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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第20章 神様の管理画面――いいえはどこですか

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ログルの本来機能を開くな

管理画面の奥に、ログルの本来機能がありました。

神様側端末としての役割。

でも、相棒感情は未承認です。

 死亡受付支店を出ると、ログルが少しだけ静かになった。いつもなら足元の罠や壁の文字をこまめに確認してくれるのに、今はわたしの肩でじっと前を見ている。額の宝石の光も、いつもより薄い。


「ログル、しんどい?」

「機能的には問題ありません」

「その言い方、しんどい時の言い方だよ。わたし、もう二百回以上死んでるから、そういうのちょっと分かる」

「......勇者様に、心配させたくありません」

「心配するよ。相棒だもん」


 ログルは返事をしなかった。その沈黙ごと抱えるように、わたしは白い廊下を進む。


 やがて、管理画面の中央に小さな端末が現れた。白い台座の上に、ログルの宝石と同じ形の光が浮いている。その周りに、文字が並んでいた。


【解析神獣ログル】

【勇者死亡ログ収集】

【死亡密度評価】

【拠点成長率測定】

【定期報告】

【初期化】

【相棒感情:未承認】


 最後の一行を見た瞬間、わたしの手が止まった。


「未承認ってなに。承認してよ、今すぐ。わたしが承認する」

「勇者様の承認権限は、神様側にはありません」

「じゃあ権限を盗む」

「言い方は悪いですが、方向性は合っています」

 ベルさんがまじめにうなずく。


「ベルさんまで乗った! でも、盗むって言葉のまま通るの!?」

「契約上は、権限移譲、奪還、または不当占有の解除と表現できます」

「急にかっこよくなった!」


 アドミニスの窓が開く。今回は、いつもの高さから見下ろすのではなく、端末のすぐ横に浮いていた。


「ログルは、ここで作ったものだよ。勇者ちゃんが相棒と呼んでいるものは、僕が作った記録端末だ」

「じゃあ、神様が作ったものでも、神様のものじゃなくなる瞬間を見せてあげる」

「そういう言い方、嫌いじゃないよ。でも、この画面はログルの家でもある。帰るなら、置いていくのが自然だ」

「自然じゃなくて、神様に都合がいいだけでしょ」


 端末から白い線が伸び、ログルの宝石へ向かう。【初期化カーソル】だ。さらに、丸い錠前のような【本来機能ロック】が開きかける。


 わたしはログルを抱えて飛び下がった。けれど、抱えたまま選択範囲ごと運ばれて死んだ。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:367回】

【死因:ログルを抱えて逃げたら選択範囲ごと運ばれた】

【評価:抱えるだけでは範囲選択を抜けられません】


 二回目は初期化カーソルに割り込み、三回目は【相棒感情:未承認】の文字を殴って反撃された。四回目はいいえ札を貼る場所を間違え、【いいえに同意】という意味の分からない罠に変換された。


「いいえに同意って何!? 言葉で遊ぶな!」

「勇者様、管理画面が拒否を吸収しようとしています」

「拒否を食べるな! 白紙巻物喰いの親戚か!」


 成功周回では、殴らなかった。抱えて逃げもしなかった。ログルを「物」として守ると、神様側の端末扱いに戻される。だから、わたしはログル自身に聞いた。


「ログル、どれを拒否したい?」

「......定期報告と、初期化です」

「相棒感情の未承認は?」

「拒否ではなく、承認したいです」


 その言い方が、少し照れているようで、わたしは泣きそうになった。でも泣いている場合ではない。白い線がまた伸びてくる。


 ログルが、自分の宝石から細い光を出した。わたしはその光に【いいえ】札を重ねる。ベルさんが【未同意】を固定し、ネムさんの【本人確認未了】フォルダが端末の横に開く。


【定期報告:いいえ】

【初期化:いいえ】

【相棒感情:承認申請】


 アドミニスの笑顔が、ほんの少しだけ止まった。


「ログル。君まで、その選択肢を使うんだ」

「はい。神様側にない選択肢でしたので」

「勇者ちゃんの影響は、端末には強すぎるね」

「ぼくは、端末だけではありません」


 端末は完全には閉じなかった。ログルはまだ神様側から作られた存在だ。それでも、【初期化】の文字に小さなひびが入る。


 わたしはログルを抱え直す。今度は逃げるためではなく、ちゃんと一緒に立つために。

【今回の勇者ステータス】

現在領域:【神様の管理画面・ログル本来機能端末】

領域状態:神域固定ダンジョン/解析神獣監査中

死亡回数:382回

クラス:帰還者

一時役割:管理画面侵入者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】

【足元確認 Lv.5】

【ログ管理 Lv.2】

【監査対策 Lv.1】

【相棒防衛 Lv.1】

【非討伐攻略 Lv.2】

【一フレームの神様 Lv.2】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【相棒承認要求 Lv.1】

新規獲得:【本来機能ロック警戒 Lv.1】

新規獲得:【いいえ貼り位置確認 Lv.1】

更新:【相棒防衛 Lv.1】運用強化


【ローグライクあるあるネタ】

大事なものを抱えて逃げても、範囲攻撃や選択範囲からは逃げられない。位置取りと拒否場所の確認が必要です。


【登場人物紹介】

コヨリ:ログルの相棒感情未承認に本気で怒った。権限を盗む気でいる。

ログル:定期報告と初期化へ自分で【いいえ】を出した相棒。

ベル:権限奪還を契約用語に変換した法務担当。

ネム:【本人確認未了】で初期化処理へ引っかかりを入れた。

アドミニス:ログルを「作ったもの」と呼び、コヨリの怒りを買った主神。


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