■第23章:崩壊
暗い。
カーテンは、閉めたまま。
「……」
時間が、わからない。
朝か。
夜か。
どうでもいい。
「……」
スマホの光だけが、浮いている。
通知は、もう見ていない。
意味がない。
「……」
腹が鳴る。
無視する。
喉が渇く。
放っておく。
「……」
必要ない。
今は。
「……」
視界の端。
赤い点。
——REC。
「……」
それだけで、十分だった。
手を上げる。
こめかみ。
触れる。
「……」
止まる。
ほんの一瞬。
「……」
違う。
気づく。
「……触れてへん」
指が、止まっている。
皮膚に、触れていない。
それなのに。
「……」
——暗転。
黒。
無音。
赤い点。
「……」
繋がっている。
「……なんでや」
呟く。
答えはない。
だが。
理解だけが、先に来る。
「……」
戻れない。
もう。
「……」
再生。
景色が、浮かぶ。
あの日。
「……もう終わってるはずの場面」
あの場所。
「……」
澪。
立っている。
同じ場所。
同じ時間。
「……」
何度目か。
わからない。
もう、数えるのをやめた。
「……」
指を動かす。
触れていない。
それでも。
進む。
景色が、滑る。
「……」
操作している。
「……勝手に進んでるだけか」
いや。
「……されてる?」
小さく呟く。
違和感。
ほんのわずか。
だが。
確実にある。
「……」
止める。
念じる。
「……止められる範囲が決まってる」
すると。
止まる。
「……」
再生する。
意識だけで。
動く。
「……」
理解する。
これはもう。
触覚じゃない。
「……」
接続。
「……」
笑いが、漏れる。
小さく。
「……はは」
「……ええやん」
乾いた声。
「……」
さらに進める。
速度を上げる。
思考だけで。
景色が流れる。
「……っ」
頭が、痛む。
強く。
鋭く。
「……」
止めない。
止める理由がない。
「……」
澪が、動く。
口が、開く。
誰かと話している。
「……」
いない。
見えない。
それでも——
いる。
「……」
位置を変える。
時間をずらす。
角度を探る。
「……」
ズレる。
合わない。
それでも。
近づく。
「……」
ノイズ。
強くなる。
視界が歪む。
「……っ」
息が荒くなる。
「……」
部屋。
現実。
その輪郭が、薄れる。
「……」
足元。
ペットボトル。
いつの間にか増えている。
転がっている。
「……」
机。
封筒。
そのまま。
「……」
関係ない。
全部。
「……」
また戻す。
澪の顔。
少し上がる。
「……」
目。
合う。
「……っ」
心臓が、強く打つ。
「……」
ありえない。
これは過去。
記録。
固定されたもの。
「……」
それなのに。
「……」
澪の目が。
確かに、こちらを捉える。
「……」
口が動く。
音はない。
だが——
読める。
「……」
ゆっくりと。
はっきりと。
「……もうええって」
「……」
時間が、止まる。
「……」
これは。
違う。
あのときの言葉じゃない。
「……」
今。
ここに向けられている。
「……」
自分に。
「……」
手が震える。
「……」
戻す。
同じ場所。
同じ時間。
「……」
いない。
さっきの視線。
消えている。
「……」
もう一度。
進める。
「……」
同じ。
何もない。
「……」
再現できない。
「……」
息が荒くなる。
「……今の」
呟く。
「……なんや」
「……」
わかっている。
気づいている。
それでも。
認めない。
「……」
これは記録。
過去。
変わらない。
「……」
なのに。
「……」
見られている。
確実に。
「……」
境界が、崩れる。
現実。
記録。
記憶。
全部が、混ざる。
「……」
頭が痛い。
強く。
奥から。
「……」
それでも。
止めない。
「……」
もう一度。
見る。
探す。
あの瞬間を。
「……」
止めるため。
違う。
「……」
確かめるため。
違う。
「……」
ただ。
見たい。
「……」
それだけ。
それだけが、残る。
「……」
部屋は、静かだ。
空気は、動かない。
時間も、進まない。
「……」
進んでいるのは。
あっちだけ。
「……」
視界の端。
赤い点。
——REC。
それが。
脈打つ。
ゆっくりと。
確実に。
まるで——
自分の心臓と、繋がったみたいに。




