表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷雨の黙示録  作者: 唯野眠子
第6章-バベルの塔
PR
35/80

第6-6話 イブラヒムの訪問

時刻: 6月下旬 午前10時00分

場所: 中央棟、マリアとの通信回線

「イブラヒム・アル=ファディルから直接の要請が入っています」

マリアが言った。

「直接お会いしたい、と。太平洋の人工島を訪問したいそうです」

「どんな目的で?」

「プロジェクトとの正式な協力関係の構築について、話し合いたいと」

浩は少し考えた。

ザカリアと決裂した男。過激派が暴力路線を選ぶ中、穏健派を率いて組織を去った。その後、支持者を集めながら「地球信仰」の設立準備を進めていると報告で知っていた。元天文学者。戦争の中で神学者になった人間。

氷雨の後、世界には様々な反応が生まれた。科学でタワーを建てようとする者たちがいた。科学そのものを憎んだ者たちがいた。そして、科学と信仰の間に新しい場所を作ろうとした者たちがいた。イブラヒムは、その最後の群れの中にいた。

「受け入れますか?」

マリアが聞いた。

「あなたと洋子さんの判断を聞きたい」

浩は、画面越しにマリアの瞳を見た。

そこにはいつもの冷徹な理知があったが、同時に「自分には解けない問題を、信頼できる解法に委ねる」という潔い放棄の色もある、ように思えた。

だが、何を期待されているのかがわからない。

マリアは、浩が戸惑うのを見透かしたように微かに微笑んだ。

浩は深く一息つくと、信頼に応えることにした。

「受け入れる方向で考えます。洋子さんにも話します」

「では、日程の調整を始めます」

マリアが頷いた。画面が切れた。

浩は窓の外を見た。

第一基のケーブルが、晴れた空に向かって伸びている。細い線が、どこかで見えなくなっている。

ザカリアは今、地下施設にいる。イブラヒムは、ここに来ようとしている。

同じ氷雨の後を生き延びた二人が、三年後、全く異なる場所にいる。

その違いが、何から来たのかは、今の浩には分からなかった。


時刻: 3日後 午後2時

場所: 人工島、ヘリポート

ヘリコプターが降りた。

イブラヒム・アル=ファディルが出てきた。

落ち着いた目に静かな物腰、そして、質素な服装。宗教的な装飾はない。

「Prof. Hiroshi、討論会以来ですね」

「ようこそ」

握手した。手の力が適度だった。強すぎず、弱すぎない。

イブラヒムは、挨拶の後、タワーを見上げなかった。

視線は、足元のコンクリートに向いていた。それから、水平線へ。そして、ゆっくりと上がっていく。

かつて望遠鏡で天体を観測していた時のように、目を細めてタワーの基部を観察している。

建設クレーン。

固定アンカー。

ケーブルの根元。

「どのくらい高いんですか、今は」

「47,000メートルを超えています。見えている部分は、その約百分の一です」

「残りは、肉眼では届かない」

「そうです」

イブラヒムは、しばらくケーブルを見ていた。

「設計図では見ていましたが、これほどの質量を人類が一個所に集めたことはなかった」

独り言のように言った。

「これは、重力を克服する楔か。あるいは、地球を繋ぎ止める重石か」

浩は、その言葉を聞いた。

イブラヒムが振り返った。

「この塔は、想像していたよりもずっと『地上の匂い』がしますね」

「地上の匂い、ですか」

「宇宙を目指す構造物にしては、人間臭さが残っている。それが、良いのか悪いのかは、まだ分かりませんが」

短い言葉だった。意味が深いかどうか、浩には即座には判断できなかった。ただ、言葉に作為がなかった。

施設の中に案内した。廊下を歩きながら、イブラヒムは周囲をゆっくり見ていた。壁に貼られた建設進捗図。各基の現在高度。技術者たちが歩いている。

立ち止まらなかった。しかし、何も見逃していないような歩き方だった。

「人が多いですね」

「六十数カ国から集まっています」

「言語は?」

「作業現場では英語と標準語が多い。ただ、深夜に計算するときはそれぞれの母国語で独り言を言っているようです」

イブラヒムが少し笑った。

「それは、人間らしい」

洋子が合流した。三人で会議室に向かった。


時刻: 午後3時30分

場所: 会議室

浩と洋子、そしてイブラヒムが向かい合って座った。

「元天文学者とのことですね」

洋子が言った。

「はい。20年前、銀河系の外縁部の星団の観測をしていました。イエメン南部の観測所に籠もって、スペクトル分析を繰り返していた。単純な作業です。しかし、空が特別きれいな場所でした」

