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第二話「端のこと」
端には、柵があった。
木でできた柵だった。
古かった。
いつから建っているか、誰も知らなかった。
柵の向こうが、側面だった。
側面は、垂直だった。
上から見ると、真横に続いていた。
そして、ずっと向こうに、下面があった。
逆さに見えた。
下面は、逆さまの空の中にあった。
男は、柵に手をかけた。
覗いた。
遠かった。
下面は、遠かった。
霧が出ていることが多く、見えないことも多かった。
その日は、霧がなかった。
下面が見えた。
何かがあった。
建物のようなものがあった。
木のようなものがあった。
人のようなものがあった。
逆さまだった。
全部、逆さまだった。
足が上を向いていた。
頭が下を向いていた。
しかし、それが当たり前なのだろう、と男は思った。
あちら側では、あちら側が「下」なのだから。
人のようなものが、こちらを向いた。
気がした。
霧が来た。
見えなくなった。
男は、柵から手を離した。
家へ帰った。
しかし、逆さまの人のようなもののことを、考えた。
(第二話 了)




