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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第17章 裏九十九階 ――本当の出口は、表にはない

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裏モンスターハウスだ!

アイテムが多い部屋は、だいたい罠。

階段が見える部屋も、だいたい罠。

つまり、全部罠。

 裏九十九階、八回目の挑戦。わたしは黒い階段の前で所持品を確認した。


【小石袋改:拠点登録品】

【身代わりぬいぐるみ:拠点登録品】

【未識別の玉:薄青/2個】

【未識別の杖:重い木製/残り回数不明】

【未識別の壺:ふた付き/空き不明】

【未識別の巻物:白紙っぽい】

【未識別の草:帰りたい匂いがする】

【未識別の種:黒い星形】


「ログル、確認。裏で拾ったものは全部未識別。宝箱は呼吸確認。階段は踏んでくる可能性あり。壁も床も、白くてきれいなほど怪しい。あと黒い星形の種は絶対食べない。ここまで合ってる?」

「はい。かなり正確です。特に黒い星形の種への警戒は妥当です。超不幸の種、弱体の種、記憶抜けの種など、複数の危険候補があります」

「候補の名前が全部嫌! 超天使の種かもしれないって誘惑してくるところまで嫌! こういう時に限って、食べたら超不幸なんだよ!」

「勇者様のローグライクゲーマーとしての勘は、かなり頼れます」

「褒められてるのに、持ってる種が怖すぎて喜べない!」


 ログルは額の宝石を光らせながら、わたしの足元を見ていた。前回、アドミニスに未送信ログを指摘されてから、ログルは少し静かだ。気にしていないふりをしている。でも、しっぽがいつもよりわたしの足に近い。


「ログル。神様に怒られたら、わたしが文句言うから」

「勇者様の文句は、神様にかなり届きます」

「届いてるのに改善されないんだよ」

「それは、運営として問題があります」

「でしょ!」


 そう言うと、少しだけログルの表情がゆるんだ。


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


 今回の裏九十九階は、広い部屋から始まった。広い。明るい。床にはアイテムがたくさん落ちている。巻物、草、杖、壺、小石。奥には階段まである。しかも逃げていない。


 わたしは入口で止まった。


「ログル。アイテムが多い。階段がある。回復薬っぽい草もある。つまり?」

「罠ですね」

「だよね! こんな親切な部屋、裏九十九階が用意するわけないもんね!」

「ただし、中央の【未識別の巻物】から地図片反応があります。見た目は白紙の巻物に近いですが、裏では白紙とは限りません」

「また重要アイテムを未識別で罠部屋に置いてる! 神様の性格が一貫して悪い!」


 床のマス目が、いつもより薄い。アイテムが置かれたマスだけ、妙に光っている。部屋の中央に、一枚の巻物があった。


【未識別の巻物:白紙っぽい】


 わたしは、思わず息をのんだ。


「白紙っぽい。ほしい。すごくほしい。でも、白紙っぽいだけで、実は逆識別の巻物とか、読んだら持ち物の名前がさらに消えるやつかもしれない」

「その自己分析は正しいです。勇者様の欲張り顔は、死亡ログ上かなり危険です」

「顔で死因判定しないで!」


 まず小石を投げる。白紙の巻物の手前に落ちても何も起きない。もう一つ、小石を投げる。今度は巻物の隣に落ちた。


 その瞬間、部屋全体が鳴った。


【裏モンスターハウスだ!】


「やっぱりいいいいいいいいいい!」


 床から敵が湧いた。黒狼ログ、ミミックログ、白紙巻物喰い、保存壺荒らし、階段前の誘惑。そして、部屋の奥の階段が、そっと横へ逃げた。


「階段も逃げた! モンスターハウスで出口まで逃げるな!」

「勇者様、会議です。右の黒狼ログは二ターンで隣接。左の保存壺荒らしは次ターンで保存壺を狙います。白紙巻物喰いは中央の巻物へ向かっています」

「保存壺、空なのに荒らすの!?」

「空でも荒らしたい性質のようです」

「迷惑!」


 HP15。満腹度82。手持ちは未識別の玉、未識別の杖、未識別の巻物、未識別の壺。敵は多い。でも、まだ隣接されていない。名前がないだけで、盤面が一段階いやらしく見える。


「まず未識別の玉。前回の薄青と同じなら眠り玉だけど、裏だから信用しない。中央へ投げて、煙が出たら眠り。爆発したら泣く。これで行ける?」

「はい。ただし白紙巻物喰いは範囲外です」

「じゃあ次に未識別の杖。前回と同じなら吹き飛ばし。違ったら、その時点で神様に抗議。白紙巻物喰いを巻物から離す。ただし壁で跳ね返る可能性あり。丸い敵か確認」

「今回の白紙巻物喰いは、丸いです」

「先に言ってくれるログル、えらい!」


 一手。


 未識別の玉が床を跳ね、中央で割れる。白い煙が広がり、黒狼ログと保存壺荒らしが眠った。


【識別完了:眠り玉・裏】


 続けて未識別の杖を構える。白紙巻物喰いは、あと一歩で巻物に届く。


 一手。


 杖の光が飛び、白紙巻物喰いを壁際へ吹き飛ばした。


【識別完了:吹き飛ばしの杖・裏】


 壁に当たった敵は、丸い体で跳ね返る。予想通りだ。だから、わたしは一歩下がる。


「回避成功!」

「はい。かなり良い一手です」


 そこまでは良かった。問題は、下がった先にあった草だった。足元で草がぷち、と潰れ、緑色の煙が広がる。


「草が床にあるうううう!?」

「未識別床草です。踏むと発動するタイプです」

「草は食べるものじゃないの!?」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百四十五回】

【死因:白紙巻物喰いは避けたが、未識別床草を踏んだ】

【評価:避けた先も見ましょう】

【新規獲得:避けた先確認 Lv.1】


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百四十六回】

【死因:未識別の種を確認しようとして食べたら、超不幸の種だった】

【評価:裏では、黒い星形の種を口に入れないでください】

【新規獲得:超不幸の種警戒 Lv.1】


【死亡ログ】

【累計死亡回数:百四十七回】

【死因:保存壺を守ろうとして、保存壺ごと転んだ】

【評価:保存したいのは命でした】

【新規獲得:保存したいのは命 Lv.1】


 白い拠点に戻ったわたしは、保存壺を抱きしめたまま転がっていた。


「ログル。わたし、だいぶ頑張ったよね。眠り玉も杖も良かったよね。なのに、床に草が生えてるのはずるくない?」

「はい。かなりずるいです。ただ、白紙の巻物から地図片反応を一部取得できました」

「死んだけど進んだ!」

「はい。裏帰還路の地図片・一を登録しました」


 天井に白い窓が開く。アドミニスが、拍手していた。


「おめでとう。三回死んで地図片一つ。裏側としては悪くない交換だよ」

「交換レートが命!」

「命は戻る。地図は残る。だから進める」

「そういう言い方が黒幕なんだよ!」


 アドミニスは、笑っていた。否定はしなかった。


【登場人物紹介】

コヨリ:裏モンスターハウスで眠り玉や吹き飛ばしの杖を使い、少しずつ打開力を見せる幼女勇者。ただし避けた先の床草で死ぬ。

ログル:敵の接近ターン、アイテム位置、杖の跳ね返りまで確認する相棒。コヨリの一手一動を支える盤面係。

アドミニス:三回死んで地図片一つを得る交換を「悪くない」と言う主神。命の交換レートを軽く扱う黒幕感が強い。

裏モンスターハウス:アイテムも階段も罠になる裏側の大部屋。黒狼ログ、白紙巻物喰い、保存壺荒らしなど、死因の詰め合わせ。


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【帰還門・裏九十九階】

領域状態:神域固定ダンジョン/裏モンスターハウス確認

死亡回数:147回

クラス:帰還者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】【足元確認 Lv.5】【未識別警戒 Lv.5】【ミミック警戒 Lv.2】【総合盤面確認 Lv.2】【帰還門感知 Lv.3】【逃げる階段警戒 Lv.1】【宝箱起動判断 Lv.1】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【避けた先確認 Lv.1】【超不幸の種警戒 Lv.1】【保存したいのは命 Lv.1】

獲得情報:【裏帰還路の地図片・一】

死亡回数:144回→147回


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