「今では、誰かが見上げている星を、信仰の言葉で語っています」

「そうなります」

洋子が少し間を置いた。

「あなたが観測していた星団は、今でも見えますか」

「見えます。南半球から、晴れた夜に。ただ、今は望遠鏡を使わない。肉眼で見ます」

「何か変わりますか?」

イブラヒムは少し考えた。

「神が人間に知性を与えたのは、宇宙という巨大な聖書を読み解くためです。望遠鏡は、神が許してくださった『拡張された瞳』。しかし、肉眼で星を見るのは、神の息遣いを肌で感じるため。データではなく、光そのものに触れる儀式なのです」

洋子は、それを聞いていた。

少しの間、黙っていた。

「私は今も、数字で見ます。光を見るとき、その光が何年前に発した光かを考えます。木星の光は40分前の光。近い星の光は数年前の光。遠い銀河の光は数億年前の光」

「それを、どう感じますか」

「距離ではなく、時間だと思っています。宇宙を見ることは、過去を見ることです」

イブラヒムは、洋子の言葉を聞いた。

「それは、科学者の言葉ですが、信仰者も同じことを言います。この瞬間に過去のすべてが含まれている、と」

洋子は少し考えた。

「見え方が変わりましたか?」

「変わりました。しかし、不思議なことに、同じでもあります」

洋子が少し考えた。

「どういう意味ですか?」

「かつての私にとって、宇宙は『数学的な必然』の集積でした。今の私にとって、それは『神の意志という名の律動』です。しかし、どちらの道を通ろうとも、光が網膜に、あるいは魂に届く瞬間の——絶対的な真理に射抜かれ、自己という境界が透化していくあの『戦慄』だけは、全く同じだったのです」

イブラヒムは、望遠鏡を覗き込むような手つきで、何もない空間に指を置いた。

「情報の海であれ、祈りの果てであれ、真実がその全容を現した時、私たちはただ、語るべき言葉を奪われるしかない。その『沈黙の重さ』において、天文学と神学は、実は同じ一つの頂を目指しているのだと気づいたのです」

洋子は、その言葉の「重さ」を反芻するように、手元のタブレットに目を落とした。

「沈黙の重さ...。それは、私たちが膨大な計算の果てに、ただ一つの解に辿り着いた時の感覚に近いのかもしれません」

「そうでしょう。だからこそ、私は確信しているのです。神が人間に知性を与えたのは、宇宙という巨大な聖書を読み解くためです。望遠鏡も、あなたがたが築いているこの塔も、神が許してくださった『拡張された瞳』に他なりません。科学を否定することは、神が差し出した『理解』という名の救いの手を拒絶することと同じなのです」

浩が口を開いた。

「...それが、あなたがザカリアと袂を分かつ決断をした理由ですか」

「ええ。彼は氷雨を『制裁』と呼びましたが、私はそれを『試練』、あるいは『問いかけ』だと読みました。あの絶望の最中、神が沈黙を守られたのは、我々が『隣人の手を取るか、それとも奪い合うか』を、言葉ではなく行動で示すのを待っていたからです。ケフィリアンという鏡に映った自分たちの姿を見て、私たちは初めて、互いを必要とする『協力』という名の信仰を手に入れた。この塔は、その祈りが形になったものだと思っています」

