表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第15章 帰るために必要なもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
105/340

千枚扉の廊下 ――玄関に歯をつけるな

最後の因子は扉です。

玄関も帰還門(きかんもん)も信用できません。

ドアノブが舌です。


 【千枚扉の廊下せんまいとびらのろうか】は、名前の通り扉だらけだった。


 左右の壁に、同じような扉がずらりと並ぶ。札には【玄関】【帰還門(きかんもん)】【魔王城】【神様会議場】【休憩所】【宝物庫】【おかえり】【安全】などと書いてある。最後の二つは特に信用できない。


「ログル、どれが本物?」

「開ける前に確認します」

「全部?」

「全部です」

「千枚あるのに!?」

「名前上は」

「名前だけでも嫌!」


 一枚目の【玄関】は、罠訓練場で見たものによく似ていた。木目、傷、古い鍵穴。少しだけ懐かしい。でも、ドアノブがぬるっと動いた。


「舌」

「舌ですね」

「玄関に舌をつけるなああああああああああ!」


 コヨリは小石を投げた。ドアノブが小石をぺろりと舐め、扉が口を開ける。歯が多い。玄関の歯としては多すぎる。


【玄関ミミック】


 盾で受けようとした瞬間、床が光った。


【ノック強制床】


 コヨリの手が勝手に扉を叩く。


 こんこん。


 扉の奥から、三倍の音が返ってきた。


 どんどんどん。


【死亡】

【死因:ノックしたら三倍返しされた】

【評価:礼儀は大事ですが距離も大事】


「ノックで死ぬ家、帰りたくないいいいいいい!」


 二度目。コヨリはノック強制床を小石で起動させた。扉が勝手に怒っている間に、横の【休憩所】扉を調べる。呼吸なし。ドアノブも舌ではない。開けようとした瞬間、ログルが止めた。


「札の裏に小さい文字があります」

「また小さい文字!」

「休憩所、ただし開けっぱなしの場合は警報」

「戸締まりまで要求するダンジョン!」


 慎重に開け、閉める。大丈夫。次の扉へ進む。今度は【帰還門(きかんもん)】と書かれている。白くて、神々しい。絶対に怪しい。


 しかし扉の向こうから、優しい声がした。


「おかえり」


 コヨリの手が止まる。


「声、した」

「おかえり声スライムの可能性が高いです」

「でも」

「勇者様」


 分かっている。分かっているけれど、帰還門(きかんもん)という文字と、おかえりという声を並べるのはずるい。コヨリは一歩近づいた。扉の下から、半透明のスライムがにゅっと出てくる。


【おかえり声スライム】


 開けていないのに増えた。


「扉の向こうで待ってて!」


 増えたスライムが通路をふさぎ、背後では差し戻しドアが開いた。神様会議場の嫌な白い光が見える。コヨリは逃げ道を間違えた。


【死亡】

【死因:おかえり声に釣られて通路をふさがれた】

【評価:帰る場所は選びましょう】


 三度目。コヨリは、扉を開ける前に聞くことにした。


「ログル、音」

「奥で反響しています。生活音ではありません」

「ベルさん、札の裏」

「免責同意あり。偽物です」

「ネム、死亡受付の匂い」

「濃いです」

「じゃあ開けない!」


 開けない勇気。これまで何度も死んで得た、地味で強い判断だ。


 奥へ進むと、扉を背負った番人が現れた。体じゅうに扉がある。小さい扉、大きい扉、金の扉、木の扉、神様会議場で見たような白い扉。


【千枚扉番ノッカー】


「正しい扉を開けなさい」

「間違えたら?」


 ノッカーの扉が一斉に笑った。


「開きます」

「それが一番怖い!」


 コヨリは一枚ずつ見ない。千枚全部を調べていたら、満腹度より先に心が減る。罠訓練場、仕様書保管棚(しようしょほかんだな)帰還門(きかんもん)感知、思い出ログ棚。全部を重ねる。


 正しい扉は、派手ではなかった。白く光らない。おかえりとも言わない。古い傷があり、鍵穴の周りが少しすり減っている。呼吸していない。免責同意も出さない。


「これ」

「根拠は」

「怖くない。でも、ちょっとだけ緊張する。家の玄関って、たぶんそう」


 コヨリは扉を開けた。中から風が吹く。ダンジョンの冷たい風ではない。拠点厨房のスープとも違う。もっと遠い、まだ届かない場所の空気だ。


帰還因子(きかんいんし):扉】

【強反応】


 ノッカーの背中の扉が閉じていく。最後に、一枚だけ白い扉が残った。札には小さく【表九十九階】と書かれている。


 コヨリは見なかったことにした。


「ログル」

「はい」

「見えなかった」

「見えていました」

「神様ァ! 扉の向こうに次の長い道を置くなあああああああ!」


【今回の勇者ステータス】

現在領域:特殊ダンジョン【千枚扉の廊下せんまいとびらのろうか】踏破

累計死亡回数:124回

今回の死亡回数:3回

クラス:【死因学者】/帰還者適性:兆候

現在HP:15/15

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

獲得済み主要スキル:【死因ログ参照 Lv.2】【死亡ログ改ざん Lv.1】【神様報告遅延 Lv.1】【総合盤面確認 Lv.1】【危険察知 Lv.4】【罠感知 Lv.3】【未識別警戒 Lv.4】【射線確認 Lv.3】【帰還門(きかんもん)感知 Lv.1】【シード差分確認 Lv.2】【一フレームの神様 Lv.1】【仕様書要求 Lv.2】

今回の新規獲得・更新:【扉を開ける前に聞く Lv.1】【帰還門(きかんもん)も呼吸確認 Lv.1】【戸締まり確認 Lv.1】【おかえり声警戒 Lv.1】【帰還因子(きかんいんし):扉】強反応

今回活用した拠点設備:【罠訓練場】【仕様書保管棚(しようしょほかんだな)】【帰還門(きかんもん)建設予定地】【思い出ログ棚】【魔王軍資料室まおうぐんしりょうしつ】【死因研究室(しいんけんきゅうしつ)】【一フレーム道場ひとフレームどうじょう

登場人物紹介:コヨリはノックで死んだ幼女勇者。ログルは扉の呼吸と舌を冷静に確認する解析神獣。ノッカーは正しい扉を選ばせる千枚扉番です。

※表示は主要スキルのみです。扉・ミミック・戸締まり系の下位スキルは統合済み・内部保持されています。

続きが気になると思っていただけましたら、ブックマーク登録・評価・コメント・レビューで応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただきありがとうございます。感想・評価・レビューお願いします!励みになります
少しでも気になっていただけたら、作品ページものぞいていただけると嬉しいです。

小説家になろう 勝手にランキング
ギルド酒場るすと公式サイト

異世界ゲームバー転生おじさん(42)
影森ゆらは今日も死ぬ
千回死亡幼女勇者 異世界Any%
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