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第八話「側面から見た景色」
側面から見ると、上面と下面が同時に見えた。
片方を見れば、上面が見えた。
もう片方を見れば、下面が見えた。
どちらも、同じ距離に見えた。
「どちらが上で、どちらが下か、分かりません」と男は言った。
「どちらも上で、どちらも下です」と女は言った。「ここでは」
「あなたは、混乱しませんか」
「最初は混乱しました」と女は言った。「しかし今は」
「今は?」
「どちらでもいい気がします」と女は言った。「上でも下でも、人が住んでいます。どちらも同じです」
側面の人が、傍に来た。
「そう思えるようになれば、側面に住めます」とその人は言った。
「私たちも、住めますか」と女は言った。
「住めます」とその人は言った。「住みたければ」
男は、女を見た。
女は、上面の方を見ていた。
それから、下面の方を見た。
それから、側面の地面を見た。
「どうしますか」と男は言った。
「少し考えます」と女は言った。
「急がなくていいです」と男は言った。
女は、また地図を出した。
側面の地図を書き始めた。
几帳面な字で。
男は、女が地図を書くのを見ていた。
上面と下面が同時に視界に入る場所で、女が地図を書いていた。
(第八話 了)




