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冷酷のブレイバー【連載停止中】  作者: 泥陀羅没地
第四章:森の民と魔女の呪い
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王都に伸びる捜査の目

――ザッ、ザッ、ザッ、ザッ…――


「〜〜♪」

「……上機嫌だな、アイリス」


人混みを避けながら俺達は街を練り歩く…そんな中で、俺は上機嫌に歩を弾ませるアイリスにそう問う。


「ッ!――そうかしら?」


その問いに対して、アイリスは小首を傾げて振り返り…俺に不思議そうな眼差しで返す…どうやら、アイリス自身気付いていなかったらしい。


「嗚呼…普段よりも幾らか動きが浮ついている…何か良い事でも有ったのか?」


そんなアイリスの様子に俺はそう言い…隣に並んだアイリスへ問うと…アイリスは顎に手を当て、悩む様に目を閉じて唸りながら自身の記憶を振り返る。


「う〜ん…確かに今日も宿の御飯は美味しかったけど…それ以外は特に何も変わり無いわね」


そして、ついぞその理由を測れなかったアイリスはそう言い…苦笑いを浮かべ俺を見る。


「そうなのか…だが気が落ち込むよりは理由が無くとも明るい方が心地良いか」

「――そうね!」


そんなアイリスへ、俺はそう言葉を紡ぐとアイリスもその顔を楽しげに緩ませてそう返しす…そんな俺達を、道行く民衆は好奇の視線を向け、生暖かく見送っていた。


――カランッ――


「――さて…世間話は兎も角…改めて目的の再確認だ」


数分後、近場の喫茶店で軽く休憩を挟みながら俺達は向かい合って〝仕事の話〟に戻る。


「〝亡霊の足取りを掴む〟…よね?…〝行方不明者〟の調査って言うのは理解出来るけど、具体的に何を調べるの?」


開口一番そう切り出した俺の言葉を聞きながら、果実水で渇きを癒すアイリスがそう言う…その言葉に、俺は冒険者ギルドで収集した幾つかの〝紙束〟をアイリスの前に広げると、口を開く。


「〝行方不明者〟の名簿だ…具体的には〝1年前〟のある時を起点に起きた物を纏めてある」

「ッ…凄い数……何百人分?」

「〝120〟と少し…表沙汰になっている物の一部でこの数だ…誰にも知られていない場合を含めれば千を越えても不思議では無い」


そして、その書類に目を通し始めたアイリスを見ながら、俺は続ける。


「――この〝行方不明者〟達の経歴を探る…行方不明になる前、何をしていたのか、どんな環境だったのか、仕事から生活まで徹底的にな」

「……何日掛かるか、今から頭が痛いわね…」

「当然、俺達以外にも国から依頼を受けた冒険者や、守衛達も捜索に参画している…月を跨ぐことは無いだろう…それでも七日七晩は覚悟するべきだがな」


俺がそう言うと、アイリスが小さく…これからの仕事への憂いを吐き出す…しかし、ソレは直ぐに霧散する事になる。


「お待たせ致しました〜!」


何故なら、喫茶店の店員が運んで来た〝甘味〟が…俺達の前に所狭しと並べられ甘い香りで包み込んだのだから。


「す、スイーツがこんなに沢山…コレは…夢…!?」

「今日は朝から晩まで働き詰めだからな、多少の贅沢位は赦されるだろう…好きに食え、残ったら俺が処理する」


俺はそう言うと、黒く澄んだ珈琲を傾け…口の中をスッキリとした苦味で満たす…その視線を、幸せそうに白く柔らかな甘味達を口に運ぶアイリスへと向けながら。




●○●○●○


――ギィィィッ――


「ふぅむ…普通の家じゃな」

「はい……一見、何も変わりはない様に思えますね」


場所は変わり、其処は活気ある王都の中心…賑わう人の活気が伝播する街道の中に有りながら、寂しい印象を与える小さな古民家…其処に足を踏み入れた二人の影は、そう言いながら、ズカズカと遠慮なくその室内を物色する…。


「〝マイヤー・ゴルディッツ〟…〝元魔術技師〟…〝魔術技師〟としては中堅どころの技術者だったらしく、技術はそこそこ、友人は居らず家族も居ない…やはり、例に洩れず有益な情報は無いか」

「他の人達と同じですね…何か手掛かりが見つかると良いんですが…」


金髪の美女…ルイーナが片手に取った資料の人物画とプロフィールを流し読み、そう呟く…その周りでは白髪に小さな角を生やした少年…アンフォートがルイーナの言葉に相槌を打ち、家の中を捜索する。


「――ふむ…手掛かりか……」


その言葉に何かを思ったのか、ルイーナが小さく呟く…その視線は家の中を彷徨い…そして、何か思い至ったのか立ち上がると、迷いなくその歩を進める。


「直接関係が有るかは分からんし、そも此度の〝事件〟とは関係無いやも知れんが…少なくとも此処の家主は相当の悪党ではあったろうな」

「?…どうしてですか?」


そして語り始めたルイーナの言葉に、アンフォートは捜査の手を止めて問い返すと、ルイーナは言葉を続けながらその歩を部屋の側面に備えられた暖炉へと進める。


「一つは、この男が〝魔導技師〟である事…魔導技師は、〝魔導具〟の製造、修理、設計を行う職人…当然魔術の心得も必要であり、その製造には特殊な工具が必要じゃ…だと言うのにこの家にはそれらしき物を置いている部屋が無かった」

「ソレは…仕事に持って行ったのでは?…それか何処かに隠していたのかも知れませんし」

「此奴は〝元〟魔導技師じゃ…数年前、悪質な魔導具販売を摘発され、魔導技師としての資格を剥奪されている…魔導技師としての活動は出来ん、それに仮に仕事であったとしても職人なら予備の工具を備えているはずじゃ…それに、何も疚しい事がないのなら隠しておく必要もあるまい」


そう言いつつ、ルイーナは暖炉を観察し…燃え滓となって久しい暖炉の炭の残骸を風で押し退けていく。


「それに、魔導技師の家と言うには全くと言って良い程〝魔力の名残〟を感じん…魔導技師、いや…汎ゆる生活において、日夜発展する魔導具はその需要を増している…しかし、この家には最低限の〝設備〟をしか備えられていない…そう、まるで――」

「……まるで〝仮の住まい〟みたいですね」

「そうじゃ…そして、この手の手合いは往々にして〝反省〟せん…十中八九、〝街の病巣〟を隠し持っている」


そして、ルイーナはそう言うと…暖炉の其処を風の力で調べると…暖炉は〝カチリ〟…と言う音を立てて、底に小さなスペースが現れる。


「ふん…〝隠し倉庫〟か…小癪な真似をする…魔導技師という地位の逆手を取り、魔力を用いない〝隠し部屋〟…余程隠したい物が有るらしいのう…」


そう言いその隠し部屋の中を覗き込むと、アンフォートはポツリと呟いた。


「コレは……〝宝石〟?」


其処には…その小さなスペース一杯に詰め込まれた金銀、蒼紅の宝石や金塊がその輝きを喪う事無く、その場所に眠っていたのだった。


「所謂〝隠し財宝〟と言う奴か…悪質な魔導具販売で得た金を貴金属に変えていたか…小悪党らしい悪足掻きじゃな」


ソレを確認すると、ルイーナはそう言い…その〝隠し財宝〟を回収しつつ立ち上がる。


「――さて、此処にはもう、目新しい物は無いの…次に行くぞアンフォート」


そして二人は、小悪党の家を立ち去り…再び手掛かりを求めて調査を再開するのだった。

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