表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第3章 食料不足シードと料理人クラス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/19

火を通せば安全とは限りません

逃げ芋の次は爆裂キノコ。

料理人クラスは万能ではありません。

むしろ厨房が爆発します。


 逃げ芋のスープは、まずかった。


「ログル。正直に言って」

「安全性は確保されています」

「味の話をして」

「安全性は、料理において非常に重要です」

「味の話から逃げるなああああああああ!」


 ミーナは、木の椀に入った薄茶色のスープを平気な顔で飲んでいる。


「まあ、食べられるね」

「その評価、料理人として一番心にくるやつ!」

「最初からうまい飯なんて作れないよ。死なない飯を作れたなら上出来さ」

「料理の合格ラインが低い!」


 でも、お腹は少し落ち着いた。


 満腹度は42から55へ。

 口の中に土っぽさは残っているが、生きている。


 この世界では、それだけで勝利と言える。

 言いたくないけど。


「ログル、次は何を探す?」

「村の外れに食材反応が複数あります。ただし、敵意と爆発反応も混ざっています」

「食材反応と爆発反応を同じ畑に植えるな!」

「植えたのは神様です」

「神様ァ! 食料ガチャに爆発物を入れるなああああああああああ!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 村の外れには、畑だった場所が広がっていた。


 土はひび割れている。

 でも、ところどころに妙なものが生えていた。


 赤いキノコが、ぷくぷく膨らんでいる。

 青い草は、風もないのにゆらゆら揺れている。

 白い大根みたいなものは、わたしの足音に合わせて土の中へ引っ込もうとしていた。


「ログル。食べ物に見えない」

「見た目だけで判断しない方が良いです」

「じゃあ食べられるの?」

「見た目通り、危険な可能性も高いです」

「どっち!?」


 赤いキノコから三マス離れる。


 第13話で学んだ。

 赤いものは、だいたい何か起きる。

 キノコは、だいたい裏切る。


「勇者様、足元」

「え?」


 右足を下ろしかけた場所に、小さな穴があった。

 底には青い粉が見える。


「罠?」

「食材変換罠のようです。踏むと、所持品が何かしらの食材に変わる可能性があります」

「便利じゃん」

「勇者様自身が食材判定される可能性もあります」

「神様ァ! 勇者を材料にするなあああああああああ!」


 足を戻す。

 世界はまだ止まっている。


 危険地帯では、わたしが動くまで敵も罠も動かない。

 でも、選べる一手は一つだけ。


 後方二マスには、腹ぺこウサギ。

 前には赤キノコ。

 足元には食材変換罠。


「会議! ログル、会議!」

「赤キノコは爆裂反応。青い草は睡眠反応。白い大根型は逃走反応。ウサギを赤キノコへ誘導できます」

「食材を爆弾として使うの?」

「生で食べるよりは安全です」

「その比較対象、昨日のわたし!」


 わたしは小石を赤キノコへ投げた。


 ぽん、ではなかった。

 ぼふん、と畑の一角が赤い煙に包まれる。


 腹ぺこウサギが転がった。

 わたしも爆風で前髪を焦がした。


「熱っ! でも生きてる!」

「爆裂キノコは食材兼投擲武器として扱えそうです」

「料理人クラスってそういう職業だっけ!?」


 赤キノコの破片を拾う。

 ログルが止める。


「勇者様。持ち帰るなら、袋を分けてください」

「分かってる。これは爆発するやつ。鍋に入れる時も少しだけ」

「今、鍋に入れると言いましたか」

「火を通せば安全になるって、ミーナおばちゃんが」

「食べられるものもある、と言っていました。全部とは言っていません」

「大丈夫。少しだけだから!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 パン屋の厨房で、わたしは小鍋の前に立っていた。


