345【支配地開放】魔王は私だ決定戦!【聖剣はやっぱりカッコいい】(2)
どうぞ。
とっこは、さまざまなゲームを渡り歩いてきた。「水銀同盟」ではいちばんの古豪であり、目立たないがいつの間にか勝っている、不思議な立場だった。しかし、今回ばかりはそういう流れに期待できそうもない。
『白バニーさんに彼氏いるの知ってたん??』『いやぶっちゃけ連れてきた時点でだいぶ好感度高かったやろ』『画面の向こうにいるガチ関係ない人にワンチャン期待するのだいぶキツい』『ドル売りしてる時点でそこ気を付けてると思うやん?』『寄せ集め感が特徴だと思ってたから気になってない』『アンナちゃんを裏切ったのか……』
「うーむ……大荒れですなー。あたしの知る限りでは、最初からBIG LOVEでしたぞ」
とっことしては、「報告を受けていない以上何も知らない」としか言いようがない。個人の素性をすべて聞いたわけでもなく、周辺の人間関係も調べていない……それゆえに、誰とどのような関係になったのかは、知りようもなかった。
(たしか「にごフェスで“も”会った」と言っていたそうですからなー。NOVAで知り合ったからリアルでも会ってみた、という単純な話ではないような。地元で出会って、それなりの回数話している……? 新体操のコーチか何かなのでしょうかな)
中らずとも遠からず、といったところに落ち着いたとっこの思考は、無意識に伸ばした鎖に接続して、戦闘モードへ移行する。
「属性攻撃の効きが、とくに闇の通りが悪いんだ。あんたらはどうするんだ?」
「おやおや、あたしにそれを聞くとは。呪いは抵抗不能ですぞ」
とっこは〈暗黒騎士〉……闇属性を吸収する力と、呪いをより効率的に扱う力を持つ複合系統のジョブに就いている。すこし緑色に近付いていたレオタードが、また白くなった。
「〈疸訪胞珠〉」
呪いを宿した物品には、かんたんな意思を持つ疑似霊魂が宿っている。式によって従わせようとしても、それはほとんど指向性を持たない呪いを撒き散らす……それゆえに、呪いの装備を身に付けてもよいことはほとんどない。しかしながら〈暗黒騎士〉は、〈呪術師〉の習得している〈血除け日傘〉と似たような呪怨の移動を行える。
「ギィッ、ギギ……」
「やはり、抵抗できておりませんな。どれほど優遇されているのやら」
疑似霊魂をより成長させて本物の霊魂に変え、その力を高めたうえで呪怨被害の一部を相手に移し替える――自分のステータスがいくらか下がろうが、特殊効果をいくつか重ねればさしたる問題にはならない。
弱った真っ黒いトカゲを全員で叩きのめしながら、コメントを読む。
『外せない前提なのに呪い装備がクッソ強いの草』『バカ固いよね』『浄化系の技持ってる敵とか基本おらんからな』『騎士なのに呪い担当なのマジ魔王軍』『あっちもヤバいなw』『一瞬で手のひら返してるやつしかおらん』『うじうじ言っててもしゃーない』
「呪いを解除できる相手がいれば、かなり苦戦するのでしょうなー。デメリットを背負ったうえで回復と防御と攻撃、この三つを両立しておるわけですからなあ」
正教会と敵対すれば、そのような相手もいるのだろう。アンデッドやスケルトンといった、実質的に死なない肉体と呪怨の吸収によって、呪う側にありながらメリットだけを受け取る方法もあるが……プレイヤーが手に入れたモンスタージョブでは、それら性能を十全に発揮できない。
「さて、さて。敵の数はまだまだ、このレベルを保ったまま増えていくようですぞ」
ハイライトでないこちらを見てくれる視聴者の期待を盛り上げるべく、とっこは不敵に笑った。
(あちらは、ずいぶんと恐ろしい流れになっておりますなー……)




