生活導線のずれを解析した相棒。

アドミニス:自動修正の限界を少しだけ見せた主神。

ミネル:削除や修正の痕から、神様側の見落としを指摘した知識神。


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【滅亡シード群】

領域状態:神域固定ダンジョン/破棄シード検証領域

死亡回数:616回

クラス:帰還者

一時役割:滅亡シード検証者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】【足元確認 Lv.5】【未識別警戒 Lv.5】【ミミック警戒 Lv.2】【総合盤面確認 Lv.2】【帰還門感知 Lv.3】【ログ管理 Lv.2】【一フレームの神様 Lv.2】

※表示は主要スキルのみです。下位・派生・細かな死因スキルは統合済み、または内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【自動修正不信 Lv.1】【直った直後を疑う Lv.1】【修正線を踏むな Lv.1】


【ローグライクあるあるネタ】

地形変化・壁生成・自動補正の事故です。直ったように見えて通路が消える、井戸が階段になるなど、修正そのものが罠になる形にしました。


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