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第四話「重力が変わった」
二人で、側面を降りた。
最初は、普通に歩くようだった。
柵を越えて、側面に足をかけた。
重力が、引っ張っていた。
上面へ引っ張っていた。
少し降りると、変わり始めた。
体が、横向きになっていった。
重力が、側面の内側へ引っ張り始めた。
「変わっています」と男は言った。
「変わっています」と女は言った。「足が、こちらを向いている」
側面が、床のようになっていた。
体が、側面に吸いつくように立っていた。
上面が、横に見えた。
下面も、横に見えた。
「どちらが上か、分からなくなりました」と男は言った。
「どちらも上で、どちらも下です」と女は言った。「今は、ここが下です」
側面を歩いた。
下面へ向かって、歩いた。
雲が見えた。
側面の中ほどに、雲があった。
雲の中を通った。
濡れた。
冷たかった。
女が笑った。
「こんな場所に雲があるとは思いませんでした」と言った。
「雲も、側面にいられるんですね」と男は言った。
「重力に従っているだけです」と女は言った。「私たちと同じで」
雲を抜けた。
また、側面が続いていた。
下面が、近づいてきた。
(第四話 了)




