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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第17章 裏九十九階 ――本当の出口は、表にはない

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逃げる階段の裏側

三つ目の地図片は、階段の裏にあった。

階段は逃げる。踏んでくる。しかも、裏に地図を貼っている。

最低の収納場所だった。

 裏帰還路の地図片は、残り一つになった。ログルの解析では、三つ目は「逃げる階段の裏側」にあるらしい。


 わたしは、反省会テーブルで頭を抱えた。


「階段の裏側ってどこ。階段に裏とかあるの。そもそも階段って収納家具じゃないよね」

「通常の階段には、裏帰還路の地図片は収納されません」

「通常じゃない階段が多すぎる!」


 ログルは、前足で地図を押さえながら説明した。


「今回の階段は、逃走型です。追うと罠へ誘導され、近づかないと向こうから踏みに来ます。地図片は階段の裏面、つまり階段が跳ねた瞬間の腹側に貼られている可能性があります」

「腹側って言った? 階段に腹があるの?」

「便宜上です」

「便宜上でも嫌!」


 ネムさんが、受付机からそっと予備の死亡受付票を出した。


「踏まれ死、罠誘導死、階段裏確認中の圧死あたりを用意しておきます」

「準備が具体的! でも、たぶん使う!」


 アドミニスの白い窓が、天井に開いた。


「いいね。逃げる出口を追わず、踏んでくる階段の裏を取る。勇者ちゃん、だいぶ裏側の考え方になってきた」

「神様に褒められると、わたしの中の危険察知が鳴る」

「それも成長だよ」

「成長って便利な言葉で死因を包むな!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 階段部屋は、やたら広かった。白い床に、黒い階段が一つだけぽつんとある。階段は、こちらを見ていた。一段目の目が、ぱちぱちしている。


「ログル。あれ、絶対逃げるよね」

「はい。近づくと逃げます。逃げた先は、おそらく罠です」

「じゃあ追わない。こっちで待つ」

「ただし、待ちすぎると階段が突進してきます」

「性格が悪い!」


 わたしは小石を投げた。階段が横へ跳ぶ。追わない。もう一つ、小石を投げる。階段がさらに跳ぶ。追わない。階段は、少し不満そうに目を細めた。


「階段が不満そう!」

「追ってほしいようです」

「知らない! こっちは百四十一回目で踏まれてるんだよ!」


 階段が、ぴょん、と跳ねて突進してきた。


「来た!」

「左へ一マス。いえ、左は落とし穴です。右へ二マス後退。勇者様、後ろの壁は呼吸していません」

「信じる!」


 一手。


 わたしは右後ろへ飛ぶ。階段が目の前を通り過ぎる。その瞬間、階段の裏側に白い紙が見えた。


「見えた! 地図片!」

「次の突進で回収可能です。ただし、手を伸ばすと踏まれます」

「じゃあどうするの!」

「吹き飛ばしの杖で角度を変えます」

「階段に杖を振る日が来るとは思わなかった!」


 階段が振り向く。目が怒っている。わたしは吹き飛ばしの杖を構えた。


 一手。


 杖の光が階段に当たり、階段が横向きに吹き飛ぶ。裏側の地図片が一瞬だけ露出した。わたしは小石袋改から、白銀の帰還ピンを投げる。


 一手。


 ピンが地図片に刺さり、紙を引っかける。成功。そう思った次の瞬間、階段が壁で跳ね返ってきた。


「階段が跳ね返るなああああああああ!」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百五十一回】

【死因:階段を吹き飛ばしたら、壁で跳ね返って踏まれた】

【評価:吹き飛ばし先も確認しましょう】

【新規獲得:吹き飛ばし先確認 Lv.1】


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百五十二回】

【死因:階段裏の地図片をつかんだ手を、階段に挟まれた】

【評価:手も当たり判定です】

【新規獲得:手を出す前に考える Lv.1】


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百五十三回】

【死因:階段の裏を見ようとして、階段の下敷きになった】

【評価:観察姿勢が低すぎました】


 白い拠点で、わたしは両手をじっと見た。戻っている。痛くない。でも、心はかなり階段に挟まれている。


「ログル。階段の裏を見るだけで三回死んだんだけど」

「はい。ただし、地図片・三は回収できました。これで裏帰還路の地図は完成可能です」

「死んだけど、勝った?」

「かなり死にましたが、進みました」

「その言い方、正確だけどつらい!」


 アドミニスの窓が開く。彼は、今度は拍手しなかった。ただ、少しだけ目を細めて笑っていた。


「百五十三回。地図完成まで、想定より少し早いね」

「神様の想定を外した?」

「うん。少しだけ」

「よし!」


 わたしが拳を握ると、アドミニスは楽しそうに言った。


「そうやって、僕の想定を外すたびに、拠点は強くなる。危険だけどね」

「危険なのは神様の方針!」


 ログルは、地図片三つを鑑定机に並べた。白い線が走り、黒い地図が浮かび上がる。


【裏帰還路の地図:完成】

【本出口:移動中】

【出口番:未確認】


「移動中って出た。出口が動くの、ほんとやめて」

「次の目的は、本出口の確認です」

「確認って言葉、宝箱と階段の次くらい信用できない!」

【登場人物紹介】

コヨリ:逃げる階段の裏側から地図片を奪おうとして、踏まれ、挟まれ、下敷きになる勇者。それでも地図を完成させる。

ログル:逃走型階段の動きと、吹き飛ばし先を解析する相棒。かなり死んでも進んだという事実を冷静に告げる。

ネム:踏まれ死、罠誘導死、圧死の受付票まで用意する死亡受付担当。準備が具体的すぎる。

アドミニス:地図完成が想定より早いことに反応する主神。コヨリが想定を外すほど、拠点が強くなると語る。

逃げる階段:地図片を裏に貼っている最低の収納場所。階段なのに跳ね返り、踏み、挟む。


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【帰還門・裏九十九階】

領域状態:神域固定ダンジョン/逃げる階段領域攻略済み

死亡回数:153回

クラス:帰還者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】【足元確認 Lv.5】【未識別警戒 Lv.5】【総合盤面確認 Lv.2】【逃げる階段警戒 Lv.1】【倒さない判断 Lv.1】【拾う前に周囲確認 Lv.1】【黒幕警戒 Lv.1】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【吹き飛ばし先確認 Lv.1】【手を出す前に考える Lv.1】

獲得情報:【裏帰還路の地図片・三】

解放:【裏帰還路の地図:完成】

死亡回数:150回→153回


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