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冷酷のブレイバー【連載停止中】  作者: 泥陀羅没地
第四章:森の民と魔女の呪い
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眠り姫と瀕死の執事

「――堅苦しい話は不要であろう」


謁見して直ぐ、俺達へそう言い放つのは、他ならぬ女王本人だった…その言葉に俺達は互いに顔を見合わせ、それから肩の力を抜き…女王へ問う。


「そうだな…此方としても願ったり叶ったりだ、手間が省けた……〝報告〟は聞いているか?」


俺がそう問うと、女王は首肯し俺へ視線を合わせ、続ける。


「うむ…〝貴殿が神隠しに有った〟…その現場を見たとレリオットから聞いた…真か?」


その言葉に、俺は頷くよりも疑問を浮かべ女王へ尋ねるように言葉を吐く。


「――待て、神隠し〝だけ〟か?…〝死霊〟の類は見ていないのか?」

「?…何を言っている…この街には〝魔物除け〟が備わっているのだぞ…並の魔物、ましてや〝死霊〟などこの街に寄付く訳が無いであろう」


しかし、今度は女王の顔が怪訝に曇る…その視線は俺へ向けられ、俺の正気を疑う様な眼差しで、至極真っ当な正論が紡がれる…〝常識〟的な範囲での物事なら、確かに俺の問いは〝異端〟だろう…だが。


「――残念だが、今回の〝神隠し〟はその〝常識〟を外れた存在が関わっているらしい」

「……ほう」


俺は女王へそう言うと、己が先日巻き込まれた〝事件〟の始まりから終わりまでを、詳しく説明する……最初は怪訝な顔をしていた女王も、話を詳しく説明する内に、何か心当たりでも有ったのか、その顔を真剣な物へと変え…沈黙する。


「………成る程」


暫くの沈黙を経て、女王は静かに俺達へ語る…。


「――確かに、此処最近…行方を眩ませる民が増えているのは事実…我等も国を上げて捜索に注力はしていた…が、その成果は芳しく無かった…そも、人攫いの影を掴む事さえままならなかった……だが」


――ジッ――


「〝神隠し〟――引いては〝異界〟へ引き込まれた事が原因であると言うのなら…成る程、我等の国で我等がその尾を掴むことが出来なかったのも得心が行く…」


女王はそう、情報を整理する様に独り言葉を紡ぐと…それから玉座から立ち上がり、俺達の元へと歩みを進める。


「――加えて、貴様の見立てでは〝死霊〟とは別口の〝異界〟を形成する〝何か〟が存在していると…そう言っていたな」

「…そうだ、〝魔術〟に長けた森人なら〝異空間の形成〟が何れ程の〝高等魔術〟かは敢えて語る必要も無いだろう」


此方へ歩み寄る女王へ、俺は視線と言葉を放ち…女王の反応を見る、女王は俺の言葉を耳にするとその口を開き、俺へ視線を向けて答える。


「――嗚呼、当然知り得ている……そして、お前の言葉が仮に真実だとするなら…或いは、〝貴様の言わんとする事〟も可能性は有るだろう」


その言葉に、俺は小さく頷く…流石、国を統める女王、俺の言わんとしている事は直ぐに把握するか。


「――貴様等の望みを叶えてやっても良い…我が娘リリアの〝呪い〟を調べる事…ソレを許可してやっても構わん」


女王はそう言い、俺の前に立つ…その言葉に、アイリスとアンフォートが小さく反応する…俺達の目的に近付けたのだから、分からないでも無いが…ルイーナは気付いたらしい、その顔を微かに顰め…俺へ視線を送る。


「――〝だが〟」


そして喜びも束の間、やはり女王が俺達へ咎める様にそう声を張り…いつの間にやら手に握っていた剣を俺の首元へ向ける。


「――今此処で〝誓い〟を立てよ…〝我が娘に害成さん〟事を…出なければ貴様を我が娘の元へ向かわせる訳には行かん」


その女王の言葉と行動に、場の空気が冷たく張り詰める…アイリスとアンフォートが何か言いたげに口を開こうとするが、その声はアイリスの放つ〝圧〟に負け、抑え込められる…そして。


「――〝嗚呼…誓う〟…俺はお前の娘〝リリア・リル・ラシール〟に危害を加える事はしない」


俺がそう言うと、俺と女王の魔力が互いに混ざり合い…其々の手に〝紋様〟を刻む…〝契約の紋様〟だ。


「……良いだろう…では付いて来い……我が自ら、娘の元へと案内しよう…此方だ」


女王はそう言うと、その剣を虚空へ掻き消し…まるで、何事も無かったかの様に此方へ背を向けて歩を進める…どうやら本当に此処に用は無いらしく、その足取りに迷いは無い。


「……一時的な契約だ、そんな顔をするな」

「…フン」

「お前達も呆けているな、俺達の仕事は此処からだぞ…行くぞ」


そんな女王の背を見ながら俺達は玉座の背後に有る扉へと、歩みを進める女王の後を追い…気を引き締める…。


「――女王、被術者を調べる前に聞いておきたい事が有る」


道中で、俺は背を向けて進む女王へとそう問い掛ける…その言葉に女王は此方へ目をやるとその口から疑問を吐き、俺へ問う。


「…ソレはリリアの呪いに関係有るのか?」

「可能性は有る…ナリアからも聞きはしたが、情報の精度は高い方がいいだろう…被術者が呪われたのは何年前だ?」


その言葉に俺はそう返し、納得したらしい女王へ聴聞を開始する。


「…〝1年〟は経っている」

「ふむ、長いな…その間、ナリア含め家族に何らかの影響…強い倦怠感や目眩、頭痛、吐き気…等が頻発した事例は有るか?」

「……いや、無いな…娘等は健康だ、病の気を感じた事は無い、私も同様だ…時偶若い家臣の法案に頭を悩ませる事は有るがな」

「それは原因が違うだろう…だが成る程、ならもう一つ…」


俺がそう言い、口を開きかけた…丁度その時…。


――〝カチンッ〟――


「ッ――!?」


俺は突然フラッシュバックする様に脳に届いた〝光景〟に絶句し、その瞬間…皆の静止を無視して駆け出す。


「ッレイド――」


俺の行動に皆が唖然とする中、ルイーナがそう静止しようと口を開く…しかし、その瞬間――。


――ブワッ――


通路の奥から噴き出したその〝瘴気〟に、静止の言葉が掻き消される…そして、俺は脇目も振らずその瘴気の元を追い、通路の奥に有る…〝開きかけの扉〟を蹴破ると…其処には…。


「ッ――!…レリオット!」

「ハァーッ……ハァーッ……ッレイド…殿」


ベッドに横たえられた少女と…その少女の眠る傍らで半身を瘴気に侵されたレリオットの姿が、其処に有った…。

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