めくれても読めない心
一緒にご飯を食べながら様子を窺っていると、また御影様の思念が飛んでくる。
(相談ってなんだろう? まさか別れ話じゃないだろうな? 昔の男の話題、まずかったよなあ……嫉妬心から“初めて”にこだわってしまった。後で昔のことなんて、これっぽっちも気にしていないって言おう……本当は初音の過去についてはめちゃくちゃ気になって、根掘り葉掘り聞きたいけど)
「で、相談ってなに?」
御影様はわざとらしく顔をしかめ、不機嫌そうな声を出した。
「この間、初音の昔の男について触れたから怒ってんの? それだったら初音は自意識過剰だ。お前の過去なんてどうでもいいし、興味ない」
(口に出していることと、頭の中で考えていることがチグハグすぎて面白すぎる!)
私は思わず吹き出しそうになるのを必死に堪えた。
やっぱり相談はやめだ。私の能力のことは黙って、しばらく彼を観察して楽しむことにしよう。
「ううん。やっぱりなんでもないです。御影様が私のこと大好きってわかったから、どうでも良くなっちゃった」
「はぁっ?……なんだよ! 勝手に俺が初音にぞっこんってことになってるの、自惚れ過ぎんだろ!」
図星を突かれた御影様は、耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
「ふふふ……」
*****
御影様で味を占めた私は、好奇心に駆られてハザマ様の心の中も読みたくなった。
いつもいつも心を読まれっぱなしで悔しいというのもある。
それに、あの底知れない彼が普段どんなことを思っているのか、どうしても知ってみたかったのだ。
「こんにちは〜ハザマ様。ご機嫌伺いに来ました〜」
「ああ、初音か………」
( ………… ………… ……………………)
あれ? 読めない? なんで?
まるで見えない壁に阻まれているかのように、彼の心からは一切の思念が流れてこない。不思議に思って見つめ返すと、ハザマ様は静かに問うてきた。
「初音、いつから『めくれ』た?」
鋭い視線に見透かされ、私はあっさりと白状する。
「あ、今日からです。いきなり人の考えていることが入ってきました」
「呆れた奴だな。それで、私が何を考えているか探りに来たわけだ?」
ハザマ様は小さくため息をついた。
「ハザマ様は、いつも私の心を遠慮なく読んでいるじゃないですか」
私が少し唇を尖らせて抗議すると、
彼は意に介した様子もなく尋ねてきた。
「御影は知っているのか?」
「いいえ。御影様の心は普通の人と逆なので面白くて、まだ言っていません」
「どうするんだ? 生活に支障が出るし、そう簡単には元に戻らんぞ?」
彼の声に、微かな警告の響きが混じる。
「ん〜。どうにもできないので、今日はとりあえず学校へ行きます」
私がのんきに答えると、ハザマ様は私の顔をじっと見据えた。
「…………そうか。気をつけてな」
ハザマ様が言った「気をつけてな」の本当の意味がわかるまで、そうは時間が掛からなかった。




