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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第21章 滅亡シード千本ノック――世界の死に方を識別する

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全アイテム超不幸シード

未識別アイテムが全部、だいたい悪い方向へ寄っています。

幸運っぽい名前ほど危険。

運命神フォルテ、言い方がまた腹立つ。


 床に落ちている草は、どれもつやつやしていた。巻物は白く、腕輪は金色で、壺は丸くてかわいい。普通なら、深層前のご褒美部屋に見える。だからコヨリは入口で座り込んだ。


「動きたくない」

「勇者様、判断としてはかなり正しいです」

「見た目が全部いい。つまり全部だめ。わたし、裏九十九階で学んだ」


 白い羽根を揺らして、フォルテが現れた。運命神は床のアイテムを見渡し、淡々と言う。


「このシードでは、運の偏りが仕様として固定されています」

「運が悪いのを仕様って呼ばないで! それ、神様が責任逃れする時の言葉じゃん!」

「偏りは、偏っているだけでは悪ではありません」

「でも全部わたしを殺しに来る偏りは悪!」



 床の上のアイテムたちは、見た目だけなら本当に優秀だった。種は天使の羽根みたいな白い筋を持ち、腕輪は小さな星の模様を光らせ、壺は蓋のところに笑顔のような模様がある。巻物に至っては、端に金の飾りまでついていて、読めば何か良いことが起きそうな顔をしていた。


 だからこそ、コヨリは腹が立った。


「見た目で期待させるの、かなり悪質。これ、宝箱ミミックがリボンつけてるのと同じだよ」

「勇者様、かなり的確です」

「ログル、値段識別は?」

「値札は全て【お得】です」

「お得ってなに!? 命が減るなら損じゃん!」


 フォルテは眠そうにサイコロの耳飾りを揺らした。

「低確率で良い効果が出る場合もあります」

「何パーセント?」

「このシードでは、低確率がさらに低確率へ偏っています」

「それ、ゼロって言いたくないだけでしょ! 神様の数字マジックやめて!」


 コヨリは拾わないために、両手を後ろに回した。すると腕輪がころりと転がり、わざわざ足元へ寄ってくる。拾ってほしそうな動きだった。


「アイテムが営業してくるな。わたしは今日は買わない幼女です」

「勇者様、ここはショップではありません」

「じゃあなおさら営業しないで!」


 一回目、コヨリは敵へ【未識別の種】を投げた。跳ね返った種が口に入り、飲み込んだ瞬間、足元の床が抜け、頭上から壺が落ち、遠くの敵がなぜか倍速になる。


【死亡ログ:505回目】

【死因:超不幸の種を敵に投げたら跳ね返った】

【評価:不幸は投げても帰ってきます】


 二回目、金色の腕輪を拾った。装備しなければ大丈夫。そう思って持ち上げただけで、腕輪が勝手に手首へはまる。


「試着してない! 店員さん、サイズ合わせ頼んでない!」

「呪い装備です。外れません」

「金色の顔して!」


【死亡ログ:508回目】

【死因:幸運っぽい腕輪が外れなかった】

【評価:名前と色を信用しない】


 保存壺は保存できない壺だった。白紙っぽい巻物は読んだことを後悔する巻物で、読み終わった瞬間、前回の宝箱死を強制再生された。値段識別をしようにも、全部の値札が【お得】で統一されている。


「お得って書いたやつ、出てこい! わたしの命を何割引きにしたの!」



 十回目の拠点帰還で、コヨリはリュシアから台所用の厚手手袋を借りた。子供の手には大きすぎて、指先が余っている。それでも素手よりはましだと胸を張った瞬間、ログルが手袋の裏に浮いた白い文字を読んだ。


「勇者様、その手袋に【幸運作業用】と書かれています」

「脱ぐ! 今すぐ脱ぐ!」

「はい。今回は良い判断です」

「手袋まで信用できない世界、危険物処理講習より危ない!」


 フォルテは少しだけ感心したように、床へしゃがんだコヨリを見た。


「運を避けるために、運が良さそうな道具を捨てる。面白い選択です」

「面白くない! こっちは毎回、命がサイコロにされてる気分なの!」

「運命とは、サイコロの目を受け入れることです」

「違う! サイコロを振る前に、サイコロが爆発しないか確認することだよ!」


 ログルが小さくうなずく。


「勇者様の定義は、かなりこの作品向きです」

「作品って言い方しないで!」


 十四回目、コヨリはアイテムを拾わなかった。床に小石を投げ、壺の影、腕輪の反射、草の匂いを順番に見る。全部が悪いなら、比較する意味は薄い。けれど、悪さの向きは違った。


「ログル、これ、全部不幸だけど、同じ不幸じゃない。種は即死寄り。腕輪はじわじわ。壺は大事なものを消す。巻物は精神攻撃」

「分類できます」

「分類したくないけど、しないと死ぬ!」



 ログルは床へ四つの小皿を置いた。即死寄り、呪い寄り、記憶破壊寄り、精神攻撃寄り。名前だけで嫌になる分類だったが、何も分けないよりはましだ。コヨリは小枝の先で草をつつき、匂いを嗅ごうとして、すぐに鼻を押さえる。


「匂いで識別しようとしたら、匂いも不幸だった」

「嗅覚攻撃の可能性があります」

「五感全部で殺しにくるな!」


 フォルテが、ぽつりと言う。

「不幸が固定された世界では、人は最後に、選ぶ前から諦めます」

「......それは笑えない」

「はい」

「でも、諦める前に手袋。手袋の前に棒。棒の前にログル。順番は諦めない」


 フォルテは少しだけ目を細めた。


「選ばないことも、選択です」

「その言い方は好き。でもこの床だと選ばなくても死ぬ!」


 コヨリは【まあまあ不幸の草】だけを拾った。名前からして危ないが、匂いは薄い。敵へ投げず、食べず、白紙ログ棚用の封筒へ入れる。持ち帰る途中で封筒の角が破れ、草の汁が指についた。


【死亡ログ:518回目】

【死因:まあまあ不幸の汁で、まあまあでは済まなかった】

【評価:持ち帰りにも手袋】


 拠点に戻ったコヨリは、手を洗いながら叫んだ。


「運が悪い世界、攻略法が地味すぎ! 拾わない、触らない、素手で持たない!」

「かなり大事です」

「勇者の冒険じゃなくて危険物処理講習!」


【登場人物紹介】

コヨリ:全アイテム超不幸シードで、拾う前から疑う力をさらに鍛えた幼女勇者。危険物手袋が欲しい。

ログル:不幸アイテムを即死型・装備呪い型・記憶破壊型へ分類した相棒。

フォルテ:運命の偏りを仕様として説明し、コヨリにかなり怒られた運命神。


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【滅亡シード群】

領域状態:神域固定ダンジョン/破棄シード検証領域

死亡回数:518回

クラス:帰還者

一時役割:滅亡シード検証者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】【足元確認 Lv.5】【未識別警戒 Lv.5】【ミミック警戒 Lv.2】【総合盤面確認 Lv.2】【帰還門感知 Lv.3】【ログ管理 Lv.2】【一フレームの神様 Lv.2】

※表示は主要スキルのみです。下位・派生・細かな死因スキルは統合済み、または内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【不幸固定警戒 Lv.1】【幸運っぽい名前不信 Lv.1】【値段識別だけに頼るな Lv.1】


【ローグライクあるあるネタ】

未識別草、呪い腕輪、保存できない壺など、見た目が便利そうなマイナスアイテム事故です。値段や色だけで判断するとだいたいひどい目に遭います。


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