「同じ法則を、全く逆に読んだ」

「そうです。ただ、私が正しいと信じるからと言って、本当に正しいかは、今も分からない」

イブラヒムが静かに言った。

「ただ、私はここにいる。彼は地下にいる。それだけが、今の違いです」

浩は、その言葉を頭の中に置いた。

ザカリアは言った。タワーは避雷針だ、と。物理法則の報復を晒すための。

イブラヒムは、同じ構造物を見て、何と呼ぶだろうか。

だがそれは聞かなかった。まだ聞く時ではないと思ったから。


時刻: 翌日 午前10時

場所: 別室

イブラヒムは、マリアが来るのを待ちながら、先程会った二人のことを思い出していた。

浩の目は、建設の進捗データを見る時と同じ集中があった。

しかし、その集中の奥に、何かを守ろうとする意志がある。

洋子の目は、数式を解く時の冷静さがあった。

しかし、その冷静さの底に、計算できない何かへの敬意がある。祈りに近い姿勢だ。

この塔を建てる者たちは、単なる征服者ではない。無私に近い献身を持っている。

自分の信徒200万人の命を預けるに足る。

イブラヒムは、そう心の中で確信した。

そして、出されたコーヒーに口をつけた時、マリアが入室してきた。

マリアは、会議室のテーブルに、資料を並べて見せた。

イブラヒムの組織概要。接触した経緯。想定されるリスク評価。段階的な協力枠組みの草案。

イブラヒムは、資料を一通り見た。

そして言った。

「地球信仰の信者200万人を、プロジェクトの労働力として提供したいと考えています」

「無償で提供します。これが神への奉仕だと信じています」

マリアは、即答しなかった。

イブラヒムが続けた。

「しかし、それは単なる奉仕ではありません」

「アセンション計画の労働力として彼らを提供するのは、彼らが新時代のシステムの部品ではなく、『創世の目撃者』となるためなのです」

マリアは、なおもしばらく無言だった。

「マリアさん、私は信者に『パン』と『尊厳』を与えたい」

マリアは、その言葉を聞いた。

「...『神への奉仕』というだけで、その大きな労働力を提供するになるとは思えませんが?」

「はい。正直に言いましょう。ベース内での信仰の自由と、信徒コミュニティの自治権を認めてください」

イブラヒムが続けた。

マリアは、回答する代わりに資料を開いた。

200万人という数字の根拠。メンバーの出身国の分布。過去の活動記録。

「信頼を築くのには時間がかかります」

「分かっています」

「元教団のメンバーを受け入れるリスクを、私は軽く見ることができない。あなた自身は信頼できると思っています。しかし、200万人すべてを精査するには」

「それは正当な懸念です」

マリアが続けた。

「段階的な受け入れから始めることを提案します。まず100名。彼らが現場での信頼を積み上げれば、次のステップに進める」

イブラヒムは資料を見た。条件を確認した。

「受け入れます。それが誠実な方法です」

「最初の100名は、どういう基準で選びますか?」

「スキルで選びます。信仰の度合いではなく、技術を持っている者から。建設の経験がある者、測量ができる者、機械の操作ができる者」

「それが最良の選択だと思います」

「もう一つ、追加条件があります」

マリアが言った。

「現場に入る前に、セキュリティチームによる基本的な審査を受けていただきます。これは全員に適用するルールです。信仰や出身国による差異はありません」

「分かりました。それも誠実な方法です」

マリアが頷いた。

「ありがとうございます」

イブラヒムが言った。

しばらく、資料を確認する時間があった。マリアが表に数字を書き込んでいる。イブラヒムがそれを見ている。

この部屋に、二人以外は誰もいない。浩も洋子もいない。政治の話が、政治の人間の間で静かに進んでいる。

「一つ聞かせてください」

イブラヒムが言った。

「どうぞ」

「あなたは、このプロジェクトが完成すると思っていますか?」

マリアは少し考えた。

「分かりません。ただ、完成させる以外の選択肢を、今の私は持っていない」

「私も同じです」

イブラヒムが言った。

政治的な言葉だが、その言葉の背後に、マリアの何かが見えた。

この人間を見極めようとする集中。

それを見て、イブラヒムは少し微笑んだ。

「あなたは、疲れていますか」

突然の問いだった。

「...仕事上の疲れは、適度にあります」

「それは良い答えです」

イブラヒムが言った。

「疲れていない、などと言う人間は、本当のことを見えていない」


時刻: 午後4時、帰還前

場所: ヘリポート付近

イブラヒムが帰る前に、浩と並んで歩いた。

ヘリポートに向かう廊下。外の光が窓から入っている。

「一つだけ言わせてください」

「はい」

「ザカリアは諦めていない。私はザカリアを20年以上知っています」

「どういう人間ですか、彼は」

イブラヒムは少し考えた。

「優秀な物理学者でした。洞察力がある。一つの問いに対して、どこまでも深く潜れる人間です。そして、その深さが美しかった。研究者として、本物でした」

「過去形ですか」

「今も、その深さはあると思います。しかし、家族を失った後、その深さが別の方向に向いた」

イブラヒムは、窓の外を見た。

「ザカリアは今、『沈黙の預言者』になっています」

「沈黙の預言者?」

「彼は宇宙を『神が捨てた廃墟』だと信じている。エントロピーが増大し、全てが冷たく静止することこそが、彼にとっての唯一の救済なのです。あなたに身近な仏教で例えると、涅槃のような、終わりの静けさ」

浩は、その言葉を聞いた。

「彼はタワーを壊したいのではない」

イブラヒムが続けた。

「人類を、その『終わりのない加速』から解放し、死という名の安らぎに帰そうとしている。...彼は、最も慈悲深い破壊者になろうとしているのです」

浩の表情は変わらなかった。しかし、目が少し動いた。

「一つ、聞いてもいいですか」

「はい」

「彼の論理のクセ、のようなものはありますか。『最も慈悲深い破壊者』を物理の言葉に翻訳したとしたら」

イブラヒムは少し考えた。

「特定の物理定数への固執があります。エントロピー増大の法則、熱力学第二法則。彼はそこから、すべてを導き出そうとする。数学者が公理から定理を導くように、彼は熱力学から世界の終わりを導くでしょう」

