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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第19章 魔王生存ルート――倒さない魔王城

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魔王を守るモンスターハウス

広い部屋。多すぎるアイテム。見えている階段。

そして狙われる魔王。

モンスターハウスは、護衛ミッションになると急に悪化します。

 裏魔王城の大広間に入る前、わたしは入口の縁にしゃがみ込んだ。

 床には、魔王城らしい黒い石と、神様側の白いタイルがまだらに混ざっている。柱は太く、上の方には白い聖印が貼られていた。部屋の奥には階段が見える。床には草、巻物、杖、壺が落ちていて、あまりにも親切だ。


「ログル」

「はい」

「アイテムが多い」

「罠ですね」

「階段が見える」

「罠ですね」

「部屋が広い」

「かなり罠ですね」

「魔王様、ここ通らないとだめ?」

「余の城の大広間だった場所だ。かつては威厳ある謁見の間であった」

「今は?」

「神様に改装された事故物件である」

「魔王様、自分の城に対して言葉が強い」


 ベルさんが床へ契約書を広げ、簡易結界を作る。わたしは小石袋改を握り、ログルはゼルドさんのHPバーを表示した。


【魔王ゼルド:生存中】

【裏制御盤:接続可能】


「HPバーが味方側に出る魔王、やっぱり絵面がすごい」

「勇者様、敵味方表示は現在、魔王様を保護対象として扱っています」

「保護対象魔王」

「余にも刺さるので、二度言わぬでくれ」


 小石を部屋の中央へ投げる。床に当たり、ころころ転がった小石が草の横で止まった瞬間、天井が鳴った。


【魔王討伐モンスターハウスだ!】


「やっぱり!」


 白い光から、鎧の騎士たちが落ちてくる。聖弓を持った兵、剣の形をしたミミック、勝利ログを食べる黒い獣、称号の宝箱。しかも、敵の視線はわたしではなくゼルドさんへ向いていた。


「勇者様、魔王様が主目標です」

「わたしじゃないの!? いや、わたしを狙われても困るけど、魔王様を狙われるともっと困る!」


 まず、【ころころ火球】で白聖騎士の進路を塞ぐ。小さな火の玉が床を転がり、敵の足元へ向かう。盤面だけ見れば悪くない一手だった。けれど、火球が黒い油床に触れた瞬間、炎が横へ走った。


「油床!?」

「勇者様、魔王城側の魔油床です!」

「魔王城の床、燃えやすくしないで!」

「余の城に火をつけるな!」


【死亡ログ】

【累計死亡回数:227回】

【死因:ころころ火球が魔油床で城ごと燃えた】

【評価:属性床確認】


 次は【霜ふり床】で敵を止めた。白聖騎士は滑り、射線がずれる。成功だと思った瞬間、ベルさんの契約書も一緒に滑り、通路をふさいだ。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:228回】

【死因:霜ふり床でベルの契約書ごと滑った】

【評価:味方書類も床効果を受けます】


 三回目、わたしは【部屋鳴り雷】を選んだ。白聖騎士には効く。範囲も読んだ。ゼルドさんは外にいる。今度こそ、と思ったその瞬間、世界の端がぺらりとめくれた気がした。


 雷の線が、ほんの少し曲がる。


「ログル、今の」

「射線は正しいです。ですが、何かが割り込んでいます」

「神様の手?」

「可能性があります」


 雷は、ゼルドさんの角に落ちた。


「余の角を避雷針にするな!」


【死亡ログ】

【累計死亡回数:229回】

【死因:正しい射線を、神様に一フレームだけずらされた】

【評価:射線確認の上位干渉です】

【一フレームの神様:発動兆候】


 白い拠点に戻った時、わたしはしばらく天井を見ていた。アドミニスの窓は開いていない。でも、絶対に見ている。


「ログル、わたし、今見た。敵じゃなくて、神様がちょっとだけ線をずらした」

「通常解析では、確定できません」

「でも、見えた」

「はい。勇者様が見たなら、次はそこを疑えます」


 四回目は詠唱中に白聖騎士に隣接され、五回目は魔法を撃つために一歩出て聖弓の射線に入り、六回目はゼルドさんを押したら罠に入れてしまった。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:232回】

【死因:魔王を押したら罠へ入った】

【評価:魔王を押す前に見る】


 七回目、わたしは火も雷もやめた。小石で敵の向きを変え、ベルさんの契約書壁で射線を切り、ゼルドさんには一歩下がってもらう。魔王様は不満そうだったが、ベルさんが「保護対象の仕事です」と言ったら黙った。


 最後に、わたしは魔法ではなく眠り玉を投げた。今度は角も、契約書壁も、油床も見た。玉は床で一度跳ね、白聖騎士の足元で割れる。白い煙が広がる間に、ゼルドさんを柱の陰へ入れる。


「魔王様、そこ!」

「余を柱の陰に隠す勇者など、絵巻物に残せぬぞ」

「残さなくていいです。生きて!」


 白聖騎士の一撃は、柱を削っただけだった。魔王HPバーは、まだ生きている。


 わたしは息を吐いて、床に座り込みそうになる。でも、座らない。床も信用できないからだ。

【今回の勇者ステータス】

現在領域:【裏魔王城・魔王討伐モンスターハウス】

領域状態:神域固定ダンジョン/魔王生存ルート

死亡回数:232回

クラス:帰還者

一時役割:魔王護衛兼帰還者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】

【足元確認 Lv.5】

【未識別警戒 Lv.5】

【ミミック警戒 Lv.2】

【総合盤面確認 Lv.2】

【遠隔戦術 Lv.1】

【魔法安全確認 Lv.1】

【一フレームの神様 Lv.1】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【属性床確認 Lv.2】

新規獲得:【魔王の角に雷を落とすな Lv.1】

新規獲得:【詠唱中の護衛位置確認 Lv.1】

新規獲得:【魔王を押す前に見る Lv.1】

更新:【一フレームの神様 Lv.1:発動兆候】


【登場人物紹介】

コヨリ:魔法で守ろうとして、魔王城の油床と神様の一フレーム干渉に焼かれた。

ログル:射線は正しいのに結果がずれる違和感を解析しようとしている。

ゼルド:角に雷を落とされた魔王。保護対象として柱の陰に入れられた。

ベル:契約書壁で射線を切れるが、霜ふり床で書類ごと滑る。


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