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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第3章 食料不足シードと料理人クラス

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16/19

豊穣神メリメル、増やすものを間違える

食料不足を救う女神、登場。

いい人です。

ただし、爆裂キノコも増やします。

 村の外れに、朝から変な光が降っていた。


 あたたかい。

 やわらかい。

 神々しい。


 そして、嫌な予感がした。


「ログル。あれ、いい光?」

「神聖反応です」

「いい光?」

「神聖反応です」

「答えをずらした! それ、いい光じゃないやつ!」


 畑へ走ると、乾いていた土の上に緑の芽が次々と顔を出していた。


 村人たちが、ぽかんと口を開けている。

 ミーナも、パン屋の前で鍋を持ったまま畑を見ていた。


「こりゃ、豊穣神様の気まぐれかねえ」

「気まぐれで食料問題が解決するならありがたいけど、神様の気まぐれってだいたい事故る!」


 空から、ふわふわした声が降ってきた。


「勇者ちゃーん。食べ物、増やしておきましたよー」


 光の中から現れたのは、やさしそうなお姉さんだった。

 柔らかな髪に花の冠。

 笑顔は完全にいい人。


 完全にいい人なのに、わたしの危険察知がざわざわしている。


「わたくし、豊穣神メリメルと申します。食料不足でお困りと聞きまして」

「ありがとう! 何を増やしてくれたの?」

「爆裂キノコです」

「神様ァ! 食べ物の棚に爆発物を置くなああああああああああああああ!」


 畑のあちこちで、赤いキノコがぽこぽこ生えた。


 かわいい音。

 かわいくない危険度。


 ログルの額が忙しそうに点滅する。


「勇者様。赤いキノコ、爆発反応。黄色い豆、跳躍反応。紫の草、毒反応。白い実、睡眠反応」

「食べ物どこ!?」

「緑の葉の一部は、加熱すれば食用です」

「一部! 加熱すれば! 条件つきすぎ!」


 メリメルは、頬に手を当てて首をかしげた。


「まあまあ、命は巡りますから」

「爆発で巡らせないで!」

「ログルちゃんに聞けば、食べられるものも分かりますよ」

「ログルの仕事量が豊作!」


 その時、畑の奥から悲鳴が聞こえた。


 村の男の人が、巨大な黄色い豆に追いかけられている。

 豆は、ぴょん、ぴょん、と跳ねるたびに一マスずつ近づく。


「一手一動が豆にも適用されてる!」

「食材系魔物です」

「食材系魔物って何!? 食べるの? 倒すの? 謝るの!?」


 わたしは鍋のふたを構えた。


「ログル、豆の動き」

「直線追跡。跳躍後に一ターン硬直します。赤キノコへ誘導可能です」

「爆発させるの!?」

「食材同士の相性確認です」

「言い方を料理っぽくするな!」


 わたしは一歩右へ動いた。

 豆がこちらへ跳ねる。

 次に一歩下がる。

 豆がさらに近づく。


 床にマス目が浮かぶ。

 赤キノコまで、あと二マス。


「こっち! 豆! こっち!」

「勇者様、大声判定」

「今は必要経費!」


 小石を投げる。

 豆が反応して、そちらへ跳ねる。


 赤キノコが膨らむ。

 豆が硬直する。


 次の瞬間、畑の一角が赤い煙に包まれた。

 豆は、こんがり焼けたような匂いを出して転がった。


「ログル。これ食べられる?」

「爆発加熱済みです。外皮を除けば、可食反応」

「爆発調理!」

「料理人適性が反応しています」

「料理ってもっと平和なものじゃないの!?」


 メリメルは、ぱちぱちと拍手した。


「まあ、上手に実りましたね」

「倒したんです!」

「でも食べられます」

「反論しにくい!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 休憩中、わたしは白い実を見つめていた。