「なるほど」

「それが、役に立ちますか」

「分かりません。ただ、知っておくことは重要です」

「ありがとうございます。良い旅を」

浩が言った。

「ありがとうございます。また来ます」

イブラヒムは言った。

ヘリコプターに向かって歩き始めた。

プロペラが回り始めた。風が吹いた。砂塵が舞った。

その後ろ姿を、浩はしばらく見ていた。

同じ危機の中で、異なる選択をした二人の男。

どちらも科学者だった。

どちらも家族を持っていた。

どちらも、氷雨の後を生き延びた。

一方は去り、一方はここにいる。

宇宙の法則を「制裁」と読むか、「招待」と読むか。

浩には、どちらが正しいか、判断する材料がない。

ただ、ケーブルはどちらの解釈とも無関係に、今日も伸び続けている。

イブラヒムがここに来た。それだけは確かだ。


時刻: 当日夜

場所: 中央棟、カフェテリア

イブラヒムを見送った後、浩と洋子はカフェテリアに寄った。

夜のカフェテリアは空いている。技術者が数名、遠くのテーブルで話している。

二人は窓際の席に座った。

浩はコーヒーを飲んでいた。洋子は、カフェに置いてあった焼き菓子を一つ手に取った。小さなクッキーだ。

「甘いものが置いてあると、つい」

洋子が少し笑った。

「イブラヒムも、会議の時に菓子を勧めたら喜んでいました」

「そうでしたか」

「人間らしい、と言っていました」

洋子がクッキーをまた一口食べた。

しばらく、二人は黙っていた。

「彼をどう見ましたか?」

浩が聞いた。

「信じていいと思います」

洋子が答えた。

「理由は?」

「分かりません」

短い返事だった。

「直感ですか?」

「そう言えるかもしれません。ただ...彼の話し方に、嘘をつくことが苦しい人間の特徴があります。私が長年データを読んできた感覚に近い」

「なるほど」

「具体的には?」

浩が聞いた。

「都合の悪いことを、正直に言います。『分からない』と言える人間は、分かっているふりをする人間より、言葉の重さが違います。今日の会話で、彼は何度か『分からない』と言いました」

「覚えています」

「それが、データとして残ります」

「浩くんは?」

「同意します。理由は言えませんが」

洋子がコーヒーに口をつけた。

「でも、何か引っかかりますか」

「引っかかる、というより」

浩が言った。

「彼が何を見に来たのか、何をしたかったのか」

洋子は、少し考えた。

「彼は、答え合わせをしに来たのね」

「答え合わせ?」

「自分が率いる200万人の命を、浩くんの夢に賭けていいのかどうかを。...そして彼は、コーヒーの砂糖の量を選ぶように、ごく自然に私たちの未来を選んだ」

浩は、その言葉を頭の中に置いた。

「ザカリアとイブラヒムは、同じものを見て、逆の解釈をしたと言っていました」

浩が言った。

「ええ」

「科学的に、どちらが正しいですか」

洋子は少し考えた。

「どちらも、間違っていないかもしれない。宇宙の法則を制裁として読むことも、招待として読むことも、どちらも解釈としては成立する。数式は読む者の問いに答えるだけで、解釈を与えない」

「どちらの解釈が、現実に良い結果をもたらすかは」

「今後が答えを出すのでしょうね」

洋子がクッキーを食べ終えた。

「ただ」

洋子が続けた。

「今日、ここに来た人間がいる。来なかった人間がいる。その違いは、すでに何かを決めている気がします」

「解釈の問題ではなく、行動の問題として、か...」

浩はその言葉を、しばらく頭の中に置いた。

カフェテリアの窓から、ケーブルが見えた。


──


その夜、浩は短いメッセージをサラに送った。

「ザカリアへの監視を一段階強化してください。イブラヒムからの情報です。ザカリアには特定の物理定数への固執がある──エントロピー、熱力学第二法則。この論理のクセが、彼の行動パターンに現れる可能性があります。分析に加えてください」

返信は翌朝来た。

「了解しました。資金移動の痕跡と、物理定数の固執というパターンを連動させて分析します。物質の最終的な移動先を、引き続き追っています」


──


深夜の人工島。

第一基のケーブルは、暗闇の中に向かって、まだ伸び続けている。

ロボットが動いている。

人間の手が届かない場所で、人間が設計した機械が、作業を続けている。

浩は管制室のデータを見ていた。

建設効率。ロボットの稼働率。ケーブルの引張強度。今日の数値は安定している。問題はない。

47,213メートル。今日の第一基の高度だ。昨日より少し増えている。

今日、イブラヒムがここに来た。ケーブルを見て、「それでも、伸びている」と言った。

ザカリアも、どこかで同じ数字を見ているかもしれない。同じケーブルを、別の意味で見ている。

成分は分かっている。意図は分からない。

しかし今夜は、その問いを頭の隅に置いたまま、浩はデータを見続けた。

窓の外に、細い線が伸びている。

人類が、天に向かって何かを築こうとしている。

それが何を意味するかは、まだ誰も言葉にできていない。

画面の数値が、静かに更新され続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