 逃げ芋。

 白大根の端っこ。

 ちょっと青い草。

 そして、赤キノコの破片。


「勇者様、赤キノコは別処理を推奨します」

「ちょっとだけ。ほんの少し。香りづけ」

「爆発物を香りづけに使わないでください」

「料理は挑戦だよ!」

「死亡ログに挑戦と書く準備をします」

「やめて!」


 赤キノコの破片を、鍋へ入れる。


 一秒。

 二秒。

 三秒。


 鍋の中が、ぷくっと膨らんだ。


「ログル」

「はい」

「これ、煮えてる?」

「爆発前です」

「先に言ってええええええええええ!」


 小鍋が跳ねた。


 視界が赤く光る。

 厨房の天井が遠ざかる。

 ミーナの「だから言ったろうに」という声が、妙に落ち着いて聞こえた。


【死因:爆裂キノコを煮込んだ】

【評価:火を通せば何でも安全になるわけではありません】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 白い拠点で、わたしは黒いすすだらけの気分で座っていた。


 実際には体は戻っている。

 でも、心がすすだらけだった。


 ログルが静かに言う。


「勇者様」

「はい」

「少しだけ、は危険です」

「はい」

「爆発物を鍋に入れない」

「はい」

「香りづけに爆発を使わない」

「はい」


「ログルが家庭科の先生みたいになってる!」


【死亡ログ】


死亡回数:19回目

死因:【爆裂キノコを煮込んだ】

評価:【火を通せば何でも安全になるわけではありません】

新規獲得:【加熱前確認 Lv.1】


 死因図鑑室に、爆裂キノコの絵が追加された。

 横には、赤い字で書かれている。


【加熱注意】

【鍋に入れるな】

【香りづけにするな】


「最後のやつ、わたし専用じゃん」

「はい」

「否定して!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 再挑戦では、赤キノコを鍋に入れなかった。


 爆裂キノコは、畑でウサギを倒すために使う。

 食べるものは、逃げ芋と白大根と、ログルが許可した緑の葉だけ。


 できあがったスープは、相変わらず地味だった。

 でも、爆発しない。


 それだけで、わたしは泣きそうになった。


「ログル。爆発しない料理ってすごいね」

「普通は料理に爆発しないことを褒めません」

「このシードでは褒める!」


 ログルの宝石が光った。


【新規獲得:非常食変換 Lv.1】

【新規獲得:満腹度節約 Lv.1】

【新規獲得:加熱前確認 Lv.1】


 ミーナが、スープをかき混ぜながら笑った。


「失敗したぶん、覚えるさ」

「うん。鍋は爆発させない」

「そこからかい」

「そこから!」


 空っぽだったパン屋に、少しだけ温かい匂いが戻った。


【今回の死亡ログ】


死亡時レベル:Lv1

死亡時HP:0/15

死亡時満腹度:49/100

今回の死因:【爆裂キノコを煮込んだ】

評価:【火を通せば何でも安全になるわけではありません】

ロスト:【未登録食材一式】【小鍋の平穏】

新規獲得:【加熱前確認 Lv.1】


【今回の勇者ステータス】


現在シード:シード012

次回開始:Lv1/HP15

死亡回数:19回

クラス:勇者

クラス適性:料理人適性 強化

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済みスキル】


【恐怖耐性 Lv.1】

【危険察知 Lv.2】

【足元確認 Lv.2】

【罠感知 Lv.1】

【未識別警戒 Lv.2】

【ミミック警戒 Lv.1】

【食材識別 Lv.1】

【死ぬ前に一言ツッコむ Lv.1】


【今回の新規獲得・更新】


新規獲得:【非常食変換 Lv.1】

新規獲得:【満腹度節約 Lv.1】

新規獲得:【加熱前確認 Lv.1】


【登場人物紹介】


コヨリ:爆裂キノコを香りづけに使おうとして厨房ごと反省した幼女勇者。

ログル:鍋に爆発物を入れないでほしい解析神獣。

ミーナ:失敗した鍋も、落ち着いて片づけてくれるパン屋のおばちゃん。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマーク登録や評価、コメント、レビューで応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