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■第18章:決定的映像

 やめる理由は、あった。


 いくらでも。


「……」


 頭痛。


 混濁。


 あの感覚。


 自分じゃなくなる感覚。


「……」


 それでも。


 指は、止まらない。


 スマホを握る。


 立ち上がる。


 外に出る。


「……」


 夜。


 空気が、少し冷たい。


 人通りは少ない。


 静か。


「……」


 歩く。


 覚えている道。


 何度も通った道。


 何度も——


 避けてきた道。


「……」


 足が、止まる。


 そこ。


 変わらない景色。


 電柱。


 ガードレール。


 アスファルト。


「……」


 ここ。


 澪が死んだ場所。


「……」


 喉が、乾く。


 胸の奥が、重い。


「……」


 やめろ。


 頭のどこかで、声がする。


 やめとけ。


 これ以上は。


「……」


 無視する。


 ゆっくりと。


 手を伸ばす。


 電柱に触れる。


 ——暗転。


 無音。


 赤い点。


 ——REC。


「……」


 迷わない。


 こめかみ。


 押す。


 進める。


 戻す。


 探す。


「……」


 映像が流れる。


 昼。


 夕方。


 夜。


 時間が跳ぶ。


「……」


 止める。


 少し戻す。


 進める。


「……」


 精度は、上がっている。


 ズレはある。


 だが。


 近い。


 かなり。


「……」


 心臓が、速くなる。


 呼吸が、浅い。


「……」


 そのとき。


 視界が、止まる。


「……」


 見覚えのある服。


 見覚えのある髪。


「……」


 澪。


「……」


 動けない。


 視線だけが、固定される。


「……」


 彼女が、立っている。


 ここに。


 事故現場に。


 ひとりで。


「……」


 いや。


「……」


 違う。


「……」


 少しだけ。


 顔が、傾いている。


 誰かを見ている。


「……」


 そこには——


 何もない。


 誰もいない。


 空間だけ。


「……」


 なのに。


 確実に。


 “誰か”がいる。


「……」


 澪の口が、動く。


 音は、歪んでいる。


 遠い。


 ノイズ混じり。


「……」


 それでも。


 わかる。


 ニュアンスが。


「……やめて」


 小さく。


 かすれるように。


「……」


 もう一度。


 口が動く。


「……それ以上——」


 音が、切れる。


 歪む。


 ノイズ。


「……」


 だが。


 意味は、わかる。


 止めている。


 何かを。


 誰かを。


「……」


 喉が、締まる。


「……誰や」


 思わず、出る。


 当然。


 答えはない。


「……」


 視線を、動かす。


 空間。


 何もない場所。


 そこに——


 一瞬。


「……?」


 ノイズ。


 歪み。


 影のようなもの。


 輪郭が、合わない。


 人の形。


 のようで。


 違う。


「……」


 瞬き。


 消える。


 何もない。


「……」


 呼吸が、乱れる。


「……今の」


 言葉が、続かない。


「……」


 澪が、後ろに下がる。


 一歩。


 二歩。


 距離を取る。


「……」


 明らかに。


 恐れている。


 目の前の“何か”を。


「……」


 口が、動く。


 強く。


「……もうええって」


 はっきりと。


 今度は、聞こえる。


「……」


 その言葉。


 胸に、刺さる。


 あのときと同じ。


 いや——


 違う。


 意味が。


 重さが。


「……」


 止めている。


 本気で。


「……」


 次の瞬間。


 光。


 強い。


 横から。


 車。


「……っ」


 音が、歪む。


 ぶつかる。


 視界が、揺れる。


 崩れる。


「……」


 暗転。


 ノイズ。


 切れる。


 ——REC。


「……っは」


 強く息を吐く。


 視界が戻る。


 現実。


 夜の道路。


「……」


 足が、震えている。


 立っているのが、やっと。


「……」


 頭の奥が、痛む。


 強く。


 鈍く。


 残る。


「……」


 さっきの映像。


 澪。


 会話。


 見えない相手。


「……」


 偶然じゃない。


 事故じゃない。


「……」


 ゆっくりと。


 呟く。


「……殺されたんか」


 風が、吹く。


 誰もいない。


 音もない。


「……」


 視界の端。


 赤い点。


 ——REC。


 それが。


 静かに、光る。


 まるで——


 まだ続きがあると、示すみたいに。

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