 丸くて、つやつやしていて、赤くない。

 毒々しい紫でもない。

 爆発しそうな膨らみもない。


「これは安全そう」

「勇者様。安全そう、は危険です」

「でも白いよ? 見た目が完全に回復アイテムだよ?」

「睡眠反応があります」

「眠れるなら、ちょっと休めるじゃん」

「今は畑です。周囲に腹ぺこウサギがいます」

「一口だけ」


 わたしは白い実をかじった。


 甘い。

 おいしい。

 今章で初めて、普通においしい。


「ログル! これ当たり......」


 言い終わる前に、まぶたが落ちた。


 世界が、ふにゃっと傾く。


「勇者様、起きてください。睡眠です」

「あと五分......」

「腹ぺこウサギが接近しています」

「あと三分......」

「食材変換罠が起動しました」

「あと......え?」


 床の青い粉が光った。


 わたしの体が、ぽん、と丸くなる。


 手足が消えた。

 視界が低くなった。

 体が、海苔っぽいものに包まれた。


「おにぎりになってるううううううううううううううう!?」


 腹ぺこウサギが、目を輝かせて近づいてきた。


「ログル! わたし今、食べ物!?」

「はい。かなり食べ物です」

「冷静に判定しないで! 助けて!」

「転がってください」

「おにぎりに転がれって言うなああああああああああ!」


 転がった。

 一マス。

 ウサギも一マス。

 また転がる。

 坂。

 罠。

 石。


 そして、わたしは自分で止まれなかった。


「待って! おにぎり、ブレーキない!」

「勇者様、右」

「右ってどう曲がるの!? 具!? 具を寄せればいいの!?」


 そのまま、腹ぺこウサギの群れの前へ転がった。


 白い視界になる直前、わたしは叫んだ。


「神様ァ! 幼女をおにぎりにするなああああああああああああ!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


【死亡ログ】


死亡回数:20回目

死因:【安全そうな白い実で眠り、食材変換罠でおにぎり化して腹ぺこウサギに運ばれた】

評価:【見た目に騙されました】

新規獲得:【睡眠食材警戒 Lv.1】

統合候補:【食材識別 Lv.2】


 白い拠点で、わたしは膝を抱えた。


「ログル」

「はい」

「おにぎりだった」

「はい」

「わたし、おにぎりだった」

「記録上も、おにぎりでした」

「記録しないでえええええええ!」


 死因図鑑室に、白い実とおにぎりの絵が追加された。

 説明にはこうある。


【白い実:睡眠】

【食材変換罠:勇者も対象】

【おにぎり状態:かわいいが危険】


「かわいいって書いたの誰!?」

「死因図鑑の自動評価です」

「美神の仕業じゃないよね!?」


 ログルは、少しだけ目をそらした。


「勇者様。今回は、未識別警戒が機能する前に空腹と見た目に負けました」

「はい」

「次は」

「食べる前に聞きます」

「白くても」

「聞きます」

「甘そうでも」

「聞きます」

「おにぎりになりたくなければ」

「聞きます!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 再挑戦では、白い実を食べなかった。


 メリメルが増やした食材は、ログルとミーナと三人で仕分けた。

 赤キノコは投擲用。

 白い実は睡眠罠用。

 黄色い豆は外皮を除けば食用。

 緑の葉は加熱後なら安全。


 メリメルは、悪気なく白い実を村人に配ろうとしていたので、全力で止めた。


「これは寝ます!」

「まあ、よく眠れるのですね」

「畑で寝たら食われます!」

「まあまあ」

「まあまあじゃない!」


 その日の夕方、パン屋の前には小さな鍋が並んだ。


 できたスープは、前よりずっとましだった。

 青臭いけれど、飲み込むと体の中がじんわりする。


【効果】

HP:13→15

満腹度:54→76

軽度安心


「軽度安心って何!?」

「ログ表記に困る効果です」

「でも、なんか分かる」


 村の子供が、椀を両手で持って笑った。


 ログルの宝石が光る。


【レベルアップ:食材識別 Lv.1→食材識別 Lv.2】

【レベルアップ:未識別警戒 Lv.2→未識別警戒 Lv.3】

【新規獲得:スープ回復 Lv.1】


 メリメルがにこにこと笑う。


「では、明日はもっと増やしますね」

「待って」

「爆裂キノコを三倍に」

「神様ァ! この女神様に安全装置つけてええええええええええええええええ!」


 夕暮れの畑に、わたしの叫びが響いた。


 でも、その日の村には、久しぶりにスープの匂いがした。


【今回の死亡ログ】


死亡時レベル:Lv1

死亡時HP:0/15

死亡時満腹度:51/100

今回の死因:【安全そうな白い実で眠り、食材変換罠でおにぎり化して腹ぺこウサギに運ばれた】

評価:【見た目に騙されました】

新規獲得:【睡眠食材警戒 Lv.1】


【今回の勇者ステータス】


現在シード:シード012

次回開始:Lv1/HP15

死亡回数:20回

クラス:勇者

クラス適性:料理人適性 濃厚

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】


【恐怖耐性 Lv.1】

【危険察知 Lv.2】

【足元確認 Lv.2】

【罠感知 Lv.1】

【未識別警戒 Lv.3】

【ミミック警戒 Lv.1】

【食材識別 Lv.2】

【非常食変換 Lv.1】

【満腹度節約 Lv.1】

【スープ回復 Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【睡眠食材警戒 Lv.1】

レベルアップ:【食材識別 Lv.1】→【食材識別 Lv.2】

レベルアップ:【未識別警戒 Lv.2】→【未識別警戒 Lv.3】

新規獲得:【スープ回復 Lv.1】


【登場人物紹介】


豊穣神メリメル:食材を増やしてくれる優しい女神。安全確認は別売り。

コヨリ:一度おにぎりになった幼女勇者。

ログル:おにぎり状態の勇者も冷静に判定する解析神獣。


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