爆ぜ岩だらけのシード
三つ目のシードは、床も壁もだいたい爆発物。
遠距離攻撃は正解に見えて、爆風範囲を読まないとただの自爆です。
戦神バルガ、雑な爆発配置にキレる。
乾いた草原の真ん中に、丸い岩が並んでいた。岩の表面には赤い亀裂が走り、ひびの奥で火の粉がちらちら瞬いている。風が吹くたび、火薬と焦げ草の匂いが鼻をついた。
「ログル。あれ、爆ぜ岩だよね」
「はい。しかも通常個体より誘爆範囲が広いです」
「見えてる地雷を景色みたいに置くなああああああ!」
コヨリは小石を握りしめた。遠くから起動して爆風範囲外へ逃げる。理屈は分かる。けれど、目の前の岩は一列ではなく、村へ続く道を囲むように散らばっていた。どれを撃っても、別のどれかへ火が届く。
白い光が割れ、バルガが現れた。戦神は腕を組み、爆ぜ岩の群れを見て眉を寄せる。
「派手な敵を置けば戦場になると思ったか。これは戦ではない。生活圏の中に爆薬を撒いただけだ」
「バルガさんの言い方がいちいち正論で、神様への苦情文にそのまま使える!」
一回目、コヨリは安全そうな端の岩へ小石を投げた。小石は岩に当たり、こつん、とかわいい音を立てる。かわいかったのは音だけだった。爆風が横へ走り、隣の岩へ移り、そのまた隣へ火がつく。畑の畝を伝って、爆発が花火のように広がった。
【死亡ログ:449回目】
【死因:貫通小石で爆ぜ岩を三体まとめて起こした】
【評価:遠距離確認は爆風確認とセット】
二回目、コヨリは【ころころ火球】を低く転がした。火球は狙い通り爆ぜ岩の手前で止まったが、そこには乾いた草が積もっていた。草が燃え、火が岩へ届き、道の向こうで爆ぜ岩王が目を覚ます。
「ログル、あれ王様?」
「はい。爆ぜ岩王です」
「王政いらない! 爆発物に序列を作らないで!」
【死亡ログ:451回目】
【死因:ころころ火球が爆ぜ岩王を起こした】
【評価:火気厳禁の相手に火を転がしました】
ネムの受付では、票が少し焦げていた。
「コヨリさん、爆発死フォルダを増設しました」
「増設しないで。爆発事故が収納上手になってるの嫌だから」
「焼けた票は別管理です」
「管理が細かい!」
十三回目、コヨリは戦わなかった。まず、地図の上に円を描く。爆ぜ岩を中心に、爆風の届く範囲を薄い赤で塗る。村へ続く道は、赤い円が重なりすぎて、ほとんど血管みたいになっていた。
「バルガさん、これ、どう進むの」
「進むな。まず、爆発させない道を作れ」
「勇者なのに戦わない?」
「爆発物に勇敢さを見せても、爆風は褒めてくれん」
コヨリは【霜ふり床】を使った。岩を凍らせるのではなく、爆風が走る乾いた草だけを湿らせる。魔法は弱く、派手さもない。けれど火の道が一本、そこで途切れた。
「地味!」
「効果的です」
「地味な正解、たまにあるから困る!」
コヨリは白銀の帰還ピンを湿った土へ刺し、焦げた草の束を小さく切り取った。そこに残っていた白い調整線が、爆ぜ岩の配置を村の畑ぎりぎりまで寄せている。
その瞬間、遠くで眠っていた爆ぜ岩王がくしゃみをした。
「岩がくしゃみするな!」
【死亡ログ:462回目】
【死因:爆ぜ岩王のくしゃみ誘爆に巻き込まれた】
【評価:最後まで爆風範囲外ではありませんでした】
拠点に戻ったコヨリは、焦げた草を死因図鑑室の新しい棚へ置いた。バルガはそれを見て、低く息を吐く。
「派手な配置は、人の暮らしを踏みつぶす。覚えておけ、小さい勇者」
「覚える。あと神様には、爆発物取扱免許を返納してもらう」
【登場人物紹介】
コヨリ:爆ぜ岩だらけのシードで爆風範囲を体に叩き込まれた幼女勇者。派手な敵配置への怒りが増えた。
ログル:爆風範囲と誘爆経路を地図へ重ねた解析神獣。火気厳禁の相手に火球を使った件は記録済み。
バルガ:爆発物だらけの生活圏を見て、戦場以前の問題だと怒った戦神。
ネム:焦げた死亡受付票を別管理する羽目になった死神。
【今回の勇者ステータス】
現在領域:【滅亡シード群】
領域状態:神域固定ダンジョン/破棄シード検証領域
死亡回数:462回
クラス:帰還者
一時役割:滅亡シード検証者
基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動】
【獲得済み主要スキル】
【死因学習 Lv.3】【足元確認 Lv.5】【未識別警戒 Lv.5】【ミミック警戒 Lv.2】【総合盤面確認 Lv.2】【帰還門感知 Lv.3】【ログ管理 Lv.2】【一フレームの神様 Lv.2】
※表示は主要スキルのみです。下位・派生・細かな死因スキルは統合済み、または内部保持されています。
【今回の新規獲得・更新】
新規獲得:【爆風範囲確認 Lv.1】【貫通先確認 Lv.3】【火気厳禁確認 Lv.1】
【ローグライクあるあるネタ】
爆発敵は遠くから処理するのが定石に見えますが、誘爆範囲や貫通先を読まないと自爆します。『端を撃ったら全部起きる』事故をシード滅亡へ拡大しました。
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