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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
8章 百剣抄

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342 前略、愛しいあなたたちへ(5)

 どうぞ。

 美味しい食事がだいたい終わると、デザートがやってきた。切り分けたパイがふた切れ、どうやら食事タイプとスイーツの両方があるようだった。


「平打ちうどんを焼き揚げて、パイ生地にかぶせる網目にしたものです。こっちのはささめうどんを使ってます……ごゆっくりどうぞ」

「いただきます!」「ありがとうございます」


 食事パイの方は、トマトベースにズッキーニとナス、秋鮭を合わせた、かなりおとなしめの味だった。食感のバリエーションもあって、とても豊かな味がする。うどんはいちおう日本のもののはずだけど、焼き揚げたせいかしっとりと脂の香りがして、全体を洋風にきっちりまとめていた。


「なんか、すごい……!」

「気になりますね。ひとくちいただけますか」

「ひとくちじゃもったいないですよー、このくらいどうぞ」

「おや、どうも。ありがたく……」


 フォークで切って、墨帖さんの口にそのまま入れてあげた。


「なるほど……。もう一種類の白身とだしの粉を入れて、味が弱まらないようにしているようですね。トマトピューレにどの魚を合わせるか、というのは……うん。いろいろな国に発想を得ているようで、面白い料理です」

「このナス、たぶん干してから焼いてるときの水分で戻るように調整してますよねー。すっごい工夫されてる……」


 梨のうどんパイの方も、すごく美味しい。こっちも食感にこだわっていて、梨に入っているざくざくの粒と、そうめんみたいに細いうどんがバリバリ砕けるふたつで、かなり遊んでいるなと感じた。ちょっとだけ刺さりそうなのは欠点かもしれない。


「クレープ、美味しいですか?」

「ええ、とても。かじりますか」

「あっいえ、カロリーさすがに危ないので。そっちもお魚なんですね」

「シズと舞茸かな。かなり和風ですよ」


 食事がだいたい終わって、きれいになったお皿も下げられていった。


「面白いところでしたね。単に冒険というだけではないところが素晴らしい」

「墨帖さん、やっぱりビジネスしてる感じあるなー……」

「ああ、……父から「価値を掘り出せ、他の意見と突き合わせろ」と教育されているもので。デートでこれでは、いけませんね」

「私はいいですよー? いつも見ない顔だし」


 微笑んでいる顔も好きだし、打ち合うときの瞳孔が研ぎ澄まされた顔も好きだ。こうやって、すこし考えるような顔も。


 ちょっとだけお高めのお会計を済ませて、お店の外に出た。陽の光が黄色を通り越して、お菓子を焼いているオーブンみたいな、暖かいオレンジ色に近付いてきている。


「ここの近くに、定番のデートスポットがあるそうです。最後に行ってみましょう」

「蚕両に? どこなんだろ」


 フィギュアを買うために、大きな道を外れてしばらく来たから、もう人通りはずいぶん少ない。昼下がりの蚕両には何度も来たのに、これまでの喧騒とぜんぜん違って、静かで涼しい風と、古めかしい街並みがどこまでも続いていた。牧塩の中でも歴史ある街なのは知っているけど、こうしてみるとはっきり実感させられる。


 緑色の深い運河と、そこに浮かんだ船、架かった橋と船着き場に降りる階段。並木はたぶん桜と紅葉、あと何かきれいになる樹だ。


「食後にはのんびりするに限ります。少しだけ、座っていましょう」

「ですねー。ふふ、墨帖さんがすっごい恋愛素人なの分かっちゃった」

「おや、どうしてでしょうか……いや、まあ。そうなのですが」

「ここ、デートスポットっていうか。ほら、あそこ」


 船着き場の足場は、そのまま伸びて川のへりをなぞり、細めの散歩道になっている。下にも道があって、しっかり二車線あるうえに天井が低めの橋は……たぶん、いろんなこと(・・・・・・)をしてもほとんどバレない。


 もう一歩のところを理解できていなさそうな墨帖さんが、すごくかわいい。


 階段に並んで腰かけて、ふわりと吹いた風に吹かれる。ほっぺたに当たった髪の毛を押し戻そうとするそのしぐさについ笑ってしまって、距離の近さのまま、肩に頭を預けた。今になって気になってきたことが、泡のように浮かんでくる。がぼっと聞こえた音は、鯉が運河の壁を何かしている音だった。


「あの、ちょっとだけ思ったんですけど……ご家族は、墨帖さんが私みたいなのとくっついても、反対とかしないんですか?」

「ははは、僕は四男ですよ。四女だったとしても、恋愛や結婚は自由だったと思います」


 それに、と。


 腕が腰に回ってきて、優しく押さえた。


「あなたにはもう実績がある。あなたに頼める仕事もある。家はきっと、しがらみがないのにそれなりの集客力があるあなたを欲しがる。一般人Aではない「フィエル」を」

「ん、それもそっか……」

「それに、……そうですね。僕があまりウソや演技が得意でないことは、これまでで分かっていただけていると思います。こんなこと(・・・・・)を、気がない相手にしたりはしません。僕にとって、……赫祢さん。あなたは特別な女性だ」

「……んもー」


 言葉を尽くそうとする言葉がなんだか絶妙に下手くそで。


 ――だから、すごく愛おしかった。

 デートは次回で終わります(宣言)。「デートスポット」って名目でアレな場所を探し出してしまう墨帖さん、ホテルと付いているからと部屋が空いていたラブホテルをソロで利用して「広いベッドでよく休めました」とか言ってそう。


 うどんパイは可能な限り現実的に描いてみましたが、これで美味しいかどうかは分かりません。まあトマトベースにズッキーニとナス+白身魚はマジで美味しいので、焼き揚げうどんが思った通りに変形してくれれば形は再現できる、はず。秋鮭だけでは味のパンチが弱くて負けそうなので太刀魚も入れる。梨のささめうどんパイは現実に作ったらクッソ食べづらいと思いますので、こっちはたぶん作らない方がいいです。シズと舞茸の蕎麦クレープは、味のベースさえ間違えなければ相当美味いと思いますね。なんで作る前提の話してんだろ私。まあ、作って美味しかったらSNSにでも挙げておいてください。

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