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第一話「上面に生まれた」
世界は、円柱だった。
丸い、柱のような形をしていた。
上面があった。
下面があった。
側面があった。
男は、上面に生まれた。
上面は、広かった。
丸い、巨大な平面だった。
端まで行くと、側面が始まった。
側面の向こうに、下面があった。
しかし、男は下面へ行ったことがなかった。
行けないわけではなかった。
側面を伝えば、行けた。
しかし、誰も行かなかった。
上面の者は、上面にいた。
重力は、上面では下へ向かっていた。
足が、上面に吸いつくように。
しかし、側面へ出ると、重力の向きが変わった。
側面では、側面の内側へ向かった。
そして下面へ出ると、また変わった。
下面では、下面の内側へ向かっていた。
つまり、下面の者にとっては、上面が「下」だった。
上面の者にとっては、下面が「下」だった。
どちらも、自分のいる面が「下」だった。
男は、そういう世界に生まれた。
当たり前のことだった。
ずっとそうだったから、当たり前だった。
ある日、端まで歩いた。
側面が始まる場所まで歩いた。
覗いた。
側面の向こうに、もう一つの世界が見えた気がした。
(第一話 了)




