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■第28章:恋人の役割

 風が、戻る。


 木々が揺れる。


 音が、現実に引き戻す。


「……」


 だが。


 頭の中は、静かすぎた。


「……」


 さっき聞いた言葉が、残っている。


 ——触れられる人間が増えるほど、加速する。


「……」


 喉の奥が、乾く。


「……」


 思い出す。


 動画。


 コメント。


 再生数。


「……」


 見せていた。


 広げていた。


「……」


 自分で。


「……」


「……なんで」


 声が漏れる。


「……」


 止める側がいるなら。


 なぜ——


「……」


 男を見る。


「……あいつは」


 喉が詰まる。


「……澪は」


「……」


 名前を出した瞬間。


 空気が、わずかに変わる。


「……」


 男は、黙る。


 ほんの一瞬だけ。


「……」


「……知ってるんか」


 問い。


 震えている。


「……」


 男は、ゆっくりと頷く。


「……」


 それだけで、十分だった。


「……」


 胸の奥が、ひどく重くなる。


「……」


「……あいつは」


 続ける。


「……なんで、あんなことになった」


「……」


 問いの形をしているが。


 もう、半分わかっている。


「……」


 男は、視線を外さない。


「……」


「……止めていた」


「……」


 短い答え。


「……」


 それだけで。


 すべてが、繋がる。


「……」


 回想が、浮かぶ。


 大学。


 掲示板の前。


 あのときの澪。


「——変なもん見つけても、勝手に触ったらあかんで」


「……」


 あの言葉。


「……」


 ただの注意じゃなかった。


「……」


 知っていた。


 最初から。


「……」


 別の記憶。


 部屋。


 動画の話をしたとき。


「——もうええって」


「……」


 軽く流した。


 冗談みたいに。


「……」


 違う。


 あれは——


「……」


 止めていた。


「……」


 自分を。


「……」


「……なんで言わんかった」


 絞り出す。


「……」


 男は、少しだけ間を置く。


「……」


「……言っていた」


「……」


 静かに。


「……」


「……お前が、聞かなかっただけだ」


「……」


 言葉が刺さる。


 そのまま。


「……」


 何も言い返せない。


「……」


 思い出す。


 再生数の話。


 金の話。


 全部。


「……」


 自分は——


 聞いていなかった。


「……」


「……あいつは」


 声が震える。


「……何してた」


「……」


 男は、少しだけ視線を落とす。


「……」


「……回収だ」


「進む前に、切る」


「……」


「危険な記録点の封鎖」


「……」


「……拡張の抑制」


「……」


 言葉は簡単だが。


 意味は重い。


「……」


 あの山。


 三輪山。


「……」


 あそこにも来ていた。


「……」


 ひとりで。


「……」


 止めるために。


「……」


「……なんでや」


 思わず出る。


「……」


「……なんで、そこまで」


「……」


 男は、少しだけ目を細める。


「……」


「……理由は二つだ」


「……」


「……ひとつは、適合していた」


「……」


 触れられる側。


「……」


「……もうひとつは」


「……」


 一瞬。


 間。


「……」


「……お前だ」


「……」


 言葉が、落ちる。


「……」


 意味が、遅れてくる。


「……」


「……お前が、触れる側になるとわかっていた」


「……」


「……だから、先に動いた」


「……」


 息が、止まる。


「……」


 自分のために。


「……」


 あいつは——


「……」


 止めようとしていた。


 全部。


「……」


 動画も。


 能力も。


 この先も。


「……」


 それでも。


 自分は。


「……」


 見た。


 触れた。


 広げた。


「……」


「……あいつは」


 声が、ほとんど出ない。


「……」


「……どうなった」


「……」


 聞かなくてもいい。


 わかっている。


「……」


 男は、短く答える。


「止めきれんかった」


「……壊れた」


「……」


 その一言で。


 全部が、終わる。


「……」


 事故じゃない。


「……」


 結果だ。


「……」


 止めようとして。


 間に合わなかった。


「……」


 そして。


 自分は——


「……」


 同じ場所に立っている。


「……」


 視界の端。


 赤い点。


 ——REC。


 それが、静かに点滅する。


 まるで。


 まだ終わっていないと。


 そう言っているみたいに。

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