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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第20章 神様の管理画面――いいえはどこですか

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戦神バルガ、処分場を戦場に戻す

管理画面の兵士は、戦うためではなく処分するために動く。

戦神バルガ、珍しくまともに怒ります。

ただし助言はやっぱり熱いです。

 仕様書図書室を抜けると、空気の硬さが変わった。そこは広い訓練場のように見えたが、足元の白い線は闘技場の境界ではなく、処理待ちの枠だった。奥に並ぶ白い兵士たちは、剣を構えていない。槍も、盾も、魔法杖も持っていない。


 そのかわり、胸に【処分】と書かれた印が浮いていた。


「ログル、敵?」

「敵対存在です。ただし、戦闘モンスターではなく、管理画面の処分兵です」

「処分って、言葉がもう嫌」


 処分兵は、こちらを見ても怒らない。叫ばない。殺意もない。ただ、規約違反の項目を見つけた画面みたいに、無表情で腕を上げる。天井から白い決裁印が落ちてきた。


 逃げる方向は合っていた。けれど、処分命令はマスではなく理由に落ちる。わたしが「未同意保留中」という理由に引っかかった瞬間、決裁印が床ごとわたしを押しつぶした。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:339回】

【死因:白い決裁印に潰された】

【評価:印鑑も上から落ちると鈍器です】


 白い拠点へ戻ると、バルガさんがいた。戦神は腕を組み、いつもの「根性で勝て」顔ではなく、かなり不機嫌そうに管理画面の入口を見ている。


「勇者娘、今のは戦いではない」

「バルガさんが、根性じゃなくて分類から入った!」

「敵が己の意思で刃を振るうなら戦場だ。だが、あの兵どもは命令で消すだけの道具にすぎん。主神殿、貴様の画面はつまらん」


 アドミニスの窓が開く。神様は微笑むが、バルガさんの視線を受けても軽さを崩さない。


「でも、勇者ちゃんはよく死ぬ。戦場でも処分場でも、結果は同じじゃない?」

「結果しか見ぬから、貴様の戦場は腐る」


 その言葉に、わたしもログルも黙った。バルガさんがまともなことを言うと、世界の乱数が心配になる。


「バルガさん、今日どうしたの。変な草食べた?」

「食っておらん! 俺を何だと思っている!」

「根性で毒草食べそうな神様」

「否定しきれないのが腹立たしい!」


 再挑戦では、バルガさんが一手分だけ戦場視界を貸してくれた。けれど、それだけでは足りない。処分兵の攻撃は槍の軌道ではなく、決裁の線として降ってくる。


「ログル、普通の射線じゃない。白い線が、敵じゃなくて理由から来てる」

「はい。処分命令の前兆です。勇者様、【一フレームの神様】と合わせれば見える可能性がありますが、視界負荷が大きいです」

「負荷が大きいのは、もう神様関係だいたいそう!」


 見た。白く焼ける一瞬の中で、処分兵の腕が上がる前に、床の【未同意】の文字から線が伸びる。それが決裁印へつながり、落下点を決めている。わたしはそこへ小石を投げず、ベルさんの契約書の端を滑らせた。


 処分理由が、ずれた。


「今!」


 ゼルドさんが影を広げ、処分兵の足元を一瞬止める。バルガさんの戦場視界で動くべき一マスを見て、わたしは横へ跳んだ。決裁印はわたしではなく、【処分理由未確定】の空白へ落ちる。


 何度も死んだ。処分命令を避けたのに処分理由へぶつかり、戦場視界と管理画面視界を見間違え、バルガさんの熱い助言を熱く受け取りすぎて突撃した。けれど、十数回目で、処分兵の列の後ろにある【自動処分キュー】へたどり着く。


「倒さないのか」

 バルガさんが聞いた。


「倒しても命令が残るなら、命令元を詰まらせる。ローグライクで敵が無限湧きするなら、湧き口をふさぐ方がいいもん」

「よい。敵の首ではなく戦場の流れを見たか」

「褒められた気がするけど、言い方が戦神で怖い!」


 自動処分キューに【保留】札を詰め込むと、処分兵たちは一斉に停止した。部屋の白い圧力がふっと弱まり、出口が開く。


 バルガさんは帰り際、アドミニスの窓へ背中を向けたまま言った。


「主神殿。勇者娘は弱い。だが、貴様の処分場を戦場に戻すくらいの根性はある」

「根性でまとめた!」

「最後でいつものバルガさんになった!」

【今回の勇者ステータス】

現在領域:【神様の管理画面・処分兵部屋】

領域状態:神域固定ダンジョン/自動処分キュー戦

死亡回数:352回

クラス:帰還者

一時役割:管理画面侵入者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】

【足元確認 Lv.5】

【未識別警戒 Lv.5】

【総合盤面確認 Lv.2】

【ログ管理 Lv.2】

【監査対策 Lv.1】

【非討伐攻略 Lv.2】

【一フレームの神様 Lv.2】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【処分命令前兆確認 Lv.1】

新規獲得:【決裁印警戒 Lv.1】

新規獲得:【戦場と処分場の違い Lv.1】

派生獲得:【神様操作前兆 Lv.1】


【ローグライクあるあるネタ】

敵を倒しても湧き口が残るなら、発生源を止める。今回はモンスターではなく自動処分キューが湧き口でした。


【登場人物紹介】

コヨリ:処分兵を倒すのではなく、処分キューを詰まらせた幼女勇者。

ログル:処分命令の前兆を解析し、コヨリの一フレーム視界を支えた。

バルガ:珍しく真面目に怒った戦神。最後はやっぱり根性で締めた。

ゼルド:影で処分兵の足を止めた共同攻略者。

ベル:保留札と契約書で処分理由をずらした有能秘書。

アドミニス:戦場と処分場を同じ結果で見ようとした主神。


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