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【キセイシリーズ】追放された理由が世界滅亡案件だったんだが? ~スカウトを突然追放して理由を調べられないとでも思ったか~  作者: mizuchi_0307


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第2話 疑惑の部屋

「おいおいおいおい……こりゃどういうことだよ」


 片付けが入っていない、元リーダーの部屋は綺麗だった。そう、片付けが入っていないにもかかわらず、綺麗だったのだ。


 まずは床。俺達がこの数日やった仕事の内容を考えると、泥か砂はあるはずだ。特に海辺。海辺に現れた怪物を倒してほしいっていうのが俺達がこの街にきたきっかけなんだから。だが、不自然なほどに綺麗なのだ。まるで掃除をしたかのように。どうして掃除をする必要があった?


 クローゼットは使われた形跡すらない。……だがまあ、あの大男の着る鎧が一般的なクローゼットには入るわけがないから、使っていなくても何も不自然ではないが……他に手荷物があるはずなのに使わない理由なんてないだろう。


 ベッドに目を向ける。綺麗だ。とても綺麗だ。本当に、寝ていたのか怪しいぐらいに。


 ……いや、もしかしたら……


 そう思い、俺はすぐさま右隣の部屋の扉を開けた。この部屋の両隣の部屋に客などいない。何故なら、ここもさっきまでヤコブパーティが使っていた部屋だからだ。そしてこの右隣はあのクレアが一人で使っていた部屋だ。


 案の定クレアの部屋は散らかっていた。特にベッドが。ヤコブめ。クレアの部屋で寝たな?

 だが、今回重要なのはそんなことじゃない。クレアが、俺を追放しようとした理由だ。

 この部屋の状況的にクレアのやつがヤコブに色仕掛けかなんかして、結果としてヤコブに俺を追放させた。色仕掛けが絡んでの追放は、状況的にほぼ確定でいいだろ。だが、それは百歩譲っていい。男と女の関係でそうなる事例なんざ俺だって聞いたことはある。ヤコブも男だった。それだけの話だ。だからこそ、重要なのは直接の追放理由だ。


 二人が男と女の関係になったことに、俺がすぐに気づきそうだからか? それはあるかもしれない。だがしかし、それだけなら、別に追い出す必要性はない。そもそも、俺は男と女の関係なんざ知ったこっちゃないしな。自分から声掛けてきた女がそれを恥ずかしがるのもおかしな話だし、知られちゃ困るような何かが、クレア自身にあるんじゃないか?


 その仮説を確かめるためにも、部屋の片付けをしながら丁寧に痕跡を探すことにした。受付に片付けるって言ったしな。


 掃除は上から下へが基本だ。まずは上。クローゼットだ。開けると甘い匂いがした。クレアがいつもつけている香水の匂いだ。……だが、甘すぎる。普段、こんなに甘い匂いだったか? 強い匂いに驚いて、しっかり見れていなかったクローゼットの中を改めて見る。中は特段目立つものはない。ハンガーもしっかり使った形跡があるし、こんなもんだろう。


 次に化粧台。女だったらよく使うはずだ。粉のようなものが化粧台の上に散らばっている。化粧に使う粉か、これ。指ですっと掬ってこすり合わせて感触を確かめる。ちょっとすべすべする。化粧に使う粉っぽいな。おかしくはないか。だけどこういうのって結構女は気を遣うって聞いたことがあるな……そう思って微量の粉を持っていた布に包んでおく。こういうのは専門家に頼むのが一番だ。


 さて、一番荒れてるベッドだ。シーツを替える。……何で湿ってるんだよ。どんだけ時間たってると思ってるんだ。べとべとの状態で出てきたってのかよ。ふざけんなよ。悪態をつきながらくるんで投げ捨てるように部屋の外へと放り投げた。朝から変な想像をさせるなよ。


 しかし、ここまでやって、これが間違いなく証拠だと言い切れるようなものは見当たらない。隠すようなことと言えば……ヤコブとの関係を裏付けるものしか出てこないとは。正直期待外れだったぜ。


 最後に、俺は自分が泊まる場所である、ヤコブが使っていた部屋から見て左側の部屋に足を踏み入れる。あの場にいた他の仲間は、俺が追放されることを理解していなかった。つまり、突然の出来事だったってことになる。だから、他の仲間全員一緒に泊まってたここにヒントがあるわけがないのだが……やはり、床は砂と泥に塗れるよな。ベッドはくしゃくしゃになるよな。クローゼットは開けっ放しになるよな。普通こうなる、が並んでいるだけの部屋だった。ったく、汗臭いな……


 そこでふと気が付いた。汗臭い? そういや、ヤコブの部屋は汗の匂いすらしなかったな。あいつ、マジであの部屋使ってないんじゃないか? せいぜい、足を踏み入れただけ。そうなると……あいつはクレアと初めて会った日……このリーヴェにきた日から、ずっとクレアの部屋に入り浸っていたことになるんだが……? ……そんな男だったか。ヤコブは?


 ヤコブとの出会いを思い出す。ヒューゴが仕留め損なった怪物を俺が追い詰めるまでは良かった。だけど、そこに二匹目が突然現れてもうだめかと思った時に、ヤコブのやつがその怪物を一刀両断してくれたんだっけか。それで、俺達が礼だって言って、酒場の姉ちゃんを呼んだらあいつ、ジョッキを持ったまま固まって、触られたらびくついて。あんな大男なのにってヒューゴと二人で笑ったっけな……そうだよ。そういう奴だったはずだ。


 別れ際のシーンを思い出す。腕に絡みついてきたクレアをそのままにしていたヤコブ。……なんで、クレアに触れられても大丈夫なんだ?

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