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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第20章 神様の管理画面――いいえはどこですか

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ネムの死亡受付、管理画面支店

死にすぎたので、受付が増えました。

管理画面内に、死亡受付支店開設。

コヨリ専用感がすごいです。

 処分兵部屋を抜けたわたしは、廊下の途中で足を止めた。そこには、小さな受付窓口があった。白い管理画面の中なのに、そこだけ黒いカウンターで、湯のみと受付札が置かれている。看板には、眠そうな字でこう書かれていた。


【死亡受付・管理画面支店】


 カウンターの向こうで、ネムさんがいつもの無気力な顔をしていた。


「コヨリさん、管理画面での死亡が増えすぎたため、受付支店を開設しました」

「わたし専用支店!?」

「八割ほど」

「残り二割が気になる!」

「神様側の操作ミス、処分兵の自滅、あと魔王様の影が削除されかけた件です」

「ゼルドさんも死亡受付の仲間入りしかけてる!」


 ゼルドさんは渋い顔で、受付札を見た。


「余はまだ死んでおらぬ」

「はい。魔王様は死亡未遂フォルダです」

「そのフォルダ、閉じておけ」


 ネムさんの後ろには、死因フォルダがずらりと並んでいた。【押した】【読んだ】【同意した】【戻った】【閉じようとした】【ヘルプを開いた】【選択された】【処分された】。どれも、パソコン初心者の講習会みたいな名前なのに、中身は全部わたしの死である。


「死因フォルダ名が全部やさしい操作なのに、結果がやさしくない!」

「コヨリさん、管理画面では操作そのものが死因になりやすいようです」

「そんなパソコン教室、いやだ!」


 しかし受付支店も安全ではなかった。番号札を取ろうとしたら、札に【削除番号】と書かれていて、床がぱかっと開いた。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:353回】

【死因:受付番号を取ったら削除番号だった】

【評価:番号札も識別しましょう】


 二回目は死亡受付票の控えに挟まれ、三回目は【押した】フォルダへ自動分類され、四回目は列に並んでいる間に処分兵が来た。五回目に再発行ボタンを押したら死亡票が三倍に増え、わたしは受付カウンターに頭を打ちつけたくなった。


「ネムさんの職場まで罠になるの、ひどくない!?」

「ぼくも困っています。管理画面支店の椅子が、たまに監査椅子ミミックになります」

「死神の職場にまでミミック置くな!」


 ネムさんは、死亡票を淡々とめくっていたが、ふと手を止めた。眠そうな目が、少しだけ細くなる。


「コヨリさん。気になる処理があります」

「なに。わたしの死亡処理、また変なフォルダに入った?」

「いえ。1000回目の死亡だけ、受付側の処理枠が違います。通常の死亡受付、リスポーン、死因ログ保存とは別に、【世界種確定】という項目が紐づいています」


 カウンターの上の湯のみが、かたんと鳴った。わたしが触ったわけではない。ログルが、わたしの肩で少し身じろぎした音だった。


「1000回目だけ、違うの?」

「はい。死亡受付の立場から言うと、通常の死亡ではありません。死亡を材料にする処理です」

「材料......」


 アドミニスの窓は出ない。けれど、出ないことがかえって答えみたいで、わたしは胸の奥がむかむかした。


 ベルさんが静かに言う。


「死亡受付側に別枠があるなら、契約上も別同意が必要です。少なくとも、本人同意なしの流用は争えます」

「争えるって、ベルさん、神様相手でも?」

「相手が神様でも、文書に穴があれば刺せます」

「ベルさんの武器、ペンなのに怖い!」


 ネムさんは新しいフォルダを一つ作った。黒い表紙に、白い文字が浮かぶ。


【本人確認未了】


「これで、1000回目の処理に小さな引っかかりを入れられます。止めるには足りませんが、神様側が勝手に流すには少し面倒になります」

「ネムさん、ありがとう。地味だけど、すごく大事なやつ」

「死亡受付は、地味な仕事ですので」


 わたしは受付カウンターの端に、拠点でいつも使っている小さなメモを貼った。


【死ぬのは嫌】

【使われるのはもっと嫌】


 文字は少し震えたけれど、消えなかった。


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【神様の管理画面・死亡受付支店】

領域状態:神域固定ダンジョン/死亡処理照合中

死亡回数:366回

クラス:帰還者

一時役割:管理画面侵入者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】

【足元確認 Lv.5】

【未識別警戒 Lv.5】

【ログ管理 Lv.2】

【監査対策 Lv.1】

【非討伐攻略 Lv.2】

【一フレームの神様 Lv.2】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【受付番号確認 Lv.1】

新規獲得:【控え用紙警戒 Lv.1】

新規獲得:【分類される前に逃げる Lv.1】

管理情報追加:【1000回目死亡:本人確認未了】


【ローグライクあるあるネタ】

安全地帯に見える受付や店でも事故る。今回は補給庫ではなく、死亡受付の番号札が未識別アイテム扱いでした。


【登場人物紹介】

コヨリ:自分専用っぽい死亡受付支店にショックを受けた。死因フォルダ名にも怒った。

ログル:1000回目死亡の別枠処理に、言葉少なになった相棒。

ネム:管理画面支店を開設した死亡受付担当。【本人確認未了】で小さな抵抗を入れた。

ゼルド:死亡未遂フォルダに入れられかけた魔王。

ベル:死亡処理にも本人同意が必要だと判断した法務担当。


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