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冷酷のブレイバー【連載停止中】  作者: 泥陀羅没地
第四章:森の民と魔女の呪い
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忌むべき追放の魔女

『彼女の名を知る者よ、その意を込めて彼女の名を呼ぶ事無かれ』


ソレは始まりに〝警句〟があった。


『彼女の名を知らぬ者よ、ならば我等の試みは果たされたのだろう』


そして、次に己等への誇りと賛辞があった。


『されど、もしそうで無いのなら…我が国は、我が国の木々(子等)は、遥か古き忌まわしき呪いに蝕まれているのだろう』


そして、悔恨の想いが込められた言葉が綴られ。


『この書を開し者よ、汝が国を救う勇者ならば、我等は汝へ願う…願わくば汝の手で、彼の追放者を討ち果たさん事を、そしてこの書が汝の助けにならん事を』


最後に、この書に行き着いた者への願いを刻み…最初の頁は終わる。



この書物を書いた人間は、余程用心深い性格だったのだろう…或いはそれだけ、この〝追放者〟を恐怖していたのだろうか…この書物は取り分けて厚く、細かくその人物の情報が記されていた。



その者の名は〝イリーサ〟…〝イリーサ・アバル・ヘルポトス〟…生まれは〝アバルの氏族〟…建国期以前に存在していた森人の集落が1つだ。


彼女の生涯を語るなら…彼女は正しく〝魔術の天才〟と言える…建国期、国王ナイル・リル・ラシールの声に集いし〝賢者〟達の一人として彼女は選ばれた。


彼女は森人の中では若く、120の歳で国政に携わり、以後300年…国家の礎を支える役割を全うする。


国の基盤が出来上がると彼女は国内の治安を維持する〝治安維持組織〟を立ち上げ、その長として国内で起きる犯罪行為の調査と追跡に尽力する。


並びに、豊富な知見により薬学、医学知識を国内へ広げ、森人の死傷者数を低減させる事に成功した。


誰もが彼女を〝賢者を語るに相応しい者〟として賛美し、彼女の輝かしい功績を称えた……しかし。



『彼女の悪業を、此処に記す』


彼女の功績の裏には夥しい数の骸が散乱し、その悍ましい悪意の影は、功績の光によって隠されていた。


何百人もの森人を用いた人体実験の数々…薬物を投与し、苦痛を与え、肉を切り分け、腸を抜き取る。


その人体実験の数々は、其処に居たある研究者によって国へ告発され…その告発から軍が調査に着手した結果…以下の結果が報告された。


〝研究所の一区画〟では、違法に捕らえられた若い子供達を用いた非人道的な実験が行われていた…と。


その事実は又たく間に広がり、イリーサ・アバル・ヘルポトスは1年に及ぶ調査の果て…〝賢者〟の名を剥奪され、国外への追放を判決として言い渡された。



それから凡そ300年の間…彼女は表舞台に姿を現すことは無かった…やがて、森人の民が、彼女の名を忘れ始めたその時…彼女は戻って来た、そう。


〝追放の魔女〟…国を滅ぼす〝災害〟として。


彼女はその類稀な〝死霊の才知〟によって、数多の死霊を従えた…その数は述べ万に至り、その中には人と獣人、土人の姿もあったらしい。


彼女の再来と、襲撃は烈火の如く進行し…王都は忽ち死霊と人が入り混じる地獄絵図と成っていった…。


しかし、その侵攻は長くは続かなかった。国王と賢者達の協力により、国内に満ちた死霊達は掃討され、二人の賢者が犠牲になったものの、国王と残る賢者は追放の魔女を討ち取ったのだった…。



「……〝追放の魔女は討伐後、賢者達によりその魂は念入りに浄化され、神聖なる力の満ちる場所に埋葬された…二度とその力を振るう事の無いように〟…」


俺は最後の一文を読み解くと、その書を閉じる…閉じられた書物は、その瞬間テーブルから生えた木の枝に回収され、木人形の手に渡ると女王は顔を顰めて言う。


「――つまり、先代の試みは失敗した訳だな…」

「――現状、死霊と呪いが厄介な問題を生んでいる訳だからな…少なくともコレが〝成功〟とは言えないだろう」


そんな女王の言葉に、俺はそう返しながら席を立ち、続ける…。


「仮に、本当に〝魔女〟が元凶だとするなら…この情報は役に立つだろう…次に向かうのは、その〝聖域〟だが…女王、心当たりは?」


そして、女王へそう問うと…女王は少し考え…俺へそれらしい場所を教える。


「――街の中心に、かつて〝氏族長の集会場〟が建てられていた場所が有る…今ではその場所を〝聖域〟として国が管理する区域に指定している」

「――其処だな、調べる事は出来そうか?」


女王はそれから、何か考える様に目を閉じ…それから、その視線を隣に座るナリアへ向けると…暫くの沈黙の後、口を開く。


「……〝聖域〟への入場は、極限られた人間しか許されない…王族と、家臣を束ねる大臣達だけが入れる………しかし」


そして、話しながら最終的に決断したのか、女王はナリアへ視線を向けると…小さく告げる。


「……我には王としての責務が有る…お前達へ案内はしてやれん……だが、〝王族の誰か〟が居なければ、お前達は聖域へ入れん……」

「…ッ、御母様!」


女王の語る言葉の意味を、遅ればせながら理解したのだろう、ナリアは女王へ視線を合わせると、自らを指し言葉を紡ぐ。


「――でしたら、この私…ナリアがレイド様方を〝聖域〟に…!」


その言葉に、女王は分かっていたと言う表情を浮かべながら沈黙し…それから、仕方無いと言う風に視線をナリアへ向け…告げる。


「…〝許可する〟…我が娘〝ナリア〟よ、この者等を聖域へ案内せよ」

「……はい!」


女王の面持とは裏腹に、ナリアの声は軽く弾む……画して、仮とはいえ俺達のパーティーに…ナリアが加わる事となるのだった。




○●○●○●


――ガンッ――


「ッ――ァァァアッ……こんな、こんな所で……!!!」


大地に膝を付き、彼の者は自らの身体を零れ落ちる〝黒い血〟で、病的に白い肌を染めながら…叫ぶ。


――ジュウゥゥゥゥッ――


焼け焦げる様に、彼女の身体には幾つもの〝淡い光の剣〟が突き刺さり…その剣から放たれる清らかな魔力は、彼女の体を溶かし崩していく。


「――私を追放したッ、私の研究を邪魔した者共が目の前に居るのに…!」


彼女の瞳には強い怒りと憎悪が宿り…睥睨する〝王〟と〝二人の賢者〟の姿が、彼女の澱んだ黒い瞳に映っていた。



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