344【記録用214】魔王幹部11討伐(1)
どうぞ。
ホバークラフトから降りた。
「ここが、なんですね」
「ああ。俺たちも記録用の録画をすることは多い……そのカメラを、配信に使う。ここから始めた方がいい」
「了解です。あっちも始まってるし……」
「どうもみなさまこんばんはー、徒歩で来ちゃったとっこでございますよー。こ、今回は! なんと今回は……!! ああ!」
カメラがこっちに向いた。笑顔で手を振る。
「我らがフィエルさんが! あの「白バニーさん」が!! BPBに取られてしまいました……!」
『なにっ』『!!??!?!?!?!?!?!』『浮気やんけ!』『いい笑顔してる』『???』『何があったんだよ』『フルメンバーではない……?』『戦力として欲しかったんやろなぁ』『¥50000ディーさまは私のなんですけど』『なんか違う厄介ファンいて草』『お気持ち最大額こわひ』『あの人こんなファンいたんだ……』
何か誤解されているみたいだから、しっかり弁解しておくことにした。
「あ、私彼氏いますよ」
『ならいい』『えっ』『(脳破壊)』『(脳破壊)』『(脳破壊)』『(脳破壊)』『(脳破壊)』『あっあっあっ』『¥30000おめでとう! ご祝儀です』『隣にいんのにコメントで祝うのやめろや!w』『いま配信窓開いてんのかよwww』『瞬時に祝える最新版オタクの鑑』『内部からスパチャできんのかw』『結婚とかではないからご祝儀じゃなくない?』『えっ結婚確定なん?? ご報告受けてた感じ???』
「あーもーお話の流れを持っていく! 今回は、ついにこの世界に現れた「魔王」の手先と戦い、その脅威を退ける……そのまんまの企画ですぞ。名付けて! 「新人の芽は摘んでやる! 魔王は私だ決定戦!」でございます!」
『ひゅーひゅー!』「どんどん」「ぱふぱふ!」
レーネは明日のために早く寝ていて、シェリーも予定があるからと参加できなかった。その穴を埋めるように、ディリードさんとホウイさんがにぎやかしに参加してくれた。
『魔王業界にも新人潰しあるんか』『世知辛いなぁ』『いや無表情低音どんどんやめろ』『草』『参加してくれるんかいw』『意外とノリええな』『白バニーさんがぱふぱふ言うとぱふぱふ感あるよな』『魔王おるんか』『なんか地図が改変されてるって話は聞いた』
「すでに、広まっていたか。一目瞭然だとは思うが、タウルヴァンス大陸で見つかっている街は、西部に集中している。なぜか、誰も中央部から東部に行こうとしない」
「これが、あの青い花……魔王の手先が配置したビーコンによるものだ、と言うことなのですなー。この花を配置した敵を打ち倒し、大陸を取り戻しますぞ!」
砂漠の岩陰、ではなく風雪も陽の光も思いっきり当たる場所に、なぜか繊細で美しい青い花が咲いている。砂漠は寒暖差がすごくて、昼は五十度、夜はマイナス二十度くらいになるとか聞いたことがある……寒暖差七十度をまったく気にせずに咲いている花は、いかにも不自然だ。
「突入する。作戦はシンプルだ、取り巻きのモンスターを俺たちが食い止めて、幹部をフィエルに倒してもらう」
『めんどくさい能力だねぇ、ほんとに武器とか特技とか消しちゃうなんて』
「消えた武器や特技は、戦闘から離脱するか敗退するかで復活はする。ただ、五十回ほど装備を消されて、さすがにどうしようもなくなった」
『えぇ……』『HP武器でもそんなに消されたらキツいか』『あれ特技だしなぁ』『逆に誰が倒せる想定なんだよそれは』『↑人海戦術かテイマーの群れでは』『人数いたらランダムでひとつになるとかじゃないの?』『人海戦術は敵の大きさによるよね』
「敵は人間大だ。対人戦に長けた、いくらでも武器を出せる、こういう条件を満たせる最前線のプレイヤーはそういない」
「白羽の矢が立ったんですね。がんばります」
青い花のところを過ぎると、風景ががらりと変わった。
「これ、空間展開なんでしょうか……?」
「あ、それはオレから。空間展開とか結界って、ビーコンと境界線のふたつが大事なんだよ……」
機械鎧に身を包んだ、オメガさんの説明が始まった。
「注連縄とか鳥居ってあるよね? あれって「境界線を引く」って形の結界なんだよね。あれは超常の力がない人のやり方。大きな力を持ってる神様とかは「力の及ぶ範囲」があって、その範囲内が自然と境界になるの」
「私ってすごいんですね!」
「違いますぞー」
『さらっと驕り高ぶるスタイル』『やめようね!』『はい神罰』『これは大洪水も起きますわ』『ギャグだよな?』『鬼ちゃん必死で草』『そんな連投してるやついた?』『友達は知らんのねw』『オメガ氏ちゃんと詳しいやん』『(このコメントは削除されました)』
「でね。ビーコンを配置するやり方も、結局は「力の及ぶ範囲が境界になる」っていう法則を真似てるだけなんだよね。だから、ビーコンを探して潰すって方法を試してみた」
青い花はまったく傷つかず、反撃もなかったという。入るのはかんたんで、出るにも問題はなかった……つまり何が言いたいかと言うと、と締めくくる。
「元凶と共鳴してるタイプ、だね。ここにいる敵……「王編十六章が十一・“忘却の大河を逝く蒼の花弁”」を倒せばいいんだ」
「わかりました」
『なんて?』『完全詠唱やめろ』『長い長い』『これ初見で暗記無理やろw』『そういやこの人厨二病やったな』『ぜったい受け流してる顔やんw』『営業スマイルがまぶしい』『逆にどうやって覚えたんだよ』『敵の姿が想像できん……』
夜の世界に進み出した私たちの前に、次々にモンスターが現れた。
いつもとは違う配信スタイル。まあこういう「配信者じゃないけど垂れ流して後で攻略動画とか作る」みたいな人はいるみたいなので、そういうのを参考にしてみました。




