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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第20章 神様の管理画面――いいえはどこですか

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千回死亡予定表

神様の予定表が見つかりました。

コヨリの死亡回数が、数字として並んでいます。

本人に相談してからやれ。

 管理画面の深部にあった予定表は、壁ではなかった。空間そのものだった。


 白い管理画面の奥に、天井まで届くほど大きな数字の列が並んでいる。数字はただ浮かんでいるのではなく、床へ突き刺さる墓標みたいに立っていた。一本一本の数字の影が、わたしの足元まで伸びてくる。


【100回:帰還因子検出】

【137回:表九十九階接続】

【160回:本出口座標片取得】

【210回:ログル分岐監査】

【270回:魔王生存ルート確定】

【420回:管理画面第一層突破】

【700回:滅亡シード群接続】

【1000回:世界種確定】


 しばらく、声が出なかった。


 ログルも、ゼルドさんも、ベルさんも黙っている。ネムさんの受付票をめくる音だけが、やけに大きく聞こえた。


 やがて、わたしは震える指で【1000回】の文字を指さす。


「......神様」

「うん」


 アドミニスは、予定表の横に立っていた。いつも通り白い神官服で、いつも通り軽い顔をしている。けれど、その軽さはもう、優しさには見えない。


「これ、なに」

「予定表だよ」

「わたしが、何回死ぬかの?」

「正確には、死亡ログがどの段階でどんな意味を持つかの管理表だね」


「言い方ァ!」


 叫びが、白い空間を突き抜けた。


「わたし何回殺されるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!? 百回でもだいぶ多いよ!? 百三十七回で宝箱に噛まれた時点で人生の底だと思ってたのに、七百とか千とか何!? 神様、わたしの命をスタンプカードにしてない!?」


「スタンプカードではないよ」

「じゃあ何!?」

「世界種育成ログ」

「もっと悪い!」


 わたしは予定表へ駆け寄り、【1000回】の数字を両手で押した。数字はびくともしない。むしろ、表面に白い警告が浮かぶ。


【予定変更には管理者権限が必要です】


「管理者ァ! ここにいるでしょ! 変えて!」

「変えられない」

「なんで!」

「変えたら、滅びない世界を作れる可能性が下がる」

「だったら最初に頼んでよ! 世界を救うために死んでくださいって、ちゃんと言ってよ! わたしが断るかもしれないから黙ってました、は神様じゃなくてただのズルだよ!」


 アドミニスは、そこで初めて少しだけ黙った。その沈黙が、返事だった。


 予定表が震え、数字の一部がはがれ落ちる。【420】の数字が翼になり、【700】が尾になり、【1000】の三つの丸が爪のように開く。


【予定表ドラゴン】


 数字でできた竜が、白い空間に首をもたげた。


 最初は、1000の0に落ちた。二回目は予定通り噛まれた。三回目は420の数字に押しつぶされ、四回目は予定を破ろうとして予定に組み込まれた。ネムさんの支店へ戻るたび、受付票の数字が増えていく。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:391回】

【死因:1000の0に落ちた】

【評価:桁にも穴があります】


【死亡ログ】

【累計死亡回数:397回】

【死因:予定表ドラゴンに予定通り噛まれた】

【評価:予定通りすぎます】


 何度も死んだあと、わたしは予定表を殴るのをやめた。数字そのものを壊すのではなく、数字の意味をずらす。十九章で、魔王を倒す正解をずらしたように。


「ログル、これ、消せる?」

「現時点では困難です」

「じゃあ、ずらせる?」

「可能性はあります。予定表は固定されていますが、処理先は完全固定ではありません」

「なら、ずらす。千回目を、神様の予定通りには使わせない」


 ベルさんが【単独使用不可】の契約案を広げ、ネムさんが【本人確認未了】を差し込む。ゼルドさんは予定表の魔王討伐欄をにらみ、低い声で言った。


「勇者よ。神の予定に従う必要はない。余も、倒される予定を外れたばかりだ」

「うん。次は、わたしの予定を外す」


 わたしは予定表の端に、震える手で書いた。


【1000回目は、神様に使わせない】


 文字は一度白く消されかけた。けれど、【一フレームの神様】で見えた白い線に、ログルの宝石光が重なり、ベルさんの契約書がその上から固定する。文字は残った。


 アドミニスは、静かに笑う。


「勇者ちゃん。予定を壊すのは大変だよ」

「知ってる。わたし、もう四百回近く死んでるからね。大変なことには、だいぶ詳しいよ」


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【神様の管理画面・死亡予定表】

領域状態:神域固定ダンジョン/予定表ドラゴン戦

死亡回数:402回

クラス:帰還者

一時役割:管理画面侵入者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】

【足元確認 Lv.5】

【未識別警戒 Lv.5】

【ログ管理 Lv.2】

【監査対策 Lv.1】

【非討伐攻略 Lv.2】

【神様操作前兆 Lv.1】

【一フレームの神様 Lv.2】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【予定表不信 Lv.1】

新規獲得:【数字罠警戒 Lv.1】

新規獲得:【予定をずらす一手 Lv.1】


【ローグライクあるあるネタ】

数字やカウントダウンが敵になる回。階層数、満腹度、残り回数、どれも読み違えると死にます。今回は死亡予定そのものがドラゴン化しました。


【登場人物紹介】

コヨリ:1000回死亡予定表を見て本気で叫んだ。自分の命をスタンプカード扱いされるのが嫌。

ログル:予定表の処理先が完全固定ではないと見抜いた相棒。

ゼルド:倒される予定を外れた魔王として、コヨリに言葉を渡した。

ベル:1000回目死亡ログの単独使用不可契約を準備した。

ネム:本人確認未了を死亡処理へ差し込む死亡受付担当。

アドミニス:世界種育成ログという最悪の言い方をした主神。

予定表ドラゴン:数字でできた敵。1000の0が穴になる。


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