第七話「側面で出会ったこと」
下面にいる間に、側面のことを教えてもらった。
側面には、住んでいる者がいた。
上面でも下面でもなく、側面に住んでいる者が。
「側面に住めるんですか」と男は言った。
「住めます」と下面の人は言った。「重力が側面の内側を向いているので、側面が床になります。ただし、端に行くと重力が変わります。上面の端と下面の端に近づくと、引っ張られます」
「怖くないんですか、側面は」
「慣れれば」とその人は言った。「側面の者たちは、慣れています」
女は、側面の者に会いに行きたい、と言った。
男も、行くことにした。
下面の端から、側面へ出た。
重力が変わった。
また、体が横向きになった。
側面を歩いた。
上面でも下面でもない場所を、歩いた。
いた。
側面に、人がいた。
家があった。
畑があった。
子供が走っていた。
「どこから来ましたか」と側面の人が言った。
「上面から」と男は言った。「下面を経由して」
「珍しい」とその人は言った。「上面から来て、下面へ寄って、側面まで来た人は、あまりいません」
「あなたは、ずっと側面にいるんですか」と女は言った。
「そうです」とその人は言った。「上面にも下面にも行ったことがあります。しかし、ここが好きです」
「なぜですか」
「どちらでもないから」とその人は言った。「上面でも下面でもない。その間にいると、両方が見えます」
男と女は、顔を見合わせた。
両方が見える場所。
(第七話 了)




