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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~(前編)  作者: 亜空間会話(以下略)
8章 百剣抄

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351 第五:「天空大聖剣ウル=グランザー」(3)

 どうぞ。

 正教会の人々も、異形の「ワルイダー」の面々も、リルゥには優しかった。よく働こうとする彼女のことを褒め、おやつをくれたり、必要になったものを買ってくれたりした。


『この街すごく平和だね、ウル』

『君の記憶にある村が、あまりに過酷すぎるだけだろう』


 遠出して帰ってこないものは珍しくもなく、子供を亡くす親も、親を失う子供も多かった。自然災害がないときですらそのありさまで、モンスターが増える季節はもっとひどかった。そんな状況ですら、やはり外に出るほかないほどに環境は厳しい。生き残っている人間は、単に残っているにすぎなかった。


『毎日おんなじ顔見るし、ちゃんとみんな帰ってくるし! すごいよ!』

『ああ、そんな毎日を当たり前にしよう。そのために、吾輩を使ってくれ』


 ふつうだと思っていた毎日が異常だった――皆がそう言った。よほど家計が厳しくなければ児童労働などあり得ない、モンスターに負ける人ばかりでは村の存続自体が危うく、何か大きな出来事があったのだろうとも言われた。あの日々がすべてウソだったようにも思えて、ときどき涙が出たけれど……ていねいで素早い手さばきは、母に料理を習ったときのままに動いた。


「あっ、バイロスさん! 一名様ごあんなーい!」

「ぶほほほほ! オデが鎧を脱いでいるときは一人だと、覚えてくれたようだのう!」


 迅速なレベルアップのため、リルゥは街の定食屋で働かせてもらっていた。ひげが白くなってきた店長の厚意で、ときおりお客と話す時間を設け、休憩を長めに取っている。筋骨隆々としてよく日に焼けた巨漢は、今日も優しく微笑んでいる。姉であるという「ドン」にどこか似たその表情は、二人が長く寄り添ってきたことを感じさせるものであった。


「今日もいつもの?」

「うむ、砂漠トカゲの日替わりを頼むど。値段も安い、仕込みが済んでおって早く出る、そして美味い。素晴らしいメニューなのだど」

「はーい!」


 今日は尻尾の薄切りステーキと、バラ焼肉に骨出汁のタレをかけた、かなり脂のきついものだった。野菜を多めに持って、サボテンの果実もつける。


「さすがに早いのう……トカゲの脂は、ときどきで味ががらりと変わってくるが、今日はどうなのか! さっそく確かめるど」

「めしあがれー。おやっさんがいいっていうし、向かいで見てるね!」


 むぬんッ、と優雅にカトラリーを使う巨漢が、バラ焼肉を先に口に運んだ。


「ぬぅ……! これはワームばかり食べて育った味! よく砂を泳いで、身の締まりもいい! 脂を落としすぎず、しかし端がカリカリになる焼き加減も見事ッ! 美味いど!!」

「長いよー、おいしい! でいいのに」

「ぶほほ、もう少し場を弁えるべきかのう。しかし、美味いものは美味いのだど! いつ、どのようなときも、食への感謝は忘れぬこと。これもまた巨悪の秘訣だど」

「そうなんだねー」


 彼らのいう「巨悪」は、おそらくただの照れ隠しである。集団をまとめやすいようにと言葉を強くしているだけで、正教会の人々が説く、正しいルールやマナーに反したものはない。人々の中に潜伏するためだ、としているが、そのわりには何かを植え付けた様子はない。ウルは『何も心配はないようだな』と所見を述べていた。


 食事が始まってからしばらくして、“何か”がかれらの体を突き抜けた。


「むっ。早食いはマナー違反なのだが……すこし、失礼するど」

「いま、何か起きた、よね?」

「うむ。おそらくは、街全体を覆う規模の結界。止めねばならんのう」

「わ、私も行っちゃダメ?」

「おやっさんを避難させるのが先だど。今は、大人が戦うときだからのう!」


 口元をナプキンで拭い、手を合わせて食後の祈りを終えたヴァイロスは、コインを置いてすっと立ち上がった。つかつかと店の外に出たかと思うと、天に手を掲げ、叫ぶ。


「超、希望合体!! ミライザー! グレェええエエトッ!!!」


 全身に出現した機械鎧で武装を済ませ、巨漢はリルゥを振り返った。


「どうしたのかのう? 早く行くのだど!」

「ねえ、どうしていつも叫ぶの?」

「ぶほほ、ぶほほほほ……!! よかろう、教えてやるかのう。これは“点火”なのだど!」

「点火……?」


 火を点けること。しかし、彼の体のどこにも、炎は見当たらない。


「己の心に火を灯す言葉をひとつ、持っておくのだど。叫んだそのとき、炎は燃え盛る。そして、その炎が消えない限り……何度でも立ち上がり、幾度打ちのめされても熱を保った、無敵の心ができるのだど」


 その男の背は、確かに――何度も同じ言葉を繰り返し、いつも同じように帰ってきた漢のものと似ていた。


「パパも! パパも、そうだったのかな!?」

「もちろんだど。「すぐに帰る」、「大丈夫だ」。静かでも、決して消えない熱が、パパさんにもあったはずだど!」


 バーニアを吹かして浮かび上がった巨漢は、さっと手を振って飛んでいった。


 息を吸って、吐く。胸の中の熱は、確かに灯っている。


「行ってこい、リルゥ。女の子に案内されるほど耄碌してねェやい、足腰に悪いところもねェんだ」

「うん。私も、行ってくるね」


 胸にある小刀のペンダントに、手をやった。


『我が名を叫べ、リルゥ! 天空大聖剣の名のもとに、吾輩が君たちを守護しよう!!』

「うんっ! 〈天空大聖剣〉!!」


 男たちの炎に続くように、少女もまた己の内に火を灯した。


「〈ウル=グランザー〉ぁあああッッ!!!」

 で、伝染しちゃった……まあ、変身のときに叫ぶのは一種のルーティンと言われてるので、それの拡大解釈ってところでしょうか。次回、たぶんコメント欄が「超希望合体ミライザーグレート」で埋まる。

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