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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第18章 白紙ログの保管庫――支給品じゃない相棒

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知識神ミネルは、答えを言えない

知識神ミネルが現れた。

けれど、答えは直接言えない。

神様の職場、権限が面倒くさい。

 白紙ログの保管庫の奥には、図書室があった。

 棚は白く、背表紙も白く、文字だけが黒い。普通なら知識の場所は安心できそうなのに、ここでは逆だった。入口の看板には、きれいな字でこう書かれている。


【逆識別図書室】

【読めば読むほど分からなくなります】


「入る前から嫌なこと書いてある!」

「勇者様、看板が正直な分、親切です」

「正直な罠は親切じゃなくて、開き直りだよ!」


 床には本のしおりが落ちていた。もちろん未識別。棚の間を、小さなゴーレムが歩いている。体がしおりでできていて、腕の先は紙を挟むための細い金具だ。

 わたしは本を読まないと決めた。決めたのに、入口横の本が勝手に開いた。文字が目に飛び込んでくる。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百八十一回】

【死因:本を読んで逆識別された】

【評価:目に入る罠もあります】


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 戻ってきたわたしは、目を細めたまま図書室へ入った。今度は本を見ない。足元を見る。ところが、しおりゴーレムがわたしの影にしおりを差し込んできた。影ごと床に挟まれ、動けなくなった。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百八十二回】

【死因:しおりに影を挟まれた】

【評価:読書用品も敵になります】


 三回目はツッコミを小声にした。図書室だから静かにしようと思ったのが間違いだった。静粛罠が発動し、声を封じられる。声が出ないと、わたしはかなり弱い。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百八十三回】

【死因:静粛罠でツッコミを封じられた】

【評価:静かな勇者は危険です】


 四回目、棚の奥から女神が現れた。長い銀の髪を結い、眼鏡の奥に星みたいな光を宿している。知識神ミネル。以前も助け舟を出してくれた神様だが、今日は口元に指を当てていた。

「コヨリさん。答えは渡せません」

「挨拶より先に絶望を出さないで!」

「主神権限により、直接解答は制限されています。ですが、知識は渡せます。白い棚を見てはいけません。白くない棚の影を見てください」

「暗号! 知識神のヒントが暗号!」


 白い窓が天井に浮かぶ。アドミニスが、にこにことこちらを見ていた。

「ミネル、優しいね」

「未同意実験の補助はしていません。私は知識の偏りを正しているだけです」

「言い方が神様会議向けだ」

「あなたの運用が会議向けに問題だらけだからです」

「知識神がけっこう刺す!」


 わたしはミネルのヒントを噛みしめた。白い棚を見るな。白くない棚の影を見る。目の前の棚は全部白い。でも、影は違う。奥の一本だけ、影が薄墨色になっている。

「ログル、あそこ」

「はい。ぼくの解析では、白い棚が正規表示です。ただ、宝石にノイズがあります」

「神様側端末だから、正規表示に引っ張られてる?」

「可能性があります」

「じゃあ、今回はわたしの勘も使う。ミネルさんの暗号と、百八十三回死んだ勘!」


 わたしは本を読まず、影をたどった。逆識別司書が横から本を開こうとする。わたしは小石を投げ、開いた本のページへ挟む。しおりゴーレムが小石を挟もうとして止まり、その一手分だけ通路が空いた。

 薄墨色の影の棚に手を触れる。すると、棚が裏返り、白紙ではない黒い背表紙の本が現れた。


【逆識別対策メモ】

【答えをもらわない攻略】


「メモ! やっと読んでいい本!」

「勇者様、まず表紙だけにしてください」

「分かってる。読書で死ぬのはもう十分!」


 だが、油断した。本棚の横から本棚ミミックが口を開けた。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百八十四回】

【死因:本棚ミミックに読まれた】

【評価:本棚も呼吸確認】


 五回目、ミネルの暗号を深読みしすぎて白い棚に突撃した。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百八十五回】

【死因:暗号を勘違いして白い棚に突撃した】

【評価:知識は落ち着いて使いましょう】


 六回目、ログルの宝石にノイズが走り、わたしは一瞬だけそちらを見た。その一手遅れで、しおりゴーレムに挟まれる。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百八十六回】

【死因:ログルのノイズに気を取られて一手遅れた】

【評価:心配も一手を使います】


 拠点に戻ると、ミネルはもういなかった。ただ、反省会テーブルに小さな紙片が残っている。

【主神は、答えそのものより、選ぶ時のログを見ています】

 わたしはそれを読んで、顔をしかめた。

「答えを選ぶ時の死亡ログって、なに」

「神様は、結果だけでなく、選択過程を観測しているようです」

「知識神の不穏な言い方、心臓に悪い!」


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【白紙ログの保管庫】

領域状態:【逆識別図書室】攻略中

死亡回数:186回

クラス:帰還者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】

【足元確認 Lv.5】

【未識別警戒 Lv.5】

【記録保護戦闘 Lv.1】

【一手分の戦場視界 Lv.1】

【監査獣警戒 Lv.1】

【黒幕警戒 Lv.1】

【ツッコミ語彙保護 Lv.1】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【逆識別対策 Lv.1】

新規獲得:【答えをもらわない攻略 Lv.1】

新規獲得:【本棚呼吸確認 Lv.1】

不穏情報:【神様は選択過程のログを見ている】


【登場人物紹介】

ミネル:知識神。答えは言えないが、暗号みたいなヒントをくれる。神様側の会議で強そう。

逆識別司書:読ませて分からなくする司書型敵。司書なのに読書体験が最悪。

しおりゴーレム:影や足を挟む読書用品モンスター。便利グッズはだいたい敵。

アドミニス:神様同士のやりとりでも笑顔。やはり信用できない。


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