347【記録用214】魔王幹部11討伐(4)
どうぞ。
一撃、二撃と打撃が続く。細くて白い異形の手が受け止めているけど、しっかりダメージが通っているのが分かった。
ヒューイが蹄を鳴らすと、恐ろしい勢いでツタや樹木が伸び始める。ヒューイは植物全般を強化する力があって、ラーゼは植物系でもかなり上位の力がある。この間の……いつか戦った誰かがそうしていたのを上回るほどに、敵が呼び出したフルムを容易く蹴散らす美しい人形たちがどんどん出てくる。
『えぇ……??』『ひとりで魔王軍してるやんw』『なんじゃこりゃあ』『え二体でこれ?』『チートすぎて草』『このツタの家なに?』『スイッチ入ってるから応えてくれなさそう』『やっぱ座長っておかしいわ』『そりゃ公式チートだし』『人形が持ってる装備も消すカウント入るのズルない?』
「記憶から敵を作り出せる力かー。イニーズ・プレイパークだったら危なかったね」
あのとき――とつぜんスポーツクラブに通わなくなって、部活にも行かなくなって……穴の開いた時間が何日も続いた。兄が、その穴を埋めるようにして、新しいことを教えてはくれたけど……ずっと、ずっと消えない思いがあった。
――いま練習してたら。いまこのとき、練習を続けていたら。
――もっと、もっと上手くなってるはずなのに。
――曖音ちゃんに並ぶほどじゃなくても……
それは、他責だしダブスタだ。
今こうやって配信に映って、知らない人にお尻がえっちだのハイレグがいいだのと言われても、あのときの男子の視線ほど感じるものはない。それに、私はもう知っていた――配信サイトに挙がっていた私の、牧塩高校新体操部の映像には、吐き気がするくらい気持ち悪いコメントがいくつも付いていた。あれだって、我慢できた。純粋に頑張っていた私を、まるでAVを鑑賞するみたいな目で見ている人がいるのも……心の壁でなんとか防げていた。今はもう平気だ。
けれど、だからこそ思う。あのとき歪まなかった私の人生は、いったいどこへ進んでいたのか。そこから枝分かれするように、こうも思う。
「人の人生歪める人って、大嫌いなんだよね」
「砂粒に魂があるとして、あなたは砂浜を歩かないのですか」
「砂粒には、砂粒の生きざまがあるんだよっ!」
いくつか、いい情報もあった。敵はどうやら、生きている命をすぐに消すことはできないらしい。かなりの数がヒューイ&ラーゼに召喚されているのに、ぜんぜん消す気配がない。
「あなたたちは、じゅうぶんに……奮戦、していますが。花弁が、下流に流れ着いてしまいました。これほどの強者を……全員、足止めできているのなら、大戦果です」
「そういう戦略!?」
『下流ってどこや』『フィゴ・サ=ヴィオやろ』『あっ(察し)』『オワタ』『地下水脈だとフィゴ・サ=ヴィオ、表の河だとゲノ=メニエフやね』『どっちも改変に対応できんくない?』『ヤバいやんけ!?』『詰みやね』『アカン(アカン)』
少し遠くで戦っているメンバーが何か叫んでいるけど、戦闘の音が激しすぎて聞こえない。と思ったら、NOVA経由でのアンナの声が届いた。
『いま、フィゴ・サ=ヴィオにもこの空間が広がり始めてるみたい。でも、勇者が二人出てきてくれたって……』
「え、ふたり? あそこ確か、リルゥちゃんしかいないよ?」
『あ。ジュリオだ……!』
「ジュリオってだれ!?」
アンナはただ一言『だいじょうぶ』と言った。
『ジュリオなら、なんとかしてくれる』
聖剣の格差
「克死の龍剣」
現在の所持者:雪罪派の生き残り
赤いレイピアみたいな剣。まあ強い。最終的に勝つタイプだけど華がない、詰みに追い込む方法は誰でも思いつくアレ。特殊能力がぜんぜん使えないのが痛い。
「天空大聖剣ウル=グランザー」
所有権保持者:リルゥ
メカドラゴン。めっちゃ強い。サバゲーしてるところにウルトラマンが現れるくらい強い。操縦者が弱いのがネック。
「ラスティングラスト・アフターロウズ」
現在の所持者:ヅィーブル
黒曜石のような剣。ちゃんと強い。
「偽剣」
所有者:ジュリオ
木刀。キノコを生やす力を持つ。バランスがいい。
「双霊の剣」※カウントされていない
所有者:トランブル
ぼんやり二重に見える剣。召喚能力がある。ズルはできなかった。




