↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/9

3話

 翌日の昼休み。

 騒がしい教室の中で、僕は自分の席に座ってぼんやりとしていた。


 昨日の放課後の出来事が、頭から離れない。

 朝比奈さんとの勘違いの告白。

 そして――突然のキス。


 あれは夢だったんじゃないかと思いたいが、唇には微かな甘い感覚が残っている気がした。

挿絵(By みてみん)

「れーん!」


 不意に、背中からポンと肩を叩かれた。

 振り返ると、僕の彼女である白川結衣がニコニコと笑って立っていた。


「うわっ、結衣。びっくりした……」

「なにぼーっとしてるの?ご飯もう食べた?」

「うん。結衣は?」

「私も今食べたところ!ねえねえ、今日さ、放課後部活ないから、遊びに行かない?」

 結衣は無邪気な笑顔で僕の顔を覗き込んできた。


「遊びに?いいけど、どこに行く?」

「このあいだのゲーセン!駅前の!」

「また行くの?この間も行ったばかりじゃん」

「だって悔しいんだもん!あのでっかいウサギのぬいぐるみ、三千円も使ったのに全然アームが掴んでくれなかったんだよ!?絶対設定おかしいって!」

「まあ、クレーンゲームなんてそんなもんだろ」

「今日は絶対リベンジするからね!蓮も手伝ってよ?」 「はいはい、わかったよ」

 プクッと頬を膨らませる結衣がおかしくて、僕は自然と笑みがこぼれた。


 そうだ。僕には結衣がいるんだ。

 昨日のことは何かの事故だ。早く朝比奈さんに誤解を解かなくちゃ。


「じゃあ、放課後一緒に帰ろ」

「うん。待ってる」

 満足そうに笑った結衣と別れ、僕は準備を整えて次の授業の移動のために教室を出た。


 ニコニコとした気分のまま廊下に出た瞬間――。


「……」


 僕の足は、ピタリと止まった。

 廊下の壁に寄りかかり、腕を組んでこちらをじっと見つめている女子生徒がいた。

 朝比奈怜奈だった。

挿絵(By みてみん)

 いぶかしげに目を細めた彼女の視線が、僕を射抜いている。

 昨日の、屋上での出来事がフラッシュバックして、心臓が跳ね上がった。


「あ、朝比奈さん……」

「今日、白川さんと遊びに行くんだ?」

「えっ……あ、うん。まあ……」

「ふーん……」


 朝比奈さんは、ツカツカと僕の目の前まで歩み寄ってきた。

 周囲には他の生徒もいるのに、彼女は構わず顔を近づけてくる。

 ふわっと、昨日と同じ甘い香りがした。


「ねえ」

「な、なに……?」

「私と付き合ってるんじゃなかったっけ?」

「っ……!?」


 心臓が止まるかと思った。

 周りに聞こえるんじゃないかと冷や汗が噴き出す。


「朝比奈さん、そのことなんだけど……!」

「なに?」

「本当は、昨日のあれ――」


「おーい、蓮!怜奈!」


 僕が言いかけた言葉を遮るように、能天気な声が廊下に響いた。

 振り返ると、親友の涼介が小走りでこちらに向かってくる。


「怜奈も移動教室?一緒に行こうぜ!」

「……うん、いいよ」


 朝比奈さんはスッと僕から離れ、涼介に向けていつもの笑顔を作った。


「……」


 どうしよう。

 涼介にはまだ話していない。涼介にどう説明すればいいんだろう。

 親友の好きな人なのに。涼介は何も知らずに、朝比奈さんに嬉しそうに話しかけている。

 僕はどうしたらいいんだ。


 でも……さっき僕を見つめてきた朝比奈さんは、息を呑むほど美人だった。


 ――いや、そんなこと考えてる場合じゃない!

 早く誤解を解かないと、取り返しのつかないことになる。


「朝比奈さん、ちょっと話が……」

「……どうしたの?」


 朝比奈さんが立ち止まり、涼介も不思議そうに僕を見た。


「おい蓮、どうした?もう移動しないとチャイム鳴ってマズいけど」

「いや……その……」


 涼介のいぶかしげな目と、朝比奈さんの探るような視線が僕に突き刺さった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。