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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~(前編)  作者: 亜空間会話(以下略)
8章 百剣抄

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350 第六:「偽剣」(3)

 どうぞ。

 もっとも近いところにあった街は、さまざまな勢力がぶつかり合う「フィゴ・サ=ヴィオ」という街だった。通商を握る富豪、支部の建物を持つ正教会、散っては戻ってくる移民たち、個性豊かな旅人たち。一見すると安定した治安でも、水面下で起こっていることはさまざまにあるようだった。


 何かあればすぐに泣きつかれた時代は、とうの昔に終わっていた。旅人へ頼むこともあり、かんたんな仕事なら貧民を買い叩くこともあった。旅人たちに同行してさまざまな情報を聞き出し、ジュリオはすでに自分の顔が売れていることも知った。「ハイシン」という通信魔法(パーティーチャット)の発展形のような仕組みにより、自分を目覚めさせた少女たちは、偶然にもその場面を映していたのだという。音声のみならず、その場所で何かが起きているのかを目で見て分かるように届けられる、という仕組みは、時代の移り変わりを感じさせた。


「あんまり食べませんね? 追加注文しちゃいましょうか?」

「俺は、魚は苦手で……」

「じゃあ肉かぁ。僕らけっこうお金あるから、……ふた皿くらいならいけるよ!」

「見栄を張らなくてもいいんだ。いや、やっぱり追加注文しようかな」


 富豪たちの一角「ランブル・タンブラー」は、高級な食事を提供することで利を貪る【愚者】たちの集まりだった。いったいどこから仕入れてきたのか、湖にいる魚や朝方摘んできた木の葉がふんだんに使われた料理は、当然ながら味も飛び抜けて優れている。ハイシンを見ていたという四人の男女とともに大型のゴーレムを討伐し、その帰りと仕事終わりに食事をともにすることで、より多くの情報を聞き出す算段だった。


「それで、先ほど“聖剣の勇者”と言っていたね……もう少し、詳しく聞いてもいいかな」

「いいですよ。あ、これは配信では映ってなかったことなんですけどぉ……」


 ハイシンは、魔法とはまったく違う仕組みで動いている。専用の目玉のような道具が必要になるうえ、その道具が見たものを届ける仕組みとリンクする必要もあり、万人にできることではないようだった。ゆえに、旅人たちに起こったことすべてがハイシンに捉えられるわけではなく、かれらもまた噂話に頼らねば伝えられぬ情報がある。



――血筋に“聖剣”を宿した少女が拾われた。砂漠の村にいたが、村がいくつもの厄災に襲われて滅びたからだという。

――古代の遺跡にたどり着き、“聖剣”を起動する方法を得た彼女は、ジュリオに勝るとも劣らぬ力を得た。

――今は「秘密結社ワルイダー」と正教会が代わる代わる面倒を見ている。



「実力を見る機会はなかったのかい?」

「あぁ、確かになかったなぁ。でもほら、機械のドラゴンなんだろ? 絶対強いって」

「き、機械……? 聖剣って言ってなかったかな?」

「いやぁ、それが。自分で聖剣って名乗ってるらしいんですよぉ」


 いまひとつ、よく分からない話だった。


 そのとき――


「これは、」


 外なる世界の魔力で構成された結界が、超広範囲に展開されたときの感覚。偽神ではないが、規模は同等、法則の強固さは上。皿を持ってきたウェイターに謝罪して店を飛び出すと、すでに空の色が変わっていた。砂漠の突き抜けるような星空ではなく、星雲が輝く外なる世界の天穹。


 街の外壁を破壊しようとする黒い巨人を、菌糸で捉える。


「ぶほほほほ!! 我らの出る幕はないかもしれんのう!」

「いいや、止まらない……! 手ごたえが弱すぎる」

「それは困ったな。鬼蜘蛛が彼女を守れないかもしれない」

「機械鎧に双面……もしや、君たちが?」


 ぶほほほ、と機械鎧の巨漢は高笑いする。共鳴するように、金銀の鎧に身を包んだ双面の人物もまた、笑った。


「そう、我々こそが「秘密結社ワルイダー」である!! この私、首領(ドン)ダ・ダークが出なければならない事態となった今……勇者ジュリオ、きみの力を借りたい。そして、きみに協力を申し出たい。お願いできるかな?」

「ああ、ぜひ頼みたい。ハイシンで話題になる人物は、誰も彼もずいぶんな強者のようだからね」


 ジュリオを目覚めさせた四人は、口をそろえて「ここにいないもう一人は、ひとりでも偽神を倒しただろう」と言った。そして、その少女が大苦戦したという「ワルイダー」、機械鎧の巨漢は……粒ぞろいだった彼女らに匹敵する力を持っていると考えてよい。


「攻め手は君たちに任せるよ、ワルイダー諸君。俺は、この街を守る」


 剣を掲げる――偽剣は、所持者が三日から一週間ほど居住した土地を記録し、その場に胞子を残す永続効果をもたらす。それら胞子は、所持者が活動したログが多ければ多いほど増加し、接触した人物からも振り落とされて定着する。記録されるのは数のみであり、実際に発動・展開する地点は所持者が任意に操作できる。


 菌糸の群れが、黒い魔物たちの群れを払いのけた。その勢いのままバリケードを生成し、「勇者が街を守った」というログを記録する。そして、これまでに会話した旅人や、正教会の人々が防衛に乗り出し、胞子をさらに振り落としていく。こと防衛においてはほとんど完全無欠の力……それこそが、勇者ジュリオの持つ「偽剣」の持つ力だった。

 ジュリオの持ってる「偽剣」、どっちかというと「住んでいる土地を守る」という性質が強いので、番人とかに向いてる力なんだよね。まあステータス補正はアホほど高いからゴリ押しも利くんですが。

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