■第27章:起源
音が、戻る。
「……っ」
喉が焼ける。
肺が空気を求めて痙攣する。
「……は、っ……」
地面。
土。
湿った匂い。
「……」
戻っている。
身体は。
「……」
だが——
頭の中は、戻っていない。
「……」
視界の端。
赤い点。
——REC。
消えない。
むしろ。
増えている。
「……」
男が立っている。
目の前。
あの男。
「……」
少しだけ息が乱れている。
それだけ。
他は変わらない。
「……」
「……見たな」
低い声。
「……」
否定できない。
「……」
「……あれが何かわかるか」
「……」
言葉が出る前に。
理解が先に来る。
「……装置」
かすれた声。
「……」
男が、わずかに頷く。
「……そうだ」
「……」
沈黙。
「……何をしてる」
「……」
問い。
単純な。
「……」
男は、山の奥を見る。
「……観測だ」
「……」
「……なぞっている」
「……」
頭の奥で。
さっきの光景が蘇る。
無数の点。
地表を覆う格子。
「……」
「……人間を」
「……」
言葉が重なる。
男と。
自分の中の理解が。
「……」
ズレていない。
「……」
「……なんでや」
絞り出す。
「……」
男は、すぐには答えない。
「……」
「……お前は、どう見た」
「……」
問い返される。
「……」
断片。
映像。
全部が繋がる。
「……」
最初は、なかった。
途中で来た。
「……」
「……外や」
「……」
「地球の外から」
「……」
男は否定しない。
「……」
それが答え。
「……」
さらに。
理解が進む。
止まらない。
「……」
点が増えていた。
触れたとき。
確かに。
「……」
「……増えとる」
「触れた分だけ、先が確定していく」
「……」
男が、わずかに目を細める。
「……」
「人が触れるほど」
「……」
「……広がる」
「……」
言葉にすると。
違和感が消える。
「……」
「……そうだ」
男が言う。
「……」
「認識がトリガーだ」
「……」
見る。
知る。
触れる。
「……」
それだけで。
増える。
「……」
「……だから止めてるんか」
「……」
「……それだけじゃない」
「……」
男の声が、わずかに低くなる。
「……」
「……増えるのは、点だけじゃない」
「……」
一瞬。
意味がわからない。
「……」
「……適合する人間もだ」
「……」
背中が、冷える。
「……」
「……触れられるやつ」
「……」
その言葉。
重く落ちる。
「……」
理解する。
勝手に。
「……」
最初は少ない。
ほとんどいない。
「……」
だが。
見る。
知る。
繰り返す。
「……」
その中で——
“合う”人間が出てくる。
「……」
「……お前みたいにな」
「……」
言葉が刺さる。
「……」
否定できない。
「……」
「……それが、何になる」
声が震える。
「……」
男は、短く答える。
「……増幅だ」
「分岐が減っていく」
「……」
それだけ。
「……」
「触れられる人間が増えるほど」
「……」
「記録は、加速する」
「……」
「……止まらなくなる」
「全部埋まったら、終わりや」
「……」
静かに。
だが、決定的に。
「……」
頭の奥で。
何かが崩れる。
「……」
自分は。
何をしていた。
「……」
動画。
拡散。
再生数。
「……」
見せていた。
広げていた。
「……」
無自覚に。
触れる側を。
「……」
「……それで、隠してるんか」
呟く。
「……」
男は、頷く。
「……そうだ」
「……」
「広げないために」
「……」
短い。
「……」
笑いそうになる。
乾いた笑い。
「……無理やろ」
「……」
もう遅い。
「……」
ここまで来ている。
「……」
男は、否定しない。
「……」
ただ、言う。
「……止めているんじゃない」
「……」
「……遅らせている」
「……」
その言葉。
重く落ちる。
「……」
終わりはある。
ただ——
まだ来ていないだけ。
「……」
「……なんのために」
もう一度、問う。
「……」
男は、少しだけ間を置く。
「……」
「……わからない」
「……」
その答え。
予想外だった。
「……」
「……目的は不明だ」
「……」
「……ただ、続いている」
「……」
観測。
記録。
拡張。
「……」
止まらない。
「……」
人間は——
その中の一部。
「……」
記録される側。
そして。
増やす側。
「……」
視界の端。
赤い点。
——REC。
それが、ゆっくり点滅する。
まるで。
まだ“録られている”と。
告げるみたいに。